時事随想抄

国家と国民のための政治を考える

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本日も、古代・中世史研究家の倉西裕子が、記事を書かせていただきます。昨日、NHKで放送されました仏米合作映画『ジャンヌ・ダルク』(1999年)は、ジャンヌのキャラクターが、常に喚いているような、極めてテンションの高い性格の女性として描かれている点におきまして、閉口してしまうのですが、考えさせられるようなところも多々ありました。
 
例えば、戦争による人類の動物化との関係の問題です。映画は、ジャンヌが、あれほどまでに英国軍に対し奮戦した理由を、英国兵による掠奪行為によって、ジャンヌの家族が殺害されたことへの復讐心に求めております。
 
史上名高い英仏百年戦争とは、基本的には、英仏両王の領土争い兼フランス王冠の争奪戦でありました。個人的とも言える理由でありながら、14世紀、15世紀という時代にあって、英仏間で大きな戦争が発生してしまったのです。このために、その兵力をどのようにして確保したらよいのか、という問題が生じました。英国では、国王との主従関係において貴族が兵力を負担しましたが、その際に、貴族の領地内の一般市民も従軍するようになりました。
 
国王と貴族間におきましては、封建的主従関係、すなわち、国王によって本領安堵されるかわりに、兵力を提供するというギブアンドテークの関係がありましたので、従軍する理由となりましたが、一般市民にとりましては、何のために命をかけなければならないのか、甚だ疑問であったはずです。そこで、制圧した市町村において掠奪を働く権利をこうした兵士達に与えていたのです(一攫千金のために、軍隊に加わる人々が生じる)。このことから、映画が、英国兵によるジャンヌの村の掠奪と村人の殺害行為から始まっていることに示されますように、英仏どちら側の兵士も、強盗殺人という悪に手を染めるようになってしまっていたのです。すなわち、兵士達の動物化が発生してしまったと言えるでしょう。
 
ジャンヌは、こうした一般の兵士達を窘めることになるのですが、“何のために命をかけてまでして戦場に赴くのか”という問題は重要であり、第二次世界大戦の時のような、一般の兵士達が“命をかけても惜しくない”と考えるような崇高な精神や愛国心といった理念が存在しない場合において、構造的に兵士達を動物化させてしまうことになる可能性が高くなることを指摘することができます。ロシアが、ソ連邦時代より、北方四島を“戦利品”と考える理由も、この点にあるのかもしれません。
 

そして、こうした構造が互いの憎しみを増長させることを踏まえますと、正当防衛以外の戦争、すなわち、大義なき戦争は、認めてはならないと言えるのではないでしょうか。


 

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(続く)

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ジル・ド・レ(青髭)も準主役で登場しますね 削除

2019/6/8(土) 午後 4:06 [ キッド ] 返信する

キッドさま
戦争による構造的動物化は、兵卒に限らずジル・ド・レのような貴族層にも見られたのかもしれません。本領安堵のために手段を択ばないということにもなりますので。

2019/6/11(火) 午後 2:09 [ 倉西裕子 ] 返信する

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