素敵な夜景に踊らされて☆萌えガク

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硬い銃身を押し付けられていた額の圧迫感がなくなりそっと目を見開くと、視界に映ったのは感情のこもっていない冷酷な瞳だった。

キスの相手は恋人の一樹でもないし、ちょっとした遊び相手の拓実でもない。

愛情のかけらも感じられない冷たいキスの相手は、玲二だった。

玲二にきつく唇をしゃぶられ、よだれがお互いの口周りを汚す。

「…や……」

拳銃のことを忘れたわけではなかったけれど、玲二から逃れようと本能的に顔を逸らせると、すぐさま荒々しい怒声が飛んできた。

「こらッ。逃げるんじゃねぇよ!」

よだれで汚れた口周りを舌舐めずりしている玲二が、手に持っている拳銃を見せびらかすようにぶらぶらと目の前で振る。

恐怖で身体を震わすことしかできない裕也に、くっくっと押し殺したような笑いで見下ろす玲二。どうやら、優位な立場に立っている自分に優越感を抱いているらしい。

「おいおい、どうしたんだ?身体の力は抜いていいんだぜ。まず息を吐け。リラックスしろよ」

そう言いながら、玲二は、銃口を裕也の頭から鼻へと移動させて狙いを定めるような仕草をとる。

「そうだ、ゆっくり深呼吸をするんだ。鼻から吸って口で吐いて……」

もちろん、拳銃を突きつけられている状況で深呼吸をしても落ち着くわけがない。

玲二にからかわれていると分かっているが、突っぱねることができるわけでもなく、今は言われたとおりにするしかない。

正直、泣きたくなる。

「よし、今度は服を脱げ」

玲二が命令口調で言ってきた。

唐突な玲二の言葉に、裕也の脳裏に不安が横切る。

「そうだ、ふたりでいいことしよってんだよ」

おそらく、薄暗い病室の中でも見て取れるぐらい、自分の感情がはっきりと顔にでたのだろう。

なにも言わずとも、玲二は裕也の心配をあざ笑うかのように答えて、

「お前の考えていることはお見通しなんだよ」とでも言いたげな、自慢と満足が混ぜ合わさったようなにやついた笑いでヘヘッと鼻先を天井に向けた。

もちろん、そんな欲求を受け入れることなどできるわけがない。

裕也は、泣き出してしまいそうな顔でぶるぶると左右に振った。それが、今できる精一杯の拒絶の意思を表したもの。

――助けて、一樹。

逃れることができない身の危険に、心のなかで恋人の名前を叫ばずにはいられなかった。


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21/50話

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蒼く冷たい月明かりがふたりを照らしている。

ベッド上には、仰向けの状態で身体をガチガチに固まらせている裕也の姿があった。

口を覆っていた玲二の手がなくなり、助けを求めることは自由になったはずだけど、喉が詰まり声を上げることができなかった。

ある意味、口を塞がれていたときのほうが自由はあったかもしれない。額に冷たい銃口を突き付けられるよりは。

眉間の付近に固い異物を感じながら、裕也は頭から足のつま先まで一寸たりとも動かすことができず、まるで石像のように身体を固まらせて玲二の顔を見つめていた。

自分の命は、玲二が握っている。

玲二の気分が少しでも損ねたら、きっと殺される。それどころか、ほんのちょっぴりと身体を動かしただけでも、抵抗したと思われてズドンと撃たれるかもしれない……。

他人に、銃を突き付けられている恐怖は計り知れないものだ。

それも、銃を握っている男は冷酷非道の男。

全身からじっとりとした冷や汗が滲み出ているし、蛇に睨まれた蛙の気持ちも理解できる。

恐怖で身動きできないだけじゃない。生きた心地がしなくて、あきらめの念にかられる。

今までの自分の人生は、楽観主義で通してきた。くじけそうになってもくよくよせず、ポジティブで前向きな姿勢で生きてきたつもりだった。

だけど今の自分はどうだ?……すっかり悲観論者に成り果てているじゃないか。

楽観……?

どうやらそんな言葉は、自分の辞書から消去されたらしい。

頭に浮かぶものは、どれもこれもネガティブなことばかり。

今日が俺の命日。もうだめかも知れない……と。

裕也は、あきらめの思いでぐっと固く目を閉じた。

一樹……天国で待っているよ。

現実から逃避しそうになっている意識のなかで、恋人の顔を思い浮かべた。

唇から柔らかい感触が伝わる。そのあと、自分の歯列を無理やり押し開き口腔に侵入してくる軟体なもの。

恐怖で頭の思考が鈍っているせいなのか、自分が実際に口づけをされていることに気づくまで数秒の時間を要してしまった。


・+☆+・
20/50話

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いつの間に寝てしまったのだろうか。

なにか物音がして目を覚ますと、すでに辺りは暗闇に包まれていた。

天井に設置してある常夜灯のわずかな光りと、窓から差しこむ月明かりだけが室内を照らしている。

寝起きの、はっきりとしないぼやけた目で、薄暗い室内を見渡す。

すぐに、裕也ははっとして自分の身体が急激に冷めていくのを感じた。

部屋の隅には、黒い人影。

「起こして悪かったな。ふふッ」

不気味な男の笑いとカツカツという固い足音が、ゆっくりとこちらに近づいてくるのがわかる。

足音は、裕也のベッド脇で立ち止った。

「よう、坊や。見舞いにきてやったぜ」

裕也はおそるおそる、ドスの利いた声の持ち主のほうへ視線を移すと、最初に目に入ったのはきちんと折り目のはいった高級そうなスーツだった。

腿のあたりから少しずつ、少しずつと視線を上方へ移していく。そのあいだもずっと、あの男の顔が頭に浮かんでいる。

そう、玲二の顔だ。

普段、神様なんて信じているわけでもなかったけれど、今は祈られずにはいられなかった。

神様お願いします。あの男じゃありませんように……。

しかし、祈りも空しく、男の顔まで視線を移した裕也は愕然とした。

月明かりに照らされていたのは、口もとを歪めて笑っている、まぎれもない玲二の顔だった。

「ひッ!」

恐怖で顔がひきつり、血の気が急激に引いて卒倒しそうになる。

すぐさま、張り裂けんばかりの大声で助けを呼ぼうと口を開けた。が、

「たす……んんんぐぐ」

「おっと、声を出すんじゃねぇぞッ」

助けを呼ぼうとしたとき、玲二の手によって言葉を遮られてしまった。

口と鼻を塞がれて、おまけに顔の向きを自由に動かすこともできなくなって、視線だけ動かして玲二を見る。

「静かにしろ。静かにしないと殺すからな」

顔を近づけた玲二が、耳もとでささやいた。

口と鼻を塞がれたせいで息苦しい。

裕也はふぅふぅと懸命に呼吸しながら、玲二の脅迫に大きく目を見開き、こくこくとうなずく。

呼吸ができない。このままだと、死んでしまう。

裕也は、玲二がこのまま自分の口と鼻を塞いで窒息死させるつもりなのかと考えていたけれど、それは間違いだということを、このあとすぐに知ることになる。

殺すには、もっと確実なもの……。

玲二は片方の手で、上着の中からなにかを取り出した。

上着の内ポケットから出てきたのは、鈍い黒光りを放つ拳銃だった。


・+☆+・
19/50話

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「心配するな。裕也は俺が守ってやる」

心配な顔で窓の外を眺めている裕也に、一樹は力強く言った。

少し間をおいてから「しかし……」と、一樹は言葉を付け足す。

「念のため、しばらく学校は休むんだ。いつどこで、玲二が狙っているのかわからない。俺は玲二と掛け合ってみるから。お前は一人でゆっくり休んでいろ」

「い、いやだよ……ひ、一人にしないでよ」

振り返った裕也は、一樹の腕を強く掴み左右に首を振った。眼尻には、涙が溜まっている。

一人になるのが怖い。

子供のころ、遊園地で両親とはぐれて迷子になってしまったときのいやな思い出が頭に浮かぶ。

知らない場所で独りぼっちになったときの孤独感と、知らない大人たちばかりで誰にも頼ることができなかった心細い気持ち。

あのとき、わんわんと大声で泣きわめいたものだけど、今回も大声で泣きたくなる。

「お願い……。一人にしないで……」

哀願するように、一樹の腕にすがりつく。

今、頼れるのは一樹だけ……。

玲二に怯えて、一樹のスーツの袖を掴んだ指先が小刻みに震えている。

「大丈夫だ。不安なら俺の組の者に見張りをさせる。だから、裕也は安心して休めばいい」

一樹は裕也の両肩に軽く手を乗せて、言い聞かせるようにやわらかい声で言う。

「…で、でも……」
「安心していい……」

なにか言いかけようとしたところで、一樹が遮った。

「大丈夫だ」と言い聞かせるような強い眼差しで見つめられて、不安な気持ちを残しながら、しぶしぶ腕を掴んでいた手を緩める。

「じゃ、俺は一旦帰るから」

そう言って一樹はきびすを返す。

一樹がドアのノブに手をかけたところで、声をかけた。

「一樹も気をつけて……」

「ああ、俺は大丈夫だ」

一樹は振り向いて、にこりと笑顔で応えると病室を出て行ってしまった。

たった一人、病室に残された裕也は仰向けのまま天上を見上げた。


・+☆+・
18/50話

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権力と金。人の欲望が渦巻き、よどんだ空気が人の心を荒廃させている。

暴力が支配をして、強者は力ずくで奪い、弱者は骨の髄まで搾り取られる弱肉強食の世界――それがやくざの世界らしい。

今まで知らなかった裏の世界を聞かされて、ぞっと寒気がした。

最初は、一樹の話しに耳を傾けていた裕也だったけれど、あまりにもどろどろとした汚い話しに耐えきれなくなってしまった。

「ふぅ」

ベッドの上で仰向けになり、ヘドが出そうなのをこらえて息を漏らす。

吐き気がして、気晴らしのつもりで窓の外へと目をやると、透き通った青い空に恵まれた晴天の、暖かい陽の光が眩しく窓に差しこんでいることに気がついた。

今日は、何度も外の景色を見ていたのに……。

思えば、窓のほうに顔は向けていたけれど、考え事をしていたために外の景色は見ていなかったかもしれない。

窓の外は、平穏な世界だった。

ぽかぽか陽気のなかで、蝶がひらひらと頼りなげに舞い、花壇の花は色とりどりに花を咲かせていて、病室から見える景色は、のどかで平和そのもの。

「ねぇ、一樹。少し窓を開けてみて」

息苦しい病室の空気を入れ替えたくて、一樹に窓を開けてもらう。

そよ風が室内に入りこみ、さらさらと髪の毛が揺れる。

と同時に、窓際にある小さな棚の上に置いてあったメモ書き用のノートがそよ風にあおられて、パラパラとめくれあがった。

裏、表、裏、表……。

無意識のうちに、一枚一枚めくれるたびにつぶやいてしまう。

今までの穏やかな状況が一転し、薄い紙切れがそよ風にあおられてめくれるように、ちょっとしたきっかけで裏の世界の住人に、命を狙われるとは。

そもそも発端は、パーティーで玲二と顔を合わせてしまったこと。

セレブなパーティーで浮かれていた自分か悔やまれる。

あのとき、パーティーに出ていなければ玲二に狙われることもなかったはず。

一樹が病室に入ってきたときと同じように、頭の中で事故に遭ったときの映像を思い出しながら窓の外を眺めていた。

あの恐怖は……事故に見せかけて、自分の命が狙われたという恐怖は当分忘れられそうもないな……。

裕也は、そう心の中でつぶやいた。


・+☆+・
17/50話

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