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「裕也!大丈夫か?」
病室のベッドに横たわっていると、頭上から切迫した声が降ってきた。
ぼぅとして病室の窓を眺めていた裕也が見上げると、心配して眉を寄せている一樹の姿があった。
交通事故に遭ってしまったことを聞きつけ、病院まで駆けつけてきたらしい。
「…大丈夫さ」
幸い怪我のほうはない。
ただ精神的なショックのほうが大きくて、びくびくと不安にかられていたところに一樹が来てくれたのは嬉しい。
固くなっていた身体の力が抜けて、心に落ち着きを取り戻す。
「どうしてこんな。いったい何があったんだ?」
「信号無視をした大きなダンプが……突っ込んできて……」
裕也は少しずつ、事故の状況を話した。
話しの最後まで黙って聞いていた一樹がひとこと口にした。
「それは、きっと玲二の仕業だ」
「え?」
「そのダンプの犯人は、玲二を手下の仕業に違いない。前にも言っただろう。あいつは、人殺しをなんとも思っていない本物の極悪人だ。事故に見せかけて、お前を……」
と言いかけて口をつぐんだ。
まさか……俺を?
今まで悪事を働いたこともなく、平和でいつも陽の当たる世界でのんびりと日常を過ごしてきた。
まさか自分の命を狙われるなんて思ってもみなかった。
一樹が言わんとしていたことを理解してぶるっと身震いする。
俺を……殺そうとしていた?
あのときの、交通事故にあったときよりも強い恐怖が身体を襲い、和らいだ身体が再び硬直するのを感じた。
「で、でもどうして俺を……?」
震える声で一樹に訊いてみた。
玲二とは、あの豪華なパーティーで一度会っただけだ。命を狙われるほどの動機が見当たらない。
玲二のことは、こちらはなにも知らない。それは玲二のほうだって同じこと。関わりがなければ、トラブルなんておきようがない。
まして、命を狙われるほどの恨みなんて……。
そんなことを考えていたが、それは裏の世界では通用しないということを、この後知ることになった。
「俺だ……」
一樹が、暗く低い声で言った。
「玲二は、俺が目当てなんだ。俺とよりを戻したいために、裕也を狙ったんだ。
これは、俺に対する警告だ。俺と付き合わないと、お前は大事なものを失うことになる……という警告だ。たぶん、手始めのつもりで裕也を狙ったんだろう」
こぶしを力強く握りしめる一樹の表情には、怒りの色が滲んでいた。
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16/50話
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