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二人のあいだに甘ったるい空気が漂いだして、裕也は自分の気持ちを抑えきれずにいた。
見上げる二つの瞳は、さらに潤いを増していて何かを訴えているように思える。
我慢の限界だ……。
「シャツのボタン……はずすよ」
そう言い終わらないうちに、裕也は拓海の開襟シャツのボタンに手をかけてプチプチとはずしていく。
徐々にあらわになっていく薄い胸板に強い興奮を覚えながらも、あくまで優しく、拓海を怖がらせないようにボタンをはずしていった。
すべてのボタンがはずされると、左右に大きく開いたシャツは両肩から滑り落ちるようにして地面に落ちてしまった。
「あッ……」
声をあげた拓海がシャツを拾いパンパンとシャツについた土ぼこりを払う。キョロキョロと辺りを見渡し、シャツを引っ掛けるにはちょうどよい木の枝を見つけると、背伸びをしてシャツを掛ける。
そんなたわいのない拓海の動作に、裕也は目を細めた。
半裸になった拓海の一つ一つの行動がかわいらしい。それは、陽気な日差しのなかで、ますますきわだっている。
まじまじと見つめる裕也の視線に気づいたのか、拓海はにっこりと笑った。
日光の下で見せる屈託のない笑顔は、とても清々しくさわやかだ。
一樹と正反対の男。
朝のさわやかな陽ざしは、いつもダークな雰囲気を身にまとっている一樹にはまったく合わないと……。
ふと、恋人の一樹のことが頭に浮かんだが、今さら引き返す気にはなれなかった。
今までも、そうだった。
恋人がいるというのに、成り行きで他の誰かと身体を交わすことは、幾度なく経験してきたことだ。これまで、おいしい思いもしたこともあったけれど、どちらかというと嫌な思い出のほうが多い。
やめればよかった……と後悔することも数知れず。なのに、今回も過去の教訓が生かされることはなかった。
恋人がいるというのに……俺は軽い男だ。
裕也は、自嘲の笑みを浮かべながら自分のシャツのボタンをはずしていく。
「拓海、キスをしようか」
シャツを脱いで拓海に歩み寄った裕也は、返事を待たずにして唇を塞いだ。
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11/50話
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