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一樹と裕也の二人は、車に乗って事務所へ向かった。
着いた先は、5階建ての比較的小さな雑居ビルだった。敷地内の駐車場に車を停めて一樹がドアを開けて降りると、裕也も一樹の後についていく。
一樹の組の事務所に行くのは初めてのことだ。
ビルの中に入ると、一樹は出入り口のすぐ目の前にあるエレベーターの昇降ボタンを押した。ボタンは上の階を指している。
言葉数が少なくなっている二人に、古びたコンクリートの独特のにおいがまとわりついてきた。湿気のある、鼻にツンとくるようなにおいだ
エレベーターが開き、一樹が乗り込むと後に続けて裕也も乗り込む。一樹が階数を示す5のボタンを押すと、エレベーターは音を立てて上昇していった。
エレベーターのカゴの中で密室となり、ここなら誰にも聞かれることはないだろうと思って一樹に訊いてみた。
「ねぇ。もしかして、これって玲二がからんでいるってこと考えられないかな?」
「ああ、俺もそれを考えていた。あいつは、執念深い。俺たちに嫌がらせをしてきたってことも充分ありえる」
一樹は、裕也に同意してこくりとうなずく。
「だったら、上の人にそう言えば?」
「玲二がやりましたってか。俺は、ガキじゃないんだぜ。まずは、玲二の仕業だという証拠を見つけるんだ。そうじゃないと、上の人間には通用しない」
「もし……証拠が見つからないとどうなるの?」
「そのときは、俺は破門だ。そればかりか、消えた金の金額分を払わされ、運が悪ければ殺される」
破門?普通の会社でいうとクビになることなのか。さらに、運が悪ければ殺される……。
やくざ社会の怖さを改めて思い知らされる。裕也が、ぶるっと身をすくませたところで、5階に着いたエレベーターの扉が開いた。
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26/50話
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