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真は大きく息を吸って、驚きのあまり言葉を失った。
織田信長――戦国時代の代表的な武将。冷酷非情で気性が激しいと、なにかの本で読んだことがある。けれど、目の前の男からはそんなオーラは感じない。
「これ……脱いでいいか?」
「…う、うん」
身につけている甲冑を指した信長にうなずいた真は、動揺しながらも視線を前に見据える。
歴史に名を残した織田信長という人物をしっかり見てみたい。
真は、すっかりこの男の話しを信じていた。男の、光を宿している瞳はとても冗談やでたらめを言っているふうに見えないし、それにこの身なりは本物の武士に思えた。
信長は身に着けていた甲冑を脱ぎとると、大事そうに部屋の隅へと片付ける。
頬まで覆っていた兜のせいで気がつかなかったけれど、いや少しばかりは気がついていたけれど、予想以上に精悍で男らしい信長の顔にどぎまぎしてしまった。
歳は自分と同じぐらいか。
すっきりと筋が通った鼻に、日本人としては彫りが深い目。短く乱雑に刈られた髪と薄い布一枚のシャツ越しからわかる盛り上がった肩と二の腕の隆々とした筋肉。
さらに、焼けた肌がよりいっそう野生的でたくましい男の姿に作りあげている。
筋肉がついていない細身の自分の前で、こう堂々と「男」というものを見せつけられては、同性とはいえ惹かれるものを感じる。
「シャワーする?」
真が尋ねると、体中埃まみれの信長は首を傾げた。
真が、ああそうかと気づき、信長を浴室まで連れていくと簡単な取り扱いの説明をしてシャワーを浴びさせた。
戦国時代には、シャワーというものがなかったな。
脱衣所を出た真が苦笑をもらす。
信長がシャワーを浴びているあいだ、部屋に戻った真が普段愛用している歴史の本を本棚から取り出すと、織田信長のことを書かれた項目を探して読んでみる。
読み漁っていると、本能寺の変のことについての記述があった。
織田信長、家臣の明智光秀の裏切りにより本能寺にて自刃《じじん》する。
火を放たれた本能寺は激しく燃え盛り、明智軍の激しい攻撃もあって、助からないと断念した織田信長は自刃する。しかし焼け跡から織田信長の遺骸は見つからなかった……と書いてある。
本能寺の変で信長が死んじゃうのか……。
これが、あいつの運命……。
真は、神妙な気持ちで宙を見上げた。
・+☆+・
5/50話
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