素敵な夜景に踊らされて☆萌えガク

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束の間の沈黙。部屋の空気が重く二人を包みだしたころ、裕也はぼそりとつぶやいた。

「別れよう……」

それは、なんの前触れもなくでた言葉だった。そんなことを言った自分に驚いてしまったが、取り消すにしても、もうすでに後戻りができないように思えた。

一樹は「え?」と、目を大きくした。

あまりにも唐突な裕也の言葉が信じられず、自分の耳を疑っている――そんなふうに見える仕草をして耳をかたむけさせた。

「今……なんて言った?」

「別れようと言ったんだ」

聞き返した一樹に、重い口調で繰り返す。

なぜ、そんなことを言ってしまったのか。

頭の隅に、後悔の念があることに気づいたけれど、一度出た言葉は止まることはなかった。

「もういやなんだ、ヤクザと関わりあうのは。怖いし、なにかあったら、いつも暴力、暴力。あーやだやだ、そんなの最低の人間だよ。

それにきっと、一般の人たちにも迷惑をかけているんだよね。俺、それを考えるといつも心が痛むんだ。一樹は心が痛まないの、平気なの?ねぇ?」

一樹と付き合ってから、ずっと溜めていた心のわだかまりを一気に吐き出すようにべらべらとまくしたてる。そして、激しく一樹の身体をゆすって問いかけの返事をせかしたけれど、答えは返ってこない。黙って自分から顔を逸らして、うつむいているばかりだ。

「俺とヤクザの仕事……どっちを取るの?ヤクザを辞めないと、俺、一樹と別れるからねッ」

相変わらず、返事はない。

そんな一樹の様子がとても苛立たしく思えて、発作的に最後の言葉を言ってしまった。

「もういいよ!一樹とは別れるから。さよならッ」

ソファーから勢いよく立ち上がるなり、大股で部屋のドアへ向かう。

「ちょ……ゆ、裕也。ま、待て」

背後から、慌てて引き留めようとする一樹の気配を感じていたけれど、ドアを開けた裕也は振り返ることもなく、勢いよくそれを閉めた。


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「もういいよッ。そんなこと話さなくても!」

両耳を塞いだまま、ぶるぶると頭を振って叫んだ。

玲二に拳銃を突きつけられたことや、怖い人たちに尾行されたうえ乱闘騒ぎになったことの記憶がないまぜになってよみがえり、恐怖で身震いした。

自分で訊いておきながらも、一樹の、どのようにして相手を痛めつけ重要な情報を聞きだすか、みたいな話しに辟易してしまった。

毎度のことながら、腕力で物を言わせる風潮のあるヤクザ社会がつくづくいやになる。

今まで思い悩んでいたことが一気に爆発して、半ばヤケになって一樹に問いつめた。

「ねぇッ、もうヤクザなんてやめてよ。一週間たてば、何事もなくヤクザをやめられるんでしょ?無理に行動をおこさなくても、いいじゃない。玲二のことはほっといてさ、二人で静かに暮らそうよ」

今まで溜めていた心のうちをさらけだし、一樹にすがるように訴える。気持ちが高ぶりどっと涙が溢れだす。

しかし一樹は、胸元で泣いている裕也から顔をそむけ、部屋隅に視線をそらしたまま口を固く引き締めている。

「なんとか言ってよッ」

頬を濡らしながら強く掴んだ一樹の肩を大きく揺らすと、気迫に押されたのか、観念したように一樹は静かに口を開いた。

「だめだ。だいたい俺は、組の金をちょろまかした盗人のように思われているんだぞ。そんなの、俺のプライドが許さない。絶対に玲二の野郎を取っ捕まえてやるさ。だから、今はヤクザを辞めるわけにはいかない」

「そんな……」

愕然となり、身体の力がみるみるのうちになくなっていくのを感じた。

奈落の底へ落ちていくとは、こういう気持ちなのか。

いつか、一樹はこの仕事から足を洗ってくれるのでは……という淡い気持ちがあった。

こうして「ヤクザを辞めない」と、はっきり口にだされてしまうとなんとも言えない脱力感に苛まれる。


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40/50話

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口を割らなければ暴力をもって、強引に聞きだす。イスに座らせた相手の両手両足を動かないように紐で縛りつけて、殴ったり蹴ったりする場面を想像していた。映画でも、よくあるシーンだ。

ヤクザという人間は、口より先に手がでる輩だ。一般人のように、悠長に相手を説得して聞きだすことなんてしないだろう。

今回はどうのようにして玲二の手下から聞き出したのか、その手段を確かめたくて恐る恐る訊いてみた。

「そんなこと、よく聞きだせたよね。相手も、そう簡単には口を割らなかったんじゃない?いったいどうやって聞きだしのか、教えてよ」

一樹は、緩い表情から少ししかめた顔になった。

「教えてくださいと頼んで、教えてくれる相手じゃないんだ。だったら、多少痛めつけて聞きだすしかないだろ」

「まさか、殴ったりとか……」

「そりゃ、手をだすこともあるさ。それは仕方ないことだ。分かるだろ?説得して応じる相手じゃないことぐらいは……」

頭に、固いものでガンと打ちつけられた衝撃が伝わった。

そのあとも、いろいろと話しを続けていたけれども、結局のところ殴ったり蹴ったりと、イスに縛りつけることはなかったものの、映画にでてくるシーンのように相手を痛めつけて口を割らせたことは確かのようだった。

ヤクザというものが、心底嫌いになる。何事も暴力で、事を進めようとする姿勢が気にくわない。

その嫌いなヤクザをしているのは恋人の一樹だと思うと、頭が混乱して自分でもどうしていいのか分からない気持ちがどくどくと湧き上がる。

裕也は、そばで話す一樹の声が聞こえないように耳をふさいで大きく叫んだ。

「もう、聞きたくないッ」

これまで忙しく口を動かしていた一樹がぴたりと口を止めて、驚いた様子で裕也を見た。


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39/50話

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それから、どのくらいの時間が経ったのか分からない。

眠気に誘われ、ソファーの上でうとうととしていると、頭上に人の気配を感じてぱっと目を開けた。

「よぅ、寝てたのか」

自分の顔を覗きこんでいる一樹が、なんだか嬉しそうに声をかけてきた。

「…帰っていたんだ」

まだ、頭がぼんやりとしている裕也は独り言のようにつぶやく。

「今、帰ったところだ。めし、するか?」

そう訊いてきた一樹の顔には、笑みが浮かんでいる。

やたら表情が明るい一樹の様子に、なにかあったのだろうと不思議に思ってしまう。

なにかの記念日なのか、それとも臨時の収入が入ったのか。もしかして宝くじが当たったとか。

回転が鈍っている頭で、いろいろ考えを張り巡らせたけれど、思い当たる節はない。

「嬉しそうだね。今日は、なにかの記念日だった?」

聞かずにいられない衝動にかられた裕也は、半身を起して訊いてみた。

「記念日?いや、違うさ。でも、いいことはあったぜ。今日の玲二の手下をひっつかまえて吐かせたんだ。やはり、玲二の仕業だった。組の金をとったのも玲二。嘘の情報を流したのも玲二だ。このことを上層部に話せば、玲二のやろうも、ただじゃすまされないはずだ」

べらべらと止まりそうもない話しを聞きながら、裕也はひとつ気になることがあった。

一樹は相手を吐かせたと言っていたけれど、どうやって吐かせたのだろうか。相手が、そう簡単に口を割るとは思えない。

「でも、それはどうやって聞き出したの?」

喜々としている一樹の顔を見ながら、頭のすみにいやなシーンを思い描いていた。


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38/50話

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マンションに帰ると、自分専用に与えられた部屋に入り、革張りの大きいソファーに転がりこんだ。

一樹は自分をマンションに送ったあと、用事があるからと言って組事務所に戻っていった。

身体が鉛のように重くのしかかり、まともに座っているのもつらい。崩れるように身体を横たわらせると、仰向けになって天井を見上げた。

天井のスクリーンには一樹の笑顔がおぼろげに映ったが、すぐに気持ちの引っ掛かりを感じて消えてしまった。

一樹の職業に不満が募る。ヤクザが職業といえるかどうか分からないけれども。

社会的には悪と言われる、一樹の仕事が好きになれない。

それに、今日の争いごとのことも考えると、一樹の将来の安否も気になる。

今日は唇を切っただけですんだけれども、また今度、襲われることになったらケガだけで済むという保証はない。今の仕事についていれば、いつなんどき暴漢に襲われて、大けがをする可能性だってあるわけだ。

どうにかしてまっとうな道に行かせたい。

そう考えれば、今の状況は好機かもしれない。このまま、今回の件が玲二の仕業という証拠がみつからなければ、一週間で組を辞めさせられてしまう。

そうなったら、一樹はまっとうな道に進むしかないだろう。ヤクザ以外の職に就いて、二人は幸せに暮らせるかもしれない。

しかし、なにも悪いことをしていない一樹が、濡れ衣を着せられたまま組を去ってしまうのは悔しいもの。どうにかして、玲二を引きずり降ろして一樹の無実を晴らしたい。

自問を繰り返すけれども結局いい考えが浮かばず、疲れた身体をソファーに預けながら深く息をついて、天井をぼんやりと眺めた。


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37/50話

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