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丘の上公園の、街が一望できる高台で白木真《しらきまこと》は一人でたたずんでいた。
この公園には、たびたび来ている。高台から展望する街の姿はとても好きだし、歴史が好きな真にとって、戦国時代に、ここで合戦があったと聞かされてから、ますます興味深い場所になってしまった。
今は、学校帰りの夕方。寂しげに沈んでいく太陽を一人で見ていると、つい感傷的になってしまう。
「あーあ、僕にも彼女できないかなぁ」
真は、これまで女の子と付き合ったことがない。内気な性格で、今までずっと、積極的に女の子と話しをしてこなかったせいもある。
そもそも、女の子の前では心臓が張り裂けそうなぐらい緊張してうまく話せないし、好きな女の子の前ではなおさらだ。
そんな自分の性格に嫌気がさす。
べつに好きな女の子がいないわけでもなく、甘酸っぱい恋心は、誰にも打ち明けることなく密かに心の奥にしまっている。
同じクラスの女子、伊藤春菜《いとうはるな》。
クラスのみんなから親しまれ、愛想よく笑顔を振りまく姿はまるでアイドルのよう。
瞳は生き生きとした輝きを放ち、背中まで流れる長い髪は絹のように繊細でつややか。おしとやかで、上品で。
派手なアクセサリーをつけていないのに、きらきらときらめいている彼女は、真にとって憧れの存在だ。
春菜―!好きだぁー!
なんて、夕日に向かって叫べれば、どんなにすっきりするだろう。
心の内にかかる、もやもやとした霧はじっとりして気持ち悪く、吐き出すように深い息をついた。
「そろそろ帰ろうかな」
物思いにふけっていた真がはっと現実に引き戻されて気がつけば、いつのまにか辺りは誰もいなくなっていた。
静けさが漂う公園で、再び肩で息をついた真は家路に足を向けた。
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2/50話
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