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「服……あるか?」
突然、背後から声をかけられて、不意を突かれた真は慌てて本をパタンと閉じる。
振り返れば、裸にタオルを腰に巻いただけの信長が部屋のドアの前でじっと立っていた。
「え……と、すぐ用意するね」
真は、いそいそとたんすの引き出しを開けて、自分のズボンと開襟シャツと、少しためらいながら下着を取り出すと信長に手渡した。
幸い、信長は真の身長と同じぐらいだ。服のサイズは、たぶん大丈夫だろう。
「へんな服だな」
いぶかしげな表情でシャツの袖に腕を通す信長。
「そういえば、お前の名を聞いてなかったな」
渡されたシャツのボタンをはめながら話しかけてきた信長に、真ははっとした。
そういえば、僕の名前……まだ言っていない。
先ほど、信長の名前を聞いたとたん動揺してしまい、つい自分の名前を言うのを忘れていたことに気づく。
「僕は、白木真《しらきまこと》っていうんだ。よろしく」
「真か……。いい名だ」
信長が、初めて笑顔をみせる。
「それと信長。きみがどこから来たのかわかったよ」
服を着終えて、すっかり現代人の姿に様変わりした信長が身体を乗り出した。
「本当かッ。詳しく教えてくれ」
「信じられないかもしれないけれど、信長は遠い過去から来たんだ。450年ほど前の過去からね。なぜこの時代に来たのかわからないけれど……。
信長から見れば、ここは450年後の未来ってことになるね」
「…なんてことだ」
みるみるうちに信長の顔から笑顔が消えうせる。ショックを受けてふらふらとよろめく信長を心配しながらも、真は言葉を続ける。
「おそらく、これはタイムスリップだと思うんだ。時間を飛び越えて、時代を行き来するっていうやつだよ。
きっと信長は、なにかの拍子にタイムスリップして、この時代に飛ばされたんだ」
真が言い終えるころには、信長はすっかり力を落としてしまって話しも耳に入らないようだった。
「俺は、戻れるのか。もとの時代に帰れるのか?」
「いや…それは難しいかもしれない」
切羽詰った信長の問いかけに、真は静かに首を横に振るしかできなかった。
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6/50話
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