ギャラさん映画散歩

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       「現実の作家は、常に作品よりも劣る」
          (「赤い風車」からロートレックの言葉)
 
あらすじ
1890年のパリ・モンマントルにあるキャバレー「赤い風車(ムーラン・ルージュ)では、歌・ダンス・フレンチカンカンなどの演芸が繰り広げられ、客は飲みながら歓談にふけっていた。そこの常連客トゥルーズ・ロートレック(ホセ・ファーラー)は、踊り子や客達を写生する画家だった。
 
ロートレックの実家は名門で伯爵の地位をもっていた。幼少時、彼は階段から転げ落ちて両足を骨折したが、手術の失敗で足の成長が止り、身長が小さかった。そのため、幼馴染との結婚は破談となり、傷心の末、得意の絵を学ぼうとパリに出た。画才のある彼はモンマントルに住み、絵を描いて暮らしたが、絵は売れず、女性に対しても自信を失っていたため酒びたりの日々だった。
 
そんなある日酔って帰宅中、夜の女マリイ(コレット・マルシャン)が、警察官の尋問を受けて逮捕されそうになっているのを救った。そんなマリイは行き場が無いとロートレックのアパートに押しかけてきた。あまりにも図々しいのでロートレックは「出て行け」と怒鳴った。しかし、マリイが身の上話を始めたとき、髪を梳く項をスケッチしたくなり泊めることにした。泊めた後も言い争いをしつつ、モデルをしたり、しばらくいたが悪たれをつき出て行った。
 
母親が訪ねて来て、ロートレックを励ました。再度、マリイを探したがマリイは場末の安酒場で、以前から付き合っていた男と一緒にいて「あんたは気色悪い」と侮蔑したため、諦めて帰宅し、絶望してガス自殺を試みる。しかし、自室にある絵画を見回すと絵に対する情熱が再び蘇った。
 
「赤い風車」支配人から頼まれたポスターが出来上がり、バリの町に張り出された。評価はまちまちだったが、概ね好評だった。しかし、ロートレックの父親は、下品だと家名に傷つけたと勘当し、援助を打ち切った。「赤い風車」は盛況で、大衆向けから高級な店に変化してしまった。
 
1900年、ロートレックが馬車でセーヌ川を渡った時、入水自殺するように見えた女性ミリアム(シュザンヌ・フロン)に出会った。ミリアムは、付き合っていた男性の部屋の鍵を捨てたのだった。それを聞き、そのまま別れた。
 
そのころロートレックの絵は、ぼつぼつ売れ始め、セルビア国王も買ってくれた。しかし、相変わらず、酒びたりの生活を続けていた。そんな中、「赤い風車」の歌手を通じて、デザイナーとモデルを兼ねていたみミリアムと再会する。そして親しくなり付き合いが始まった。しかし、ロートレックは「愛欲は肉体と精神を忘れさせ自尊心も失わせる」「結婚とはデザート後のまずい食事だ」「賢い女は愛に身を投じない、男を安全有利な投資対象にする」「あなたは不幸だ。作家を尊敬するのはいいが、現実の作家は、常に作品より劣る」などとミリアムに言って悲しませた。そのためミリアムは、他の男と愛のない婚約をした。
 
ミリアムの幸せを望み、愛を拒否したロートレックは、更に飲酒に溺れた。酒場で倒れ、アパートに戻ったロートレックは、幻覚を見て階段から転がり落ちた。重症のため父母のいる実家へ帰ったが意識は朦朧としていた。そこへルーブル美術館から生存者としては初めて購入するという手紙が届いた。父親はそのとき許し乞うた。ロートレックは、「赤い風車」の光景を思い出しながら息を引き取る。享年36歳。
 
感想など
l       19世紀末のパリ・モンマントルの風俗と、そこで暮らした画家ロートレックの生涯を描いた映画です。内容は身体的な自信喪失で女性運に恵まれないロートレックは得意な絵画に全てを注ぎ込みます。行きつけのキャバレー「赤い風車」でダンサーや客の生態や夜の女を写生しながら酒に入り浸る生活でしたが、キャバレーから依頼されたポスターが評判を呼び、それを芸術の領域にまで高め、絵画にも傑作をたくさん残しました。ただ、退廃的生活を過ごした影響で36歳という若さで没しています。
 
l       幼馴染の女性から結婚は拒絶されます。得意な絵で自活しようとバリに出ますが親の援助は続きます。身近な女性とも色恋沙汰の付き合いは出来ません。寂しさに酒びたりですが、絵を描くことに生きがいを感じます。そんな中、ふと知り合った夜の女と同棲します。女は貧しく、ふしだらで教養も落ち着きの無い、感情の趣くままに自由に生きています。しかし、ロートレックに対して、哀れみや嫌悪感を示さず、あるがままの姿を見詰めてくれました。「出て行け」「出てゆく」の繰り返しでしたが、ロートレックは、彼女を必要としました。しかし、最終的には彼を気色悪いと拒否してしまいます。
 
l       その後、偶然デザイナーとモデルをやっている女性と知り合います。その女性は美貌と教養のあり、ロートレックに思いを寄せますが、自信喪失のロートレックは、素直になれず、「心遣いはうれしいが、必要ない」と言って自ら彼女を避けて悔やみます。そんな三度目の正直の恋を逃してしまいました。
 
l       シェークスピアの戯曲「リチャード三世」は「俺は見てくれが悪く色恋には向かぬ、ならば、この人生悪党になって楽しもう」とありますが、ロートレックは、「・・俺は絵描きになって酔いながら絵を楽しもう」かもしれません。
 
l       徹底的に女性の愛に恵まれなかったロートレックは、絶望しますが、絵を描くことだけは捨てられなかったのです。「赤い風車」の支配人から依頼されたポスターは、賛否両論はあっても好評で、集客の力になります。しかし、父親からは下品で家名を汚したと援助を打ち切られます。しかし、段々ポスターの評価を得て、絵も売れ始め、セルビア国王も絵を買うほどの評判になります。
 
l       しかし、心の中が満たされぬロートレックは、ますます酒びたりになりますが、絵を描くことだけは、続けました。最後は階段から転げ落ちて、危篤となり実家へ戻ります。そのときルーブル美術館から買取の通知が来て、父親も後悔するのです。享年36歳の天才は「赤い風車」の光景を思い出して息を引き取ります。
 
l       ロートレックの絵は、映画の中で、モデルから似ていない、こんな変な顔でないと苦情を言われています。そんな絵ですが、よく見ると人物の内面や社会性を鋭い観察力で見詰めています。また動きのある対象や形態を素早く捉え独特の色彩や線で表現しています。そこには世紀末の厭世的で退廃的な歓楽街で暮す、ダンサーや芸人・観客、そして貧しい娼婦などへ共感した風俗的描写が上手く表現されていることが判ります。また、リトグラフのポスターも大きくデフォルメされたデザインで、芸術性を高めた素晴らしい作品がたくさん残されています。
 
GALLERY 1
イメージ 1 イメージ 2
 タイトル                              キャバレー「赤い風車」イメージ 12 イメージ 20
 赤い風車の内部                                常連ロートレックは写生しながら酒を飲むイメージ 21 イメージ 22
 ムーランルーシュを歌う歌手                 ロートレックイメージ 23 イメージ 24
 幼馴染に振られる                       同棲したマリイと画作中のロートレックイメージ 25 イメージ 26
 マリイにも愛想突かされる                   ロートレックの部屋の作品イメージ 3 イメージ 4
 ポスター                              評価はまちまちイメージ 5 イメージ 6
 モデル兼デザイナーのミリアムと知り合う         思いを寄せるミリアムにをそっけなくするイメージ 7 イメージ 8
 ミリアムは別の男と婚約する                  酔いつぶれたロートレックイメージ 9 イメージ 10
 階段から落ちるロートレック                 実家へ戻ったが重篤イメージ 11 イメージ 13
 ルーブル美術館から買い上げられた知らせ         赤い風車を思い出しながら永眠する
 
 
GALLERY  2
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                                                                                    実像
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

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閉じる コメント(16)

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画家を題材にした映画は「炎の画家ゴッホ」「モンパルナスの灯」「宮廷画家ゴヤ」「真珠の耳飾りの少女」など結構ありますね。
見たくなりました。

2013/2/9(土) 午後 8:13 [ すりりん ] 返信する

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すりりんさん、コメントありがとうございます。
「モンパルナスの灯」は、モディリアニの映画でしたね。「炎の人ゴッホ」も2度くらい見ています。いずれも悲劇的で、亡くなってから評価されていました。

2013/2/9(土) 午後 8:19 ギャラさん 返信する

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この映画は知りませんでしたが、ヒューストン監督なら観てみたい。
彼はオーソドックスで衒いのない監督なので、素直に楽しめそうですね。
「白鯨」は感動しました。
ロートレックもモディリアーニも、他人の評価に媚びずに自分の感受性を貫いた生き方が立派だなあと思います。
生きているうちに得をしたいと思っているわたしみたいな凡人には到底まねできまへん。。。

2013/2/9(土) 午後 9:39 [ poposan ] 返信する

こんにちは!

ムーランルージュはニコールキッドマンのミュージカル映画の方思いつきました。

以前にも映画化されていたのですね!

う〜ん、彼にとって完璧な女性より、下劣というか、そちらの女性を選んだってのはやはり自分自身の立場の心境なんかもあるんでしょうね。

何となくそういう状態なら解らなくもないかな、と(笑)

女性の方が収入高いカップルは別れやすいって聞いた事あるし(笑)

2013/2/10(日) 午後 3:09 KATSU 返信する

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popoさん、コメントありがとうございます。
流行にとらわれず、自分独特の表現に拘ると、なかなか理解されにくいわけですね。
ゴッホは生前、1枚しか売れなかったとか・・・・
それよりは、よかったし、まあ生活に窮することもなかったようです。
酒がふんだんに飲めたことが、寿命を縮めてしまいました。
天才とはそういうものなのでしょうか。

2013/2/10(日) 午後 6:50 ギャラさん 返信する

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kATSUさん、コメントありがとうございます。
ミュージカルは見ていません。多分、この映画ほど深刻にはならなかったでしょうね。これは、痛々しい映画でした。(汗)
まあ、愛のミスマッチが出てきましたが、男女間の愛憎は、常識では考えられない面も多々あります。
奥さんが高収入でも、旦那に嫉妬心がなければ、うまく行くでしょうし・・、もし別れやすいのでしたら、男は一般的にみて扶養義務感が強いのかもしれませんね。(笑)

2013/2/10(日) 午後 7:07 ギャラさん 返信する

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こんばんは。
これは何度も観ようと思いながら避けてきた映画ですね。なんとなく
陰気な感じがして躊躇しました。絵はすごくいいですね。
監督がジョン・ヒューストンでしたか。機会があればみますね。

2013/2/10(日) 午後 8:58 [ hisa24 ] 返信する

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hisaさん、コメントありがとうございます。
なんか痛々しいのですが、最後はやり遂げたという充実感も感じられます。こういう伝記ものは、残された作品や業績と表裏一体なので、作品に興味がないと、理解しづらいと思います。

2013/2/11(月) 午後 1:14 ギャラさん 返信する

ムーランルージュ!!私もニコールキッドマンのミュージカルの方しか観たことないのですが、あちらはリメイクだったんですね。
ニコールの方は観たくて観たくて、公開初日に一人で観に行きました♪ラストが違うみたいですね。ニコールも綺麗だったけど、この女優さんの歌う姿もきっと素敵でしょうね(^^)

2013/2/11(月) 午後 3:21 はらみ 返信する

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はらみさん、コメントありがとうございます。
ミュージカルの方は見ていないので、よく分かりませんが、多分歌手と作家が主役でロートレックは脇役ではないのでしょうか。
出ている女優さんは、ニコール・キッドマン同様みなさん綺麗で惚れ惚れしました。^^

2013/2/11(月) 午後 5:46 ギャラさん 返信する

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こんばんは。
私はかなり以前にこの映画を見ました。
ロートレック役のホセ・ファーラー氏が映画「アラビアのロレンス」でのあのイヤったらしいトルコ将校の俳優だったので、どんな良い役かに興味があったのです^^
本当は優しくて誠実なのに傷つくのが怖くてだから女性に対して悪ぶってしまう、反って身近な友人たちがそんな彼の強がりを見抜いてそれとなく力になってあげていました。

歌謡曲「カスバの女」の歌詞にある
♪赤い風車の 踊り子の・・
はこの映画のキャバレー「赤い風車」のことだと思っています。

2013/2/11(月) 午後 10:52 ムーミン 返信する

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ムーミンさん、コメントありがとうございます。
凄いですね。私は「アラビアのロレンス」のトルコ将校のことは、もう覚えていませんでした。たしかにロートレックの傷付いた心情は、なんとなくわかりますね。
「ここは地の果てアルジェリア・・」はフランスの植民地だったんですね。「赤い風車」がここでも夢に出る憧れの場所だったのですか。なるほど。
カンカン踊りの「股裂き」も凄かったです。日本のお相撲さんにとって必須の要件のようです。

2013/2/12(火) 午前 8:08 ギャラさん 返信する

こんばんは。
ロートレックの絵も好きですし、世紀末の退廃的な雰囲気も好きなので、とても観てみたいですね〜
女性の愛に恵まれなくても、36年という短い生涯を絵を描くことに生きた彼の人生には興味があります♪

2013/2/12(火) 午後 6:23 [ tammy ] 返信する

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tammyさん、コメントありがとうございます。
ロートレックは「現実の作家は、作品よりも劣る」なんて、自分を卑下していましたが、彼なりに努力して、誰も真似の出来ない独特の絵を描いています。人として思いやりもあるし、芸術家としては、立派な生涯だったと思います。
もちろん、フィクション部分が多いでしょうが、彼の絵を理解する一助になると思います。

2013/2/12(火) 午後 6:45 ギャラさん 返信する

この作品はロートレックが主役なんですね。観てみたくなりました。ムーランルージュといえば、私の中ではやはりロートレックのポスターです。

2014/7/29(火) 午後 5:38 ぼやっと 返信する

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boyattoさん、コメントありがとうございます。
最近のパリもの映画では「ミッドナイトインバリ」が面白かったですね。
これも記事にしています。

2014/7/29(火) 午後 10:14 ギャラさん 返信する

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