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道徳の本意

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尊徳先生は言う。

刃物を取ったりやったりするのに、刃のほうを自分のほうに向けて、柄のほうを先にして渡す。
これが道徳の本意であると。
そのこころは、万一過ちがあっても自分の身にキズがあっても相手を傷つけまいということである。

こうしたタトエは実にうまいと感心する。
昨日、飲み会があって尊徳先生のタトエを使ってこういった。

動物はこうつかむことができる。
(片手で目の前のオシボリをつかむ)
これは自分のためである。
ところが人間はこうつかむこともできるし、こう渡すこともできる。
(つかんだオシボリを対面の人に差し出す)
これが動物と人間の手の構造の違いであって、
そしてこうして譲ることができるということが、人道の基礎なんだ。

フフ、皆ホオーと感心して聞いていたが、尊徳先生の湯船でのタトエなんだね。


二宮翁夜話巻の1【38】
「それ人体の組み立てを見てみよ。
 人の手は、自分のほうに向いて、自分のために便利にできているが、また向こうの方へも向き、向こうへ押すようにもできている。
これが人道の元である。
鳥や獣の手は、これに反して、ただ自分の方へ向いて、自分に便利なだけである。
そうであれば、人たるものは、他のために押すのが道である。
それなのに、わが身の方に手を向け、わがために取ることのみを勤めて、他のために押すことを忘れるのは、人ではない。
けだものである。
ただ恥ずかしいだけではなく、天理に違うがゆえに終いには滅亡するのだ。それ故に、私は常に奪うに益なく、譲るに益あり。譲るに益あり、奪うに益なし。
これが天理であると教えるのである。」

二宮翁夜話巻の4【10】
世の中で刃物を取ったりやったりするのに、刃の方を自分の方へ向けて、柄の方を先の方にして出す、これが道徳の本意である。
この意をよく押し弘めるならば、道徳は完全となるであろう。
人々がこのようであれば、天下は平和となるであろう。
刃先を自分の方にして先方に向けるという、その心は、万一誤りがある時、自分の身には疵を付けても、他に疵を付けるまいという心である。
万事このように心得て自分の身上をば損じても、他の身上に損を掛けるまい、自分の名誉は損じても、他の名誉には疵を付けまいという精神であれば、道徳の本体が全しというべきである。
これから先はこの心を押し広めればいいのだ。


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