妄想劇場♡

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久しぶりに創作意欲に火がついたと思ったら、なぜにヨハミハ?!

・・・自分でもよくわからないのですが、なんか22話であの二人があまりに不憫で・・・(涙)

よし!なんか書こう!!!と思ったときはロクティエ書く気マンマンだったのにな〜〜

いや、ロクティエも書きたいんだけどね。


とりあえず、哀悼の意をこめて―――


哀悼の意をこめてフォモ話書くなって気もするんですがね!!!!!

死してなお辱められてるんじゃ・・・(汗)




フォモOK・トリニティ嫌いじゃないよ♪という心の広い方のみお進みくださいませ〜★












荒涼とした大地が見渡す限り広がる砂漠地帯。

そこに明らかに異質な影が3つ・・・

ガンダムだ。

嫌味なほど美しい月明かりに照らされる機体は、沈黙していれば戦闘のための兵器とは思えない神々しさを持つ。

世界に変革をもたらす・・・その行為はまさに神の所業なのかもしれない。


トリニティ―――

三つの姿に分かれた神―――





   『trinity』





スローネ・アインのメンテナンスを終えたヨハンは沈黙する3機のガンダムを見上げてふぅっとひとつため息を吐いた。

アフリカの基地を国連の新型部隊に強襲され帰る場所を失くした上、未だラグナとの連絡もつかない。

「・・・・・・」

今のこの状況から導き出される想定はどれもこれも最悪を指し示していた。

だが一度それを口に出してしまったら本当にそうなってしまうような気がしてヨハンはきつく口を噤んだ。



「よぉ〜〜!!兄貴!!メンテ、終わったのか?」

パチパチと火の爆ぜている焚き火の火を枝で突きながらミハエルが手を振っている。

ミハエルの膝の上にはネーナがちょこんと頭を乗せて丸まって眠っていた。

安らかな寝顔だ。

一人でいろいろ考えて強張っていた表情から、ふっと力が抜けるのを感じた。

そして改めて思う。

せめてこの二人は守りたいと・・・

ミハエルの隣に腰を下ろし、すーすーと寝息を立てているネーナの少しくせのある髪を撫でる。

「あーーっ!!兄貴、ネーナが起きちまうだろ?!やっとさっき眠ったところなんだからな!」

焚き火を突いていた枝を放り投げてミハエルがヨハンの腕を掴む。

「ふふっ。相変わらず猫可愛がりだな。」

「そりゃあ、可愛い可愛い妹だからな。って、兄貴も一緒だろ?」

寝ているネーナに気を使ってか、いつもより小声で話す弟にふと笑みが漏れる。

「まぁな。・・・でも、ちょっと妬けるな・・・」

自分の腕を掴んでいたミハエルの手を逆の手で覆い、指を絡ませて腕から離す。

はぁ?という顔をしていたミハエルだったが、ヨハンに指を絡めとられた頃にはさすがにその真意に気付いたらしい。

気恥ずかしいのか、いつもの横柄とも言える物言いはすっかり影を潜め、しどろもどろに言葉を探す。

「いや・・・えーっと。・・・ネーナと、兄貴は・・・その、違うだろ・・・?」

「どう違う?」

自分でも意地が悪いと思いながらも、膝にネーナの頭を乗せているためあまり身動きの取れないミハエルの顔を覗き込む。
そして空いている方の手をミハエルの頬にそっと滑らせる。
手のひらで頬を包み、親指で左目の下のほくろに触れると、ミハエルは僅かに身じろいだ。

このほくろをミハエルの性感帯にしたのは他でもない、自分だ―――

身の内に生じた仄暗い独占欲の赴くままに、ほくろを舐め上げた。

ぞくりと身体を震わせたミハエルは生じた快感を堪えるようにぎゅっと瞳を閉じる。

「・・・俺にとってはお前も可愛い可愛い弟だ。確かに、ネーナとは違う意味でだがな。」

執拗に舌を這わせていたほくろに軽く口付け、身体を離した。

突然の戯れのような愛撫から解放されたミハエルは一度戦慄くような息を吐いた後、ヨハンを睨みつけてきた。

「・・・そうだよ。こんなこと、ネーナとはしねぇだろ?兄貴に対する好きはそういう好きなんだよ、わかってるくせに・・・」

かすかに潤んだ瞳で上目遣いに睨みつけられても誘われているようにしか思えないのだが。
くすりと笑って「すまなかった」と口先だけの謝罪をすれば、瞬間、ミハエルがむっとした表情をする。
「心にも思ってねぇこと言うんじゃねぇよ!!」と非難の言葉を紡がれる前にその唇を唇で塞いでしまう・・・

始めこそ抵抗してきたが、膝にネーナを乗せているため動くこともできないミハエルはすぐに諦め、口腔の中にヨハンの舌を招き入れ、自らの熱い舌を絡ませてくる。
快楽に弱いミハエルを黙らせることなんてたやすいものだ。

「・・・だから兄貴はずりぃんだよ・・・」

何も言う気が起こらなくなるくらい激しい口付けを交わせば、ミハエルはくたりとその身を預けてくる。
肩口に額を押し当て、乱れた息を整えようと荒く呼吸を繰り返す。

顔や首筋が赤く染まって見えるのは焚き火の炎のせいだけではないだろう。
肩口に預けられた頭を撫でて、耳の後ろに指を滑らせれると、ミハエルはキッと顔を上げた。

「これ以上触んな、兄貴!!!俺は・・・俺はアオカンなんてイヤだかんなーーーっっ!!!!!」

・・・

・・・・・・

「くっ・・・くくくくくっっ!!!!!」

数秒の間の後、堪えきれずヨハンは笑い出す。

「な、何がおかしいんだよ!?こんな砂だらけのとこなんて真っ平ゴメンだっつーの!!!!」

ミハエルは真剣そのものだ。
それがまたおかしいのだが、本人は気付くわけもない。


そんなミハエルの声にネーナがむにゃむにゃと目を覚ました。

「う〜〜〜〜〜〜〜ん・・・ミハ兄、うるさい〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜」

「ほら!!!兄貴のせいでネーナ起きちまったじゃねぇかよぉぉ!!!!」

「・・・俺のせいなのか?」

「当たり前だ!!!!!おい、兄貴!膝枕交代!!!」

「えっ・・・?はぁ???」

ミハエルは有無を言わせず、ネーナの頭をヨハンの膝に移動させると、自分は反対側の膝を枕にごろんと横になる。

「よし!!!これでOK!!!!!」

ネーナの覚醒は一瞬だったようで、今度はヨハンの膝の上ですーすーと寝息を立てている。

それを確認すると、ミハエルは膝に仰向けに寝たまま、ヨハンの顔に手を伸ばしてきた。

「なぁ、兄貴・・・落ち着いたらさ、すんげぇセックスしようぜ。ぐちゃぐちゃんなって、意識飛ぶくれぇすんげぇの!!」

ニヤリと挑発的な笑みを浮かべ、ヨハンの頭を引き寄せる。

「こんなとこじゃなくてさ・・・俺らも協力すっから。だから・・・」

至近距離で見つめた瞳はついさっきの挑発的な笑みは跡形もなく消え去り、いつになく真摯なものになっていた。

「・・・お前にまで心配されるようじゃ、俺もまだまだだな。」

自嘲的に笑ってミハエルの額に自分の額を重ねる。
近すぎて見えないが、きっとミハエルも笑っているだろう。

「それはそうと・・・さっきの言葉、忘れるなよ。泣いてやめろって言ってもやめてやらないからな。・・・覚悟しとけ。」

「望むところだ!」

今度はお互い目を見合わせて笑いあう。
すぐ横にいるネーナを起さないように声を潜めて。

「・・・じゃあ、お前ももう寝ろ。明日もどうなるかわからないからな・・・」

「あぁ・・・おやすみ、兄貴・・・」

「・・・おやすみ。」

そっと触れるだけのキスをしてミハエルも眠りに落ちていった。





弟と妹の穏やかな寝顔をしばし見つめた後、ヨハンは空を仰いだ。

雲ひとつない澄んだ空気に冴えた月、無数の星々。

この世に神なんて存在しない。

そんなことはわかっているのに、いるのではないかと信じたくなってしまうようなこの美しい夜空に―――


『願わくば、このまま3人で・・・』


そう祈らずにはいられなかった。


                                          ―END―



なんか・・・改めて見たらめちゃくちゃだね、三人称なんだか一人称なんだかもよくわからん(爆)
勢いだけで書くとこうなるのね・・・
いつもそんなもんだけどさ・・・


ここまで山もオチも意味もない話を読んでくださったみなさん、ありがとうございました〜★

続きだよ〜ん。

フォモ注意。って、遅いか・・・(汗)










「これで満足か?」

余韻が消えた瞬間、月森が照れ隠しのように言い放った。

「・・・あぁ。大満足。ほんと、コレで数年振りだなんて反則だぜ?ピアノ続けてたらかなりのピアニストになってたんじゃないか?」
「そんな有り得ない話をしても意味はない。」
「あのなぁ・・・それを言っちゃおしまいだろ?でも、マジいいもん見せてもらったな。よし!!じゃあ、そろそろ暗くなってきたし帰るとするか?」

かばんを取り入り口へ向かおうとしたが、それはできなかった・・・
引き止められる力を感じて振り向けば、月森が俺の制服の裾を掴んでいたのだ。

「・・・ちょっと待て、土浦・・・おまえは約束の時間に遅れてきた上、俺にだけ無理矢理ピアノを弾かせて帰るというのか?それはいい度胸だな・・・」

「えっ・・・?!」


「おまえも俺のために1曲弾け。今日は散々練習したのだから、さぞ素晴らしい演奏を聞かせてくれるんだろう?」


月森がニヤリと不敵に微笑う。

やっぱり根に持ってたのか・・・
うまく誤魔化せたと思ったのに、やっぱりコイツは一筋縄ではいかないらしい。
これ以上月森の機嫌を損ねるわけにもいかないしな・・・
一度持ったかばんを投げ出し、今さっきまで月森が座っていたイスに座る。

「何かリクエストはあるか?」

窓辺に背を預けて腕組みしながらこちらを見ている月森に視線を向けた。

「・・・別に。おまえの好きな曲でいい。」
「好きな曲ねぇ・・・」

窓の外はすでに薄闇が降りてきていた。
闇を背に佇む月森を見ていたら、ふと思い浮かんだ・・・


夜想曲。

―――ショパンのノクターン第20番。



姿勢を正してイスに座りなおし、鍵盤に指を置いた。

静かにピアノの音が響き始める―――


哀愁を帯びた美しい旋律がなんとなく月森っぽいと思ったんだ。
夜の気配を纏うととたんに艶めいてくるアイツに・・・

そんなことを思いながら弾いていたせいか、いつになくいい音が出てた気がする。
深く、切なく、艶っぽい・・・


弾き終わると、いつの間にかすぐ横に月森が立っていた。
月森が移動していることにすら気付かないほど集中していたらしい。

「こんなのでよろしかったですか?」

横の月森の顔を見上げ、軽い調子でお伺いを立ててみる。
が、月森は何も言わず鍵盤に置かれたままの俺の手を凝視していた。

そして次の瞬間―――

月森の手が伸びてきたかと思うとそのしなやかな指が俺の右手の上を滑っていた。
指の先まで達すると今度は指の間を伝って手の甲に戻ってくる。
そんなことを何度となく繰り返す。
月森のひんやりとした指先が俺の手の上を這い回るたび、俺の中にじわりと熱が生まれていくのを感じる。
手だけを丹念に愛撫されている、そんなもどかしいような快感。

「・・・おい、月森・・・?!」

たまりかねて声を上げる。
するとゆるゆると動いていた月森の指が、指と指の隙間から俺の手に絡みつき握り締められた。


「・・・俺は・・・おまえの手が・・・指が好きだ・・・」


月森はそれだけポツリと言うと、握り締めた俺の右手を自分の方に引き寄せ、掌にキスをした。
最初掌の真ん中に落とされた唇は、どんどん指先に向かって進んでいく。
中指の先端まで来ると、上唇を滑らせるようにしてまた指の根元に戻る。
そのたびかかる月森の熱い吐息が俺をより欲情させる。
さらにねっとりとしたものが触れたと思ったら、舌が指を舐め上げていた。
そして、先端を口に含む。
月森の口内の熱さに眩暈がした。

「・・・どうしたんだ?こんなに俺のこと煽って・・・」

指をしゃぶっていた月森が音を立てながら口を離した。

「・・・最初に、煽ったのはおまえだろう・・・」
「えっ・・・?俺??なんか、した・・・か?」

今日はまだ何もした覚えはないんだけど・・・
不可解な顔をしていると、月森は俺から視線を逸らし既に上気している頬をさらに赤くして言った。


「おまえの・・・ピアノ弾いてる手がエロいんだよ!!!」


月森の思いがけない言葉に思わず笑みが浮かぶ。
俺は立ち上がって月森を抱きしめた。

「・・・何?ピアノ弾いてるの見て、俺の手が自分の身体撫で回してるのとか想像しちゃった?」
「・・・・・・」
「当たり・・・?」

肩に顔を埋めていた月森が至近距離でキッと俺を睨みつけた。

「ああ、そうだよ!だから・・・おまえは責任を取れ!!」

ほんとおまえ、ヤバいくらい可愛いよ。

「言われなくても・・・あんだけ煽られたらもう我慢できねぇよ・・・」
「・・・じゃあ、早くしろ・・・」
「了ー解。」


手早く制服のネクタイを緩めボタンをひとつはずしてから、潤んだ瞳で俺を睨みつけている月森のスカーフに手をかけた・・・
                                                                                   

                                         〜おわり〜





えっと、わたし全くピアノの知識ないんですよ・・・(なら書くな!)
なのでテキトーです。

なにかしらおかしなことはファンタジーだと思ってください・・・


「エリーゼのために」は小学生が弾いてそうな曲ということで。
「ノクターン第20番」はショパンでわたしが好きな曲ってだけ。

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おめでとうございま〜す♪

いつもお世話になりっぱなしでございます・・・
銀次さんのステキブログ『銀次の居待の月』が10000HITということで、僭越ながら貢物などさせていただこうかと☆(笑)

本当は昨日上げようと思ったんだけど・・・ランダムに当たっていたらしく・・・うっかり迷い込んだ憐れな一般人にこんなものを晒すわけにはいかないと・・・思ってやめました!!

コルダブーム中ということで、土浦×月森でリクエストいただいたのですが・・・
過剰にラヴくなったような気がしないでもない・・・
書いてるわたしは非常に楽しゅうございましたが♡

そんな自己満全開のブツですが、お楽しみいただければ幸いです♪


・・・ってなんだか珍しく長いようなので前後編になります。申し訳ない・・・












第一印象は最悪だった―――

尊大でお高く留まった音楽科のエリート様。
恐ろしく整った容貌は綺麗というより、冷たいとしか感じなかった。

例え天地がひっくり返ろうとも、こんなヤツと相容れることはないだろうと思った・・・




それが・・・いつの間にこんなことになっちまったのか。





  『 ピアノ・レッスン 』






一通り練習を終え、練習室を後にした時には辺りはすでに夕闇に染まり始めていた。

「やっべ。遅くなっちまったな・・・」

思わず言葉が漏れる。
それくらい焦っていた。
アイツとした約束の時間は1時間前・・・
今日は調子がよかったからつい時間を忘れて弾き続けちまった。
まさか先に帰ってるってことはねぇよなぁ・・・と思いつつアイツのいる練習室を目指す。
防音設備とはいえ、廊下には微かに音が漏れ聞こえてくる。
どうせ暇を持て余してヴァイオリン弾いているだろうと踏んだが、その部屋から聞こえてきたのはピアノの音だった。

・・・俺、部屋間違えたか?
いや、確かにこの部屋だったはずだ。
それとも、怒ってもう帰っちゃって別のヤツが練習してるのか??

いろいろ考えながら音の聞こえてくる部屋を覗き込むと、そこにはピアノを弾いている月森の姿があった。



「おまえ!ピアノ弾けるのかよ!?」

びっくりしたなんてもんじゃない。
練習室に入るなりそんな言葉が口をついて出た。

「なっ・・・つち、うら・・・?!」

突然の侵入者に驚いた月森は目を丸くして俺の方を見つめていた。

「なんだよ、ピアノ弾けるなら弾けるって言っとけよ!驚くじゃねーか!!」

しゃべりながら月森に近づいていく。

「やっぱ、小さい頃母親に教えてもらったのか?」
「・・・・・・・・・」
「そうかぁ〜、そうだよなぁ〜、なんたってあの浜井美沙だもんなぁ〜。俺も教えて・・・」


―――バァーーン!!!!!


一方的に話し続ける俺の言葉を遮ったのは盛大な不協和音だった・・・
鍵盤に手を叩きつけたまま、月森はその怜悧な瞳で上目遣いに俺を睨みつけていた。

「おい、土浦・・・勝手に盛り上がっているのはいいが、その前におまえは俺に何か言わなければいけないことがあるんじゃないのか?」

激しく鳴ったピアノの音とは正反対に極力押さえられた月森の声音。
それがまた一層ヤツの不機嫌さを際立たせていた。

・・・そうだった。
月森のピアノなんて珍しいものに舞い上がってすっかり忘れていた・・・

「ワリィ、遅れちまって!!つい夢中になっちまってさ。ゴメン!!!」

手を合わせて大げさに謝ってみる。
こういうときはひたすら謝るに限る。
実際「迎えにくる」と言った時間に1時間以上も遅れたのは俺なのだから・・・

頭を下げたままチラリと月森を盗み見ると、睨みつけていた表情もいくらか和らいでいた。
それでも怒った手前照れ臭いのか、月森は俺に背を向けポツリと呟いた。

「・・・最初からそうやって素直に謝ればいいんだ・・・ただし、次は遅れるな。」


・・・次。

今朝ばったりと会った月森に俺が一緒に帰ろうと言ったとき、コイツはあからさまに嫌そうな顔をした。
まぁ、俺達は一緒にいるだけで何かと注目を浴びる。
しかも、最高潮仲が悪いと思われている。
それが一緒に帰るだなんて不要なネタを提供するだけだと、月森が突っぱねたのをなんとかなだめすかして、遅い時間なら・・・とやっとのことで約束を取り付けたのだ。
その月森が『次は・・・』と言った。
つまりこれからも一緒に帰っていいということだ。
相変わらず素直じゃないけど、そんなところがたまらなく可愛いと思っちまうあたり俺も重症なんだろう。

俺は無防備に背中を向ける月森を後ろから抱きしめた。

「あぁ・・・今度はぜってぇ遅れねぇよ。」

座っている月森の肩口に頭を乗せるような形になったので耳元で囁いてみる。

「なっ、何だ!?土浦!!放せっ!!!」

ジタバタしてみても月森が俺の腕力に敵うわけがない。

「だ〜め!隙を見せたおまえが悪い。てかさ・・・月森補給させてくれよ。月森不足で倒れそうなんですけど、俺。」

「・・・バカが。」

そんな悪態を吐きながらも月森は俺の腕の中で暴れるのをやめた。
月森の顔が赤く染まっているのは窓から差し込む夕日のせいばかりではないことに俺は気付いていた。
そしてしばらく黙って月森の体温や匂いを感じていた。

「ところでさ、ピアノなんだけど・・・」

思い出したように問いかけると、ふぅ。とひとつ息を吐いて、月森はポツリポツリと語り始めた。

「・・・ピアノは小さい時、母に教えてもらった。ヴァイオリンを習い始めたのと同じ頃からだ。でも、俺はピアノよりもヴァイオリンの方がしっくりきたからピアノはやめた。・・・母は残念がっていたがな。だから、弾けると言っても子供のお遊び程度だ。実際、ピアノを弾いたのなんて数年振りだったしな。」
「ふーん、そっか。でもなんで数年振りにピアノ弾いてみようなんて思ったわけ?」

瞬間、月森の身体がビクリとした。

「・・・別に。理由なんてない・・・」

嘘だ。
ほんとにコイツはわかりやすい。
月森がバレバレな嘘を吐くのは大抵恥ずかしくてしょうがないときだ。
ピアノを弾こう思った理由が恥ずかしくて俺に言えないって・・・
つまり、理由は俺ってことだろ?
それくらい自惚れていたいんだけど。

「・・・もしかして、俺のこと考えててくれた?」

月森の呼吸が一瞬止まる。

「バッ、バカ!!!そんなわけないだろ!!!」

―――ビンゴだ。

「そ、そんなことより、いい加減放せ!!!いつまでこうしているつもりだ?もう十分だろう?!」

再び暴れ始めた月森は今度は本気で抵抗してくる。
これはこのままいくとマジで怒りはじめそうな気配だ。

「そうだな・・・じゃあ、放すから1曲弾いてくれよ、ピアノ。さっきはチラっとしか聴けなかったし。」
「なんなんだ?!その条件は!!なんで俺がおまえのために・・・」
「それなら、理由教えてくれるか?」
「・・・・・・」

普段の月森じゃこうは上手くいかないだろうが、テンパってるときのコイツはこんな手にもあっさり引っ掛かってくれる。

「よし!交渉成立だな。」
「・・・大した曲は弾けないぞ。」
「いいって、いいって。俺はおまえがピアノ弾いてる姿が見たいんだから。」

腕を放すと月森は諦めたように大きく息を吐いて、その細いしなやかな指を鍵盤に乗せた。


・・・エリーゼのために、か。


月森の僅かに伏せられた瞼の下の真剣な眼差しと、軽やかに動く指を俺はじっと見つめていた。

基礎がしっかりしていることがよくわかる正確な演奏。
多少音が硬いけれど・・・数年振りでこれだけ弾けることが驚きだ。
改めて月森の音楽の才能ってやつを感じる。


最後の余韻が消えるまで、静かに耳を傾けていた―――



                                        〜つづく〜

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☆クリスマス弁ヒノ☆

♪きぃ〜っと きみは こ〜ない  ひとりきりの くりすます・い〜ぶ
   おおお さ〜え〜なぁぁ〜〜いい  をぉぉおお  こ〜り〜なぁぁ〜〜いい♪ (大熱唱)

こんばんわ。ロンリードライバーがちゃぴんです☆
なぜわたしはクリスマスにフォモ話をしたためているのでしょう・・・?(苦笑)

それは某むっくにクリスマス弁ヒノ書け!と指令を受けたから・・・
散々むっくには絵描いてもらってるんでね・・・書かないわけには参りません。
現在九郎たんVSヒノたんの弁サマ争奪戦中だっていうのに、弁ヒノを書く弁九派(笑)

しかも、ラブラブでっっ!!!とのことなので全力でラブくしてみました。
そしたらキャラが崩壊しました・・・
という訳ですのでご了承くださいませ。








「ヒノエ・・・この後、二人で出かけませんか?」

パーティーの喧騒の中、すれ違い様に弁慶はそれだけヒノエの耳元に囁いていった。
返事をする間すら与えない一方的な勧誘。
しかしそれはもう決定事項としてヒノエの脳裏に刻まれていた・・・



「・・・で、なんで江ノ島なんだよ?」

江ノ島へ向かう橋の上でヒノエは隣を歩く弁慶に問いかけた。

「テレビでこのクリスマスの期間だけ島に灯りが燈ると言っていたので、行ってみたいなと思ったんですよ。」
「・・・でもこういうのって、普通は望美を誘うもんじゃないのか?」

弁慶とヒノエの関係は秘められていた。
ただでさえ男同士、その上叔父と甥という血縁関係にある二人がそんな関係にあるということはおおっぴらに言えるものではない。
だからいつもはヒノエも弁慶も望美を気にかけているように振舞っていた。
そんなことをしても望美が決して自分達に振り向くことはないということを二人とも悟っていたからこそできた姑息な手段なのだが。
でもそれは有効な手だったようで、二人の関係は誰にもばれることなく今に至っている。
それなのにクリスマスというこちらの世界では恋人同士のイベントとして名高い日に二人だけで出かけるなんて危険なことをあっさりと弁慶はやってのけたのだ。

「君が何を基準に『普通』と言っているかはわかりませんが、望美さんはパーティーの後教会へ行かれたようですし・・・僕の基準ではこういった催し事は一番好きな相手と一緒に行くものだと思っているんですけど・・・ヒノエは違うんですか?」
「そっ、それは・・・」

ヒノエはいつもの弁慶らしからぬストレートな物言いに面食らった。
本当は「こんな迂闊なことしてばれたらどうするんだ?!」とか「今まで隠してきた努力はなんだったんだ?!」とか言いたいことはたくさんあったような気がするのだが、そんなことは全部吹っ飛んでしまうくらい弁慶の発言は衝撃的だった。
言い澱んでいるヒノエの顔を弁慶が心配そうに覗き込む。

「それとも、迷惑でしたか?」
「そんなこと・・・あるわけないだろ・・・!!」

本当は嬉しくてどうにかなりそうだった。
ヒノエはいつも不安だったのだ。
こんなに弁慶のことを好きなのは自分だけなのではないかと。
だから精一杯、弁慶に対する想いを押さえて日々を装っていたのだ。
それが、弁慶の口からそんな言葉が聞けるなど夢にも思っていなかった・・・

「ほら!早く行かねぇと灯り消えちまうぞ!!」

照れ隠しのように言ってヒノエは楽しそうに自分を見つめている男を置いて先を急いだ。



島の天辺にある灯台の形を模した展望台はまるで本物の灯台のように光を放っている。
その周辺の遊歩道にもクリスマスのイルミネーションが施され、淡い光が島全体を包み込んでいた。

「・・・綺麗ですね。」
「あぁ・・・」

いつもはくだらない事をああでもないこうでもないと言い合っているというのに、こんな時に限って言葉が続かない。
時折吹く海風にヒノエは小さく身を竦めた。

「寒いですか?」
「・・・ちょっと。」
「そんな薄着で来るからですよ。」
「・・・いいんだよ!俺は弁慶と違って若いから平気なの!!」

むくれて悪態を吐くヒノエを見て弁慶は柔らかく微笑む。

「ふふふ。やっといつものヒノエらしくなりましたね。」
「・・・」
「でも本当に冷えてますよ。ほら、こんなに手が冷たくなってる・・・」

弁慶は言いながらヒノエの手を取り、愛撫するように優しく触れる。
寒さではない震えがヒノエの背筋を伝う。

「僕の手袋を片方貸してあげますから。」
「・・・って、片方なのかよ?」
「片方で十分ですよ。空いた方の手は・・・ほら。」

弁慶はそう言うと、自分の手袋をしていない左手でヒノエの手袋をしていない右手を握り、自分のコートのポケットに入れた。

「こうすれば温かいでしょう?」

温かいどころではない。
ヒノエの右手は火が点いたかのように熱くなっていく気がしていた。

「・・・あぁ。」

小さな声で呟いたのを聞くと弁慶はヒノエの手をさらにぎゅっと握り締めた。
ヒノエもそれに答えるかのように指に力を籠めた。


―――ドーーン。パラパラパラ・・・・


大きな音と共に空に光が散った。

「・・・花火?」
「みたいですね。7時からだったようですが、まだ残っていたんですね。・・・見たいですか?」

子供っぽいと思われるかと思いつつも、ヒノエは正直にコクンと頷いた。

「じゃあ、橋の方へ行きましょうか?そちらで上げているようだから。」

山を下り青銅の鳥居を潜れば、直に吹き付ける潮の香りの混じった夜風に晒される。
橋の下の砂浜で花火は打ち上げられていた。
特に何を話すというわけでもなく二人はポケットの中で手を繋いだまま砂浜まで降りてきた。

「・・・なんか、懐かしいな。」

堤防に寄りかかりながら花火を眺めていたヒノエがぽつりと言った。

「・・・夏の勝浦の海岸のことですか?」
「あぁ。景時が花火もどきの発明したんだよな。こんなすげぇのじゃなかったけど・・・楽しかったな。」
「・・・・・・」
「・・・ん?なんだよ、弁慶?黙るなよ・・・」

ずっと話し続けていたわけではないが、会話の途中で黙り込まれればさすがに気になる。
ヒノエは同じように花火を眺めているのだとばかり思っていた隣を見ると、弁慶の真摯な瞳と視線がぶつかる。

「な・・・なんだよ、弁慶?俺、なんかおかしなこと言ったか?」

弁慶は寄りかかっていた堤防から身を起こすとヒノエと向かい合う形をとる。
ヒノエは堤防と弁慶に挟まれ、身動きの取れない状況でただただ弁慶の真意を測りかねていた。
離された手の熱を持て余しながら・・・

「・・・ヒノエ。早く元の世界に戻りたいですか?」
「・・・・・・」
「このところの君はなんとなく淋しそうだったから・・・」

言いながら弁慶はヒノエの赤い髪を弄ぶ。

「皆の前では楽しそうに振舞っているけれど、本当は熊野のことが心配で仕方ないのでしょう?」
「・・・そりゃ。心配に決まってるだろう。俺が、熊野別当なんだからよ。まぁ、一応源氏と平家の和議も成ったことだし、親父もいるんだから大丈夫だとは思うけど・・・こっちの世界もいろいろ興味深いしそれなりに楽しいけど・・・このまま帰れなかったらって思うと不安になることはある・・・やっぱり俺の居場所は熊野なんだなって。」
「・・・そうですか。やはり君は熊野が好きなんですね。」
「当たり前だろ。・・・で、アンタはどうなんだよ?」

弁慶はしばらく考え込んでいたようだが、にっこりと微笑んで口を開いた。

「そうですね・・・強いて言うなら、僕は熊野を好きな君が好きですよ、ヒノエ。」
「・・・はぁぁああ??なんで突然そうなるんだよ?!」

思わずヒノエは素っ頓狂な声を上げた。
質問と答えがまるで繋がらない。
足りない答えを補うように、弁慶は言葉を続けた。

「僕は正直に言えば元の世界に戻っても戻れなくてもどちらでもいいんです。・・・でも、君が帰りたいというのなら・・・」

ヒノエの髪を弄んでいた指を滑らせ、弁慶の手が頬に添えられた。

「僕が絶対に帰してあげますよ。」

弁慶が時折見せる厳しい真剣な眼差し・・・それを見てとったヒノエは何も言わず、弁慶の首に腕を回して引き寄せた。

「・・・どうしたんですか?今日は随分甘えてくれるんですね。」
「それはこっちの台詞だ・・・なんで今日はこんなに俺のこと甘やかすんだよ?・・・これ以上俺のこと嵌めてどうするつもりだ・・・?」
「・・・嵌めるだなんて人聞きの悪い。ただ、せっかくこの異世界にいるのだからこちらの風習に倣ってみるのも悪くないと思っただけです。クリスマスというのは、自分にとって一番愛しい人を誰よりも大切にする日のようですから。」

引き寄せられ、ヒノエの首元に顔を埋める形になっていた弁慶は言いながら、ヒノエの耳の裏に口付けを落としていた。

「それに・・・この後僕が君をどうするかなんて、言わなくてもわかっているでしょう?ねぇ、ヒノエ・・・」

弁慶は僅かばかり首を回して、上目遣いにヒノエの瞳を捕らえる。
肌を重ねるときだけ見られる熱を孕んだ妖しいほど綺麗な瞳・・・
その瞳で見つめられただけでヒノエの身体は毒に侵されたかのように甘く痺れる。
首筋や鎖骨を伝う唇の感触を感じながら、掠れた声で訴える。

「べんけぇ・・・口も・・・」

その言葉を聞くと弁慶は身を起こし、ヒノエを自分の方へ抱き寄せた。
潤んだ瞳で自分を見つめてくるヒノエに満足気に微笑み、薄く開かれた唇を指でなぞった。

「えぇ。君の仰せのままに・・・」

ゆっくりと瞼が伏せられるのを見届けてから、弁慶は唇を寄せていった。

                                                   
                                    〜おわり〜


こんなんでよろしかったでしょうか???
とりあえずわたくしからのクリスマスプレゼントでございます♡

イメージ 1

≪追記≫

挿絵描いてくれやぁぁぁ!!!!
とむっくにおねだりしたら描いてくれた♡♡♡
ので、攫って参りました!!!

わたしの小話が一気に昇華した気がしますよ☆(←本編に変化はありません)




えっとぉ〜、総受け大将・九郎さんのお誕生日祝いをば・・・

って、1ヵ月前の話だからそれぇぇぇぇ!!!!!
ここまで遅れると、いっそ小気味いいな、オイ!!!!!

という激しい一人ツッコミは置いておいて、やっと書けました・・・(瀕死)

ななさんの九郎祭りに間に合うようにと思ったものの挫折・・・せめて1ヵ月後にと思ったものの再び挫折・・・なんであと数時間頑張れなかったんだ!!!

このところずっと泰衡サマブームだったので、泰九でも書いてみようかと思ったら、ビミョウな話になってしましました。
スミマセン・・・

それでもいいよという心の広いフォモにご理解のある方だけお進みください。










平泉は北の都。
霜月ともなれば短い秋は終わりを告げ冬の気配が漂い始める―――


今日は、ここ平泉に身を寄せている源氏の御曹司・源九郎義経が生まれてからちょうど16年目の日にあたるらしい。
九郎を我が子のように、いや・・・我が子以上に可愛がっている御館がそんな機会を逃すわけもなく、伽羅御所では日の高いうちから盛大な宴が催されていた。

「奥州藤原氏の総領として宴のひとつくらい取り仕切れなければならん」

ともっともらしいことを言いながら御館は俺に宴の采配をを一任したが、それは単に御館が余計なことを考えず宴を楽しみたかったからだろう。
宴好き・酒好きの御館に似なかった俺としてはむしろ延々宴に参加しなくて済む方が気が楽だったが。
京の宴にも引けを取らぬようにと楽士だの白拍子だのを呼んだものの結局ただの酒宴に成り果てた宴は、最終的に御館と九郎が飲み比べを始め、御館が昏倒したところでお開きとなった。
我が父ながら、毎回そこまで飲まねばいいのにと思うのだが・・・
昏倒したといっても大いびきをかいて寝ているだけなので一応薬師を付けて寝所に運ばせ、俺は大広間の片付けの様子を確認に戻ってきた。

せわしなく働く下男下女に指示を出しふと庭の方を見ると、灯りも届かぬ渡殿に気配を感じた。
夜の闇に目が慣れればその気配は人だということがわかる。
それは渡殿の端に座り、ぶらぶらと足を投げ出していた。

ヤツか・・・

係わるのは御免だと判断し踵を返そうとしたのだが、時既に遅く闇夜の庭によく通る声が響いた。

「泰衡殿ではないかぁぁ〜〜!!」

・・・九郎め。
明らかに酔っ払いだ。
ああ見えて九郎は酒に強いのだが、昏倒した御館と両手で抱えるような大杯で飲み比べをしていたのだから今がどんな状況なのかは自ずとわかるというものだ。
なぜこんなときに限っていつも九郎にべったりとくっ付いている胡散臭い薬師だか法師がいないのか?
そういえば、うちの抱えの薬師と共に御館に付き添っていたな・・・
全く、肝心なときに役に立たん!と憤ってみてもどうにもならない。
足をばたつかせながらへろへろと手を振っている今宵の主賓をそのまま放置しておくこともできず、俺は仕方なく九郎のいる渡殿へと向かった。

近くまで来ると九郎は普段は決して俺に見せないような満面の笑みを向けてくる。
・・・どうも調子が狂う。
こいつは酔っ払いなのだから・・・と自分に言い聞かせながら九郎の横に立つ。

「貴様はこんなところで何をしているのだ?」
「・・・ん?夜風に当たっていたのだ。冷たくて気持ちいいぞ。そうだ!泰衡殿も一緒にどうだ?」

月明かりに照らされた九郎の顔は酒のため赤く上気していた。

「断る。」

ぴしゃりと言い放つと九郎は途端にしゅんとうなだれる。

「貴様は酔っていてよくわからんのかも知れないが、こんな寒さの中、何も羽織らずに外へ出るな。これで風邪でも引かれたら今宵の宴を仕切った俺の過失にな・・・」

「そうだっっ!!!」

うなだれて大人しく俺の言うことを聞いているのかと思った九郎が突然叫んだ。
・・・これだから酔っ払いは嫌いなんだ。
そんな俺の思惑などお構いなしに九郎は再び満面の笑みを浮かべ俺を見つめてきた。

「俺はまだちゃんと礼を言っていなかったな。今宵の宴は泰衡殿が皆手配してくれたと・・・こんなに盛大に祝ってもらったのは初めてだ!・・・心から感謝する。」

「・・・あぁ。」

酔っ払いと言えど、素直な感謝の言葉に悪い気はしない。

「だが、それとこれは話しが別だ。ここは冷える。いいかげん中に・・・」


―――バタン。


今度は突然九郎が仰向けに倒れた・・・

・・・これだから酔っ払いは・・・!!!
御館に続いてこいつまで運ばねばならないのかと思うと頭が痛くなってくる。

「おい!おい、九郎。大丈夫か?しっかりしろ!」

倒れた九郎の顔を覗き込み軽く肩を揺すると、九郎はとろんと瞳を開ける。

「・・・床が冷たくて、気持ちいぃ」

俺はがっくりと肩を落とした。
・・・もうこいつの面倒を見るのは嫌だ・・・
ため息を吐いている間に九郎は再び瞳を閉じている。
このまま寝るつもりなのか、こいつは!?
ペチペチと軽く頬を叩き、なんとか寝させないようにしていると、寝ているとばかり思っていた九郎に突然手を掴まれた。
眠りを妨げた手を振り払うのかと思いきや、九郎は掴んだ俺の手を払うことなく自分の頬に押し当てた。

「・・・泰衡殿の手は冷たくて気持ちいいな・・・」

俺は予想外の出来事に硬直した。
一方、九郎は俺が微動だにできないのをいいことに俺の手に頬ずりを繰り返している。

こいつは何をしている?何を考えている??
いや、待て!落ち着け!!
相手は酔っ払いなんだ・・・

なんとか気持ちを静め、何事もないかのように振舞ってみる。

「おい、源氏の御曹司ともあろう者がこんなところでだらしなく寝るな。寝たいのなら部屋を用意させるからとりあえず起きろ。」
「・・・イヤだ。」

・・・こいつ!!!

「いいかげんにし・・・」

「・・・こっちの手、も・・・」

無理にでも起こそうと伸ばした手を九郎に掴まれる。
そして掴まれた手は引き寄せられ、九郎の頬に無理矢理添えられた。
その動作に平衡を崩した俺は、九郎の顔を覗き込むような形で倒れこみ、肘でなんとか身体を支えた。

一体何なんだ、この状況は・・・?!

「やっぱり、泰衡殿の手は気持ちいいな・・・」

寝言のように呟いて九郎は満足気に瞳を閉じている。

・・・こんな至近距離で九郎の顔を見たのは初めてだった。
伏せられた瞼を縁取る長い睫毛、通った鼻筋、それに形のよい唇。
紅く濡れて薄っすらと開かれた唇は、女のそれのように艶かしい・・・


・・・・・・


―――キャン!!!キャンキャンキャン!!

遠くで聞こえた犬の鳴き声にふと我に返る。
・・・俺は今、何をしようとしていた・・・?!
慌てて九郎の手を振り払い、立ち上がる。

「・・・ん?く、がね・・・?!金かっ!!!」

九郎も金の声でやっと目が覚めたようで、上半身を起こした。
と、そこにもの凄い勢いで小さな茶色い塊が飛び込んでくる。
九郎は茶色い塊、金を受けとめるとそのまま愛おしそうにぎゅっと抱きしめた。

「ははっ!!金、おまえも俺を祝いに来てくれたのか?ありがとな。・・・でも、こんな時間に走り回ってると、また泰衡殿に怒られてしまうぞ。」

金と戯れながら、九郎は上目遣いで俺を見た。
・・・俺はそんなに口うるさいか?

「・・・今夜は特別だ。金と遊んでやったらいい。」

瞬間、九郎の顔がぱぁっと明るくなる。

「やったぞ、金!よし、じゃあ行くぞ!!」

渡殿からはらりと飛び降りると、金と一緒に庭を走り回っている。
まるで犬が2匹じゃれているみたいだ。
たまにはこういうのも悪くない・・・


「申し訳ありません、泰衡殿。九郎のお守りをさせてしまったようで・・・」

突然背後から声を掛けられ、一瞬ビクリとする。
振り向けば、黒い外套を纏い闇に溶けたかのような法師がいつもと変わらぬ微笑を浮かべて立っていた。

「・・・これはこれは、弁慶殿か。別に・・・俺は何もしていない。だが・・・あの酔っ払いは酷過ぎる。」
「ふふふ。今日の九郎はかなり飲んでましたからね・・・でも、許してあげてください。嬉しかったんですよ、九郎は。こうして皆に祝ってもらえたことが。・・・初めてだったんじゃないかな?」
「・・・そういえば、そんなことを言っていたな。」
「それに・・・」

言いかけて弁慶がふっと微笑んだ。

「・・・酔った九郎というのも、なかなか可愛いでしょう?」
「なっ?!」
「そう思いませんでしたか?泰衡殿。」

弁慶は俺の目を見ながら思わせぶりな問いを投げかける。

「・・・・・・」

・・・こいつ、いつから見ていた?

「さあな。生憎と俺は男を可愛いと思う趣味はない。」
「・・・そうですか。それならそれでいいですが・・・では、そろそろ僕らはお暇させていただきますよ。」
「これから高館へ戻るのか?部屋ならすぐに用意させるが・・・」
「いいえ、お構いなく。もう車の手配はしてありますし、あの酔っ払いを牛車に押し込めばいいだけですから。」

・・・何気に酷いことを言っていないか?この男・・・??

「九郎ー!!九郎!もう帰りますよ。」

弁慶の声に九郎が走り寄って来る。
走るたびに揺れる髪がしっぽのようで、本当に犬みたいだ。

「さあ、車を待たせてありますから行きますよ、九郎。」
「・・・もう、行かなくてはいけないのか?」

足元に纏わり付いてきた金を抱き上げ名残惜しそうにしながら弁慶を見る。
弁慶はそんな九郎にそっと近寄ると耳元で何かを囁いた。


「九郎・・・今夜は朝まで僕と一緒だと約束したでしょう?この時間まで待ったのだから、いいかげん僕だけの九郎になってもらいたいのだけれどな・・・」


俺にはよく聞こえなかったが、九郎はその言葉にカクカクと頷いて大人しく弁慶の後を付いてきた。
・・・あいつは何を言ったんだ?

「では、泰衡殿。失礼させていただきますね。ほら、九郎も。」
「あ・・・あぁ。泰衡殿、今日は本当に世話になった。ありがとう。じゃあ、金をよろしく頼む!」

九郎はそう言って金を俺に手渡して行った。

「あぁ。気をつけて帰れ。」

俺はその場で二人を見送った。
我が手に残された金の体温は温かく、俺は先程触れた九郎の頬の熱さを思い出した。

「・・・ふっ・・・可愛い、か・・・」

小さくなっていく九郎の後姿を眺めながら、自嘲的に笑った。
あのとき感じた感情は気の迷いなのだと自分に言い聞かせながら・・・

                                      ★おわり★


結局、弁サマなのね(爆)



とりあえず嫌がらせ的にななさんに送りつけてみる。

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