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OhmyNews International 韓国情報機関の“スパイづくり”を支援
「主権侵害」に加担した公安庁と警察(1) 記者:野田敬生 2006-09-13 =流出した機密文書= 起訴された元大学講師の安徳瑛氏 無罪判決を受けた直後の安徳瑛氏(韓国オーマイニュース) 2002年5月、韓国において“北朝鮮のスパイ”だとして国家保安法違反容疑などで逮捕・起訴された元大学講師の安徳瑛氏。一審で有罪判決を受けたものの、一昨年5月の控訴審では一転して無罪判決を言い渡された。審理の過程では韓国情報当局の杜撰な見込み捜査の実態も暴露され、このニュースは当時、KBS(韓国放送公社)などでも大きく取り上げられた。ある韓国メディアは「国家保安法が一人の人生を破壊した」と報じ、韓国オーマイニュースも04年9月19日、安氏について「国家保安法の被害者だ」と伝えている。 安氏は無罪判決を受けて以降、治安情報当局への抗議デモを繰り返していた。すると今年春になり、韓国の情報機関が作成した驚くべき機密文書が流出したのである。私はあるルートを通じて、その文書を入手した。 手元にあるのはA4版で計30枚に及ぶ韓国語の資料だ。一枚ごとに「CONFIDENTIAL」と機密指定の印も刻まれている。題目は「決定的な犯証収集と現地採証のために工作官が日本に出張した結果の報告書」。簡単に言えば、「スパイ容疑対象者」と目された安氏が2000年6月に日本を訪れた際、韓国軍の情報機関である国軍機務司令部(以下「機務司」)や韓国警察庁の保安局に所属する工作官らが密かに来日して日本国内で捜査・情報活動を繰り広げた詳細な記録を綴った文書である。
安氏の弁護人を務めた金七俊弁護士(茶山弁護士事務所)をソウルで取材し、事件の背景や流出資料の内容について尋ねると、金弁護士は次のような感想を口にし、しきりに首を傾げた。 「北に逃避」の恐れがあるなどといいながら、スパイ行為の核心は「立証できない」と認める検察側。情報機関には総じて「目的のためには手段を選ばない」という体質があり、各国で冤罪を次々生み出し続けているのが実態とはいえ、前出の金弁護士も「まるでブラック・コメディだ」と憤る。こんなデタラメな捜査の一部が日本国内で公然と行われ、日本の警察や公安調査庁がそれに協力していたというのである。(続く) 「私が一番不思議なのは、日本の機関が韓国の機関からの要請を受けて、単に情報を提供するばかりでなく、言われるままに実地の調査活動を行っていることです。日本に『主権』はないのでしょうか?」 =「立証できぬ」スパイ事件= 1964年生まれの安氏は82年にソウル大学応用美術学科に入学し、86年から88年までROTC(韓国軍将校候補生)として学生中央軍事学校で勤務したエリートである。同期生には韓国の軍隊、治安情報機関に勤務する者も多い。その後、安氏は韓国の化学メーカーに就職してデザインの仕事を始めたが、90年から92年まで東京の国際外語学院で日本語を学び、引き続き筑波大学大学院の芸術研究科修士課程に進んで94年に修了。帰国後は大学講師の職に就いた。 そんな安氏が逮捕されたのは2002年、韓国ではオボイナル(父母の日)に当たる5月8日のことだった。この日、安氏は奥さんと当時小学4年生だった一人娘を連れて外食に出かけ、ソウル市内を3人で歩いていたところを突然取り囲まれて手錠をかけられた。有無を言わさず車に押し込まれた安氏が連行されたのはソウル市・弘済洞にある警察庁保安局の「対共分室」。20日間の尋問を受けると今度はソウル拘置所の独居房に移送された。拘束期間は計182日間。過酷な取り調べと、心当たりのない濡れ衣を着せられた精神的なショックから体重が15キロ以上も激減したという。 再び手元の機密文書を読み込むと、安氏は軍の防諜活動によって94年9月ごろから目を付けられていたようだ。要因の一つが日本に留学していた時期、「朝鮮奨学会」から月4万円の奨学金を受け取っていた点。また、日本の鉄道に興味を持っていたため日本各地を精力的に旅行し、逮捕時には日韓両国の往復回数が72回にも上っていたことも疑いを増幅したらしい。写真が趣味で行く先々で大量の写真を撮り、韓国軍内に友人が多いためか、一見いかにもスパイ活動のような印象を受ける、そういう目立つ行為が当局を刺激したのだろう。 ただ、安氏が滞日中に奨学金を受け取った「朝鮮奨学会」は民団系、総聯系の各々一人ずつの代表理事から構成され、理事も両団体から選出されている。韓国籍、朝鮮籍どちらでも奨学金の給付を受けられるため、これを根拠に安氏をスパイだと断ずるのは無理がある。何よりも安氏にかけられた「スパイ容疑」の希薄さは裁判の中で検察側も認めているのだ。一審の量刑などを不服として検察側が2002年12月14日に作成した控訴理由書には、事件の本質が端的に記されている。 「(本件は)被告人が朝鮮奨学会内で対南工作員等に取り込まれ、軍事機密を探知し、伝達し、現役将校を取り込もうとしたものの摘発されたスパイ事件であり、単にその実態を『立証することができない』だけである」「(被告人が北に逃避することが憂慮され、速やかに検挙したためにスパイ行為を『立証できない』のであり、やむを得ず国家保安法違反と軍事機密保護法違反等で起訴された事件である」(マル括弧内の補足と二重カギ括弧は筆者が追加) '''【編集部注】
この続きは午後に掲載します。野田記者はジャーナリストで元公安調査庁の職員。なお、このリポートは光文社発行の週刊誌『FLASH』(9月26日号)にも一部が掲載されています。''' |
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