美男子に憧れて〜☆萌えガク

[ リスト | 詳細 ]

記事検索
検索

「孝介。早く早くッ」

急かすように手招きする先には、息せききってエスカレータを駆け上がる孝介の姿があった。

ここは国際空港のロビーの出入り口。ここのロビーでドイツに行く翔と待ち合わせをしているが、時間は予定より15分以上遅れている。

「もうッ、孝介が寝坊なんかするから……」

「いやあ、わりぃわりぃ」

息を切らしてエスカレーターを駆け上がった孝介は、頭を掻いてペコペコと頭を下げるが、海斗は「もうッ」と大きく息を吐いてふくれっ面になる。

もし、顔を合わせることもなく、翔がドイツに旅立ってしまったなら――一生孝介を恨むかもしれない。

広い空港ロビーには、たくさん人たちが行き交っていた。出会いを喜ぶ者や別れを惜しむ者。あるいは海外でバカンスを楽しむ者や、さんざん海外で楽しんだのか、疲れた表情で帰国した者たち。

実にさまざまな人たちが、それぞれの思いで行き交っている。

海斗は、予想以上の込み具合になっているロビー内に足を踏み入れることをすこし躊躇してしまったけれど、今は悩んでいる時間はない。

勢いよく一歩踏み出して、込み合う人ごみのなかを急ぎ足で目的の場所へ向かう。孝介も、海斗の後ろについて行く。

人混みを掻き分けてロビーの中央辺りまでやってくると、自分を呼びかける声が聞こえた。

「おーい、海斗ぉ」

前方には、大きく手を振って呼んでいる翔の姿。

「翔―ッ」

ふぅ……間に合った……

安堵の息をつき、にんまりとした顔で翔に答えながら、駆け足で向かう。

「はぁ、はぁ……よかった。間に合って……もうドイツに行っちゃったら、どうしようかと思ったよ」

「ふうっ。翔、待たせたな」

二人は軽く息を切らせながら、それぞれの挨拶をする。

「来てくれてありがとう。最後に二人に会えて、俺は嬉しいよ」

満面の笑みを浮かべる翔の顔に、海斗までつられて笑顔になってしまう。

それに……今日、翔の前で悲しい顔は見せないと誓ってきた。寂しいのは俺だけじゃなく翔も同じ気持ちなんだと、昨日の保健室で……そう感じとった。

俺が未練がましく寂しい顔していたら、きっと翔だって辛い気持ちになってしまうだろう。

ドイツに元気よく行ってほしいという思いもあるから、今日は絶対に涙を見せないつもりだ。

□□
□□□
□□□□

これまでのお話しの一覧を見るには、各お話しにある「トラックバック先の記事」から一度1話にお戻りください。

1話にある「トラックバックされた記事」をみていただくと、各お話しの一覧がわかるようになっています。よろしかったらご利用ください。

「翔……」

力の入った声に反応して、ゆっくりとまぶたを開けて振り返ると、翔の顔を見る間もなくすばやく唇を奪われてしまった。

突然のキスに驚き、ビクンと身体を強張らせたけれど、すぐに口腔をまさぐられる気持ちよさに気づいて、肩の力を抜き口内に侵入しているやわらかな舌の蹂躙を素直に受け入れる。

「ん……んん」

激しく口腔を吸われて、息を漏らす。

うつ伏せになって、顔だけを背中へ向けようとしている無理のある体勢に、だんだん苦しくなってくる。

「ううん……ちょっと、翔……」

唇を重ねている翔を軽く押しやり、ベッドの上でごろりと横になる。お互い向き合うように体勢を変えて、鼻先が触れるほど目の前にきた翔の顔を、まじまじと見つめる。

もうすぐ離ればなれになるというのに。

間近で見るきらびやかな男の顔は、海斗の心をますます魅力させた。

「翔のせいだよ……」

「え?」

小さくぼそりとつぶやいた海斗に、翔はわずかに目を大きくする。

「もうすぐ、翔と別れるというのに……こんなに近くで……こんなにも素敵な顔を見せられちゃ別れることなんてできなくなるよ」

すねた口調でつぶやき、甘えるように身体をすり寄せる。

「……海斗」

ひっそりと静まる保健室は、かすかに漏れる息づく音だけが二人の存在感を出している。

二人だけの空間に二人だけの時間……

このまま時間が止まってくれたら、どんなにいいだろう。

そう、願わずにはいられないほど愛しくて。

生理現象でぼやけた目には、寂しげな笑みを浮かべる翔の姿が映る。

そっと、翔のたくましい腕に抱き寄せられて、暖かい胸のなかで静かに目を閉じる。

まるで胎内にいる赤ん坊のように、身体を小さく丸め、密着度が増した胸のなかで翔の心音を感じる。

今日が最後かもしれない……

悲しくて、寂しくて。ないまぜになった気持ちがつのり、閉じたまぶたから自然と涙が染み出した。

「愛してるよ……翔」

「俺も愛している……」

翔の言葉に笑みで返し、大きな包容感と幸せに包まれながら、海斗は深い眠りに落ちていった。


□□
□□□
□□□□

これまでのお話しの一覧を見るには、各お話しにある「トラックバック先の記事」から一度1話にお戻りください。

1話にある「トラックバックされた記事」をみていただくと、各お話しの一覧がわかるようになっています。よろしかったらご利用ください。

昨日、孝介がヘンなこと言うものだから……

「ふあぁ」と大きなあくびをしながら眠い目をこする。

保健室の小さなベッドで寝返りをうち、うつ伏せになってまくらに顔をうずめた。

今日この時間は、保険医の先生がいないことは知っていた。

先生は職員会議に出席している―――翔と海斗は、先生がいないタイミングを見計らって学校の保健室に忍び込んでいた。

もちろん目的は、保健室のベッドを拝借し性行為をすること。

しかし、急激な眠気を襲ってきた海斗は、大きくあくびをしたあとまくらに顔をうずめて重いまぶたを閉じた。

孝介に好きだと言われたことが頭から離れず、昨日の夜はなかなか寝つくことができなかった。ここ最近、ずっと寝不足が続く。

「眠そうだな」

頭上で声がし、海斗に覆いかぶさるようにしてベッドに潜りこんできたのは翔。

「なぜ、そんなに眠い?」

背中に覆いかぶさる翔が、そっと耳もとで尋ねる。うなじに這う翔の指がくすぐったい。

「昨日……告白された……」

一瞬、翔の指の動きがびくっとして止まった。しかし、すぐに動き出して再び海斗の身体を愛撫しはじめる。

「……孝介か」

「うん……それで……いろいろ考えていて眠れなかった」

おしゃべりしているあいだも、翔の指は休むことなく、海斗の首筋や耳もとを優しく愛撫してくれている。その心地よい刺激もあってか、ますます深い眠りにつきそうになる。

目をつむりながら背中で翔の大きな存在を感じ、安らかな気分になる。

「翔は、いつ知っていたの?孝介が俺を好きだってこと……」

「孝介が、俺たちと一緒に帰るようになってからだ。あいつ不器用だけどさ、それでもあいつなりに愛情表現していたぞ。それに、気づかない海斗も鈍感だからな。不器用と鈍感じゃ、気づくわけないよな」

翔の言うとおり、まったく気がつかなかった。

「孝介に告白されて……正直困ったんだ。今も、翔のことは好きだし。これからも、翔以外の人を好きになるなんて考えられない」

「ずっと会えなくてもか?俺のこと忘れてほしくはないけれど、それをずっと引きずっていてはだめだ。もっと前向きになるんだ」

翔は今まで愛撫していた手を止め、少し力の入った声で耳もとでささやく。


□□
□□□
□□□□

これまでのお話しの一覧を見るには、各お話しにある「トラックバック先の記事」から一度1話にお戻りください。

1話にある「トラックバックされた記事」をみていただくと、各お話しの一覧がわかるようになっています。よろしかったらご利用ください。

帰り道、隣りにいる孝介のことを妙に意識してしまって、普段のように接することができなかった。

夕方の人通りが少なくなった住宅街は、よりいっそう二人を物寂しげにさせる。

「な、なに緊張してんだよ」

そう自分に声をかける孝介だけど、その口調だってどことなく強張っている。

孝介は、先ほどのことは気にしているものの、ずっと沈黙が続いている、今の気まずい雰囲気をなんとか変えようとしているらしい。

「緊張なんてしてないよ」

「そうか」

「うん……」

「……」

なんだか会話が続かなくて、重い空気が肩にのしかかる。

「あッ、そうだ。あのさ、さっきの話だけどさ……」

孝介が、今、思いたったように口を開いたけれど、それがなんともわざとらしい。

「なに?」

「翔がドイツに行ったあと……海斗はどうすんだよ。恋人も作らないで、独りでいるつもりなのか?」

「わからない。ただ言えることは、今の恋人は翔だけだということだよ。それ以外に、恋人を作る気はしないんだ」

孝介はふっと息をつき、静かな笑みを浮かべる。

「一途なんだな……」

「ああ」

やがて、二人はT字路のところまでやってきた。ここから先は、別々の方向へ向かって帰途につくことになる。

「ここで、お別れだな。…じゃな」

名残惜しそうに見つめる孝介の目が、自分の気持ちを波立たせる。

いつもの陽気な様子はなく、初めて自分の前で見せるしんみりとした表情の孝介に、気持ちがほんの少し傾いてしまう。

ごく自然な茶髪に、意外にもさわやかな孝介の顔。自分に熱い視線をおくる瞳は、どこまでも優しい。

それに人懐っこくて親しみやすく、孝介の前では自然体でいられる。

こんなこと、今まで意識したことがなかった。それどころか、胸のなかでジワリと甘酸っぱいものが染み出している。

それは、恋心に近いもの……

海斗は、慌ててブルブルと頭を振り、すぐに打ち消した。

なに考えているんだ、俺は。俺には、翔がいるじゃないかッ。

なんだか、翔に悪いことをしたという後ろめたい気持ちになってしまった。

「う、うん。…さ、さよなら」

顔の筋肉を強張らせ、動揺が表れた口調であいさつを交わした海斗は、孝介と別れて家路についた。

□□
□□□
□□□□

これまでのお話しの一覧を見るには、各お話しにある「トラックバック先の記事」から一度1話にお戻りください。

1話にある「トラックバックされた記事」をみていただくと、各お話しの一覧がわかるようになっています。よろしかったらご利用ください。

「へんだぞ、孝介。急にどうしたんだよ?」

「お前が……好きなんだよ……」

「え?」

ぼそりと小さくつぶやいた孝介の言葉に、耳を疑った。

俺を好きだと……

いや、こんな騒がしい人混みのなかだ。俺の空耳だってことも考えられる。孝介が、俺を好きなんてありえないさ。

そう頭のなかで否定したが、それはすぐに打ち消された。

ほんのりと顔を赤らめている孝介は、買い物客が行き交う通路の真ん中で立ち止まる。

「なぁ、海斗。俺が、もし海斗が好きだと言ったらどうする?翔のことは忘れて、俺と付き合ってくれるのか?」

いつものニコニコ顔が消え、不似合いな真面目な顔して尋ねてきた孝介に、胸の鼓動がひときわ大きく波をうった。

この前、翔が言っていた言葉が頭に浮かぶ。

すでに、他の誰かに愛されている……と。

翔が言っていた人物は、孝介のことだったのか。

プレッシャーを感じるほど真剣な眼差しで見つめられ、海斗はなんて答えればいいのかわからなかった。

自分の気持ちのなかでは、翔のことなんて忘れることができない。その気持ちは、遠く離れても、何年経っても好きな気持ちは変わらないと思う。他の誰かを好きになるなんて……考えられない。

すでに、自分の返事は決まっている。

断るしかない、と。

しかし、孝介を傷つけたくはないという気持ちがあって、やすやすと口に出せなかった。

孝介を昔の自分とだぶらせてしまう。

好きな人に、自分の想いが届かなかった悔しい気持ちは、過去に何回も経験してきた。

恋人ではないけれど、親友として辛い思いをさせたくない。

そんな考えもあり、断りの言葉を簡単に口に出すことをためらってしまった。

「孝介……」

そうつぶやくのが精一杯で言葉が続かず、少しの沈黙の時間が流れる。

「ごめん。俺、やっぱり翔が好きだし……」

気持ちはありがたいが、受け取ることはできない。

「そうか……」

元気なく、肩の力を落とす孝介。

今の孝介の辛い気持ちが、よく分かる。

「ごめん……」

なんだか、申し訳ないような気がして頭を下げると、孝介は硬い笑みを浮かべた。

「謝ることはないさ。海斗は翔が好きだもんな。仕方がないってことで、今はあきらめる。でも、次の恋人の候補は俺だからな。しっかり覚えておくんだぜ」

孝介は、再びにこやかな表情を戻すものの、いつもより陰りがみえる。無理に明るく振舞おうとする孝介の姿がとてもいじらしくて、海斗を切ない気持ちにさせた。


□□
□□□
□□□□

これまでのお話しの一覧を見るには、各お話しにある「トラックバック先の記事」から一度1話にお戻りください。

1話にある「トラックバックされた記事」をみていただくと、各お話しの一覧がわかるようになっています。よろしかったらご利用ください。


.
検索 検索
1 2
3 4 5 6 7 8 9
10 11 12 13 14 15 16
17 18 19 20 21 22 23
24 25 26 27 28 29 30

過去の記事一覧

ふつか
ふつか
女性 / 非公開
人気度
Yahoo!ブログヘルプ - ブログ人気度について
友だち(23)
  • sen**f1sti*k
  • 日刊今脇新聞
  • 雅風庵  大志
  • volvic
  • かわうそ
  • ほのこと
友だち一覧

スマートフォンで見る

モバイル版Yahoo!ブログにアクセス!

スマートフォン版Yahoo!ブログにアクセス!

よしもとブログランキング

もっと見る

[PR]お得情報

ふるさと納税サイト『さとふる』
実質2000円で特産品がお手元に
11/30までキャンペーン実施中!

その他のキャンペーン


プライバシー -  利用規約 -  メディアステートメント -  ガイドライン -  順守事項 -  ご意見・ご要望 -  ヘルプ・お問い合わせ

Copyright (C) 2019 Yahoo Japan Corporation. All Rights Reserved.

みんなの更新記事