素敵な夜景に踊らされて☆萌えガク

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激しい乱闘のせいで、辺りはほこりが舞っている。裕也はゆっくりと一樹に歩み寄った。

「唇を怪我してるじゃない」

一樹の顔を見やると、唇が、こぶしで殴られたときに切れてしまったのだろうか、少し腫れた唇から出血しているのに気がついた。ポケットから取り出したハンカチを、そっと優しく創傷部に当てる。

「大丈夫なの?」

傷は浅く、たいしたことではないと分かっていたけれど、やはり好きな人がケガをしている姿を見ると心配といたわりの気持ちが湧きあがる。

それに、柱の陰でビクビクと震えていただけで、なにも手助けできなかった自分が一樹に対して申し訳なくて、普段以上に気を使ってしまう。また、そんな自分が嫌になる。

こころなしか、いつもの威勢のよい一樹のオーラに疲労感が漂っている。

折り目の入った黒いスーツが、うっすらと白いほこりで汚れているし、いつもならきっちりと隙間なく着こなしているシャツも、しわになっていてしまりがない。

三人の男を相手にしていたのだ。いくら一樹が喧嘩に強いとはいえ、それなりのダメージはあるはず。

それなのに、俺ときたら、柱の陰に隠れて震えていたなんて……

「…ごめん」

裕也が暗く、ぼそりとつぶやくと、一樹は不思議そうに顔を傾けた。

「なぜ、謝る?」

「だって俺、いつも一樹のこと、手伝ってやれないんだもん。いつもそばにいるだけで、なにもしてやれない」

一樹は、ふっと顔を緩ませた。

「ばか。俺は、裕也がそばにいるだけで幸せなんだ。それだけで、充分だ。そんなこと、考えるんじゃない。それに」

「で、でも……」

「それに俺は、裕也を守ることに使命感をもっている。悪いやつらには、指一本触れさせやしないさ」

話しかけようとしたけれど、それを遮るように一樹が言葉を継がせた。

すっきりとせず、もやる気持ちで立ち尽くす裕也に、一樹は「気にするな」と言って、額にキスをした。


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しだいに男たちのどなり声が聞こえなくなり、変わりに苦しそうなうめき声が聞こえてきた。どうやら、かたがついたようだ。

裕也が恐る恐る柱の陰から顔を出して辺りの様子をうかがうと、三人の男たちがふらふらとよろめきながら立ち上がろうとしている姿が見えた。

「おぼえてやがれッ」

お決まりの捨て台詞を吐いて、三人組の男たちは一斉に逃げだしたが、一樹はやすやすと逃すようなことはしなかった。一人の、逃げ遅れた男の襟首を素早く掴み引っ張り上げる。

「逃がさねぇぞ」

襟首を掴まれ息の詰まった声を出した男は、なんとかして逃れようともがくけれども、一樹の鍛えられた腕力には敵わず、為す術もないまま羽交い締めされて動きを封じ込められる。

「いったい、誰のさしがねだ?」

一樹に首元をがっちりと絞められた男は、苦しそうに顔をしかめる。

「そんなこと、言えるわけ……」

最後まで言わずにして、男は苦痛に顔を歪ませて悲鳴をあげた。

いや、声はでなかった。まるで陸に上げられた魚のように、大きく口を開けてパクパクとあがいているだけだ。

額は脂汗が吹き出し、顔は赤くなっている。声が出ないのも、一樹の腕が男の首をきつく締めあげているせいなのだろう。

「わ、わかった。言うから……言うから手を、手を緩めてくれ」

ごほごほとむせながら男は言う。

「れ、玲二さんに言われたんだ。俺たちは玲二さんに言われて、しかたなく、あんたたちのあとをつけて……か、かんべんしてくれ」

「やはり玲二か」

一樹の眉間にしわが寄る。

予想していたとおりだ。玲二に指図されて、この男は俺たちを尾行していたんだ。

二人は逃げ去り、そのうちの一人も一樹に抑え込まれていることで、気持ちに余裕を取り戻した裕也は、柱の陰から身を乗り出して聞き耳をたてる。

「どうして、俺たちのあとをつけていたんだ?」

「あ、あんたたちの行動を調べろって言われて。そ、それだけだ。本当だ。信じてくれ」

男は今にも泣きそうになって、必至になって許しを乞う。

「な、もういいだろ?許してくれよ。な、な?」

哀れに見えるぐらい必死に謝る男の姿に、一樹は見下げた様子で「ふん」と鼻を鳴らし、手を離して勢いよく突き飛ばした。

「ひーッ」

男は、ひきつった声を出しながら振り返りもせず、脱兎のごとく走り去っていく。

「ふん、情けねぇ」

一樹は吐き捨てるようにつぶやき、逃げていく男の背中を見送った。


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35/50話

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メンテナンスもろくにしてないようで、コンクリートの壁は剥がれているし、ビル周りの雑草も伸び放題になっている。ひとけもなく全体的に廃墟感を漂わせている。

もしかして、一樹は誰にも迷惑をかけないようにわざわざここを選んだのかもしれない。

「あのビルの中で待ち伏せだ」

車を降りて、急ぎ足で建物の中へ入る。入り口のドアを押し開いたところで、尾行していた車がやってきた。

「何者なのか、確認してやる」

ビル内に入るなり、そう言いった一樹は裕也に目をやる。

「奥で隠れていろ」と、手で合図を送られた裕也はキョロキョロと辺りを見渡し、どこに隠れていいのか迷ったが、通路の奥にある剥き出しのコンクリートでできた柱を見つけると、その柱の陰に身をひそめた。そっと顔を出してビルの出入り口を注視する。

外から、車のドアを勢いよく閉める音が3度鳴る。

ばたばたと、せわしい足音がこちらへやってくるのがわかり、裕也は緊張と不安が極度に高まり、ごくりと唾を呑む。

入口前の壁に身を潜めている一樹は、すでに臨戦態勢に入っていた。こぶしを握り、表情を引き締めて身構えている。

3人の男たちがいきおいよく入口から入ってきた。先制攻撃をしたのは、一樹だった。

まず、一人目の男の顔面にストレートパンチを食らわし、床に仰向けになって倒れこんだところに、すかさず蹴りを入れる。

どうやら、それが一樹のやり方らしい。経験を積んだ者らしい、見事な奇襲攻撃だ。

うめき声をあげて、苦しそうに床を転げまわる男の鼻から、血が流れ出す。男の血液が、ほこりっぽい床の上にぽたぽたとしたたり落ちた。

不意をつかれた二人の男が、一斉に怒声を響かせて一樹に襲いかかる。

そのあとは、壮絶な殴り合いの応酬だった。3人の男を相手に、野獣のごとく暴れまわる一樹。強い。3対1という不利な状況にかかわらず、一樹は男たちを次々とのしていく。

恐ろしくなって、顔を引っ込めて柱の陰でぶるぶると震えていた。喧嘩慣れしている一樹を見ると、やはりぶっそうな職業の人間だということを思い知らされる裕也だった。


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34/50話

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外に出て太陽の光を浴びると、裕也は大きく息を吐いた。

緊張が解放されて、身体が軽くなった気がする。

「一樹、これからどうするの?」

「今、部下に調べさせている。じきに犯人はわかるさ」

そう言っているものの、一樹の顔には少し焦りの表情が見えている。

駐車場に停めてあった車に乗り込み、一樹のマンションへ向かう。

しばらくすると、ハンドルを握っている一樹が眉をしかめた。

「後ろの車、俺たちを尾行しているな」

驚いた裕也が後ろへ振り向くと、黒いセダンが、近すぎず遠くすぎずの絶妙な車間をとって、ぴったりとあとについてきているのが見えた。尾行なんてドラマだけの話かと思っていた。

後ろに付いている、セダンを運転しているドライバーの顔を確認しようとしたとき、思わず目があってしまった気がして慌てて顔を前に向けた。

この車のガラスには、黒いスモークのファイルムが貼ってあるから、外から中の様子は見えないはず。だけど、自分たちを狙って尾行しているかと思うと、顔を確認することさえ身の危険を感じてしまう。

「もしかして、玲二の手下?」

「たぶんな……」

一樹は、アクセルを踏みこんで車を加速させた。

裕也たちの乗った車は、右に曲がったり左に曲がったりと頻繁にコースを変えるが、黒いセダンは執拗に追ってくる。

「しつこいやつらだ」

舌打ちをして、いらだった様子をみせた一樹は、車を左折させて狭い裏道にはいると、そこで乱暴にぎゅっとブレーキを踏んだ。

急ブレーキのせいで、前のめりになったしまった。前かがみのような格好になって、自分の足先を見つめることになってしまった裕也が、そっと顔を持ち上げると、車の前方に古ぼけた雑居ビルが建っているのが見えた。


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33/50話

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数分前、組長に会うなりすぐに言われたのが「お前には、組を去ってもらう」という言葉。

組の金を盗んだという汚名をきせられたのがくやしいのか、一樹が膝の上でこぶしを握り締めていたのが見えた。

「今回のことは、組として放ってはおけない。お前がかかわっているという噂が出たからには、お前には組を出て行ってもらうことにする」

再び、先ほどと同じようなことを話す組長に、一樹は納得のいかない様子だ。

「俺が組の金を盗んだわけではないと言っているのです。それがなぜ、俺が処罰を受けなければならないのでしょうか?」

「体面の話しだ。組の金を盗まれたのに、誰も処罰しないのは下の者に示しがつかない。だから、組として噂のあるお前を選んだだけだ」

「では、俺が本当の犯人を捕まえれば俺ではないと分かってくれるのでしょうか?」

「ああ……見つけられたらな」

「俺に、猶予くれませんか。もしそれまでに、犯人を見つけられなければ、俺は言われたとおり組を去ります」

組長は、しばらく腕組みをして気難しそうに考えて、ゆっくりと口を開いた。

「1週間くれてやる。やれるか?」

組長の期待を含めた言葉に、一樹は力強く答えた。

「はい、なんとしてでも見つけ出して見せます」

組長はニヤリと口元を緩ましながらも「うむ」というような貫禄のある仕草でうなずく。なんだか一樹に強い思い入れがあるようだ。口では厳しく言っているけれど、もしかして一樹が犯人ではないことは知っているのかもしれない。

話しを終えた一樹と裕也は、一礼をしてから部屋を出た。

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32/50話

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