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プリオシーヌ
イラストと音楽とお笑いと

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ジャンニ・ロダーリ作
パジャマを着た宇宙人 
第11・最終回



未来への架け橋



エリオットはアンドロイド達に3番ゲートへ連れて行かれた。
そこには、ロミオと数名の大人たちが待っていた。
「やぁ、エリオット。地球行の船が待っているよ。
君のために用意したんだ。さぁ早く乗って」
ロミオはそう言って、エリオットの手を引っ張った。
エリオットはキョトンと驚いて声も出なかった。


「今までごめん、エリオット。僕は強引に事を進めようとしていた。
君の気持ちを考えていなかった。友達になりたいなら
まず、相手の立場になって考えるべきだったんだ」
「あ、あぁ……もういいさ、気にしてないよ。ロミオは僕の友人さ。これからも」
エリオットは安堵して、晴れ晴れした笑顔でそう言うと、
右手を差し出した。
「ありがとう、エリオット」
ロミオも左手を出して握手をした。
エリオットはしっかりと手を握った。
「あっ、そうだ。モジャおばさん、
いや僕が泊まっていた家のアンドロイドに伝えて欲しいことがあるんだ。
いいかな?ロミオ」
「あぁ、もちろん」
「山ほどの品物を送りつけてごめんなさいとエリオットが言っていたと」
「わかった。伝えるよ。モジャおばさんに」
二人は見合ってゲラゲラと大笑いながら、もう1回握手をした。
「今度はエリオットがローマを案内してよ」
「いいとも!待ってるよ。興味があるならローマ中の噴水を見せてあげるよ。
パジャマでウロウロってわけにもいかないから、服を用意しておくよ。
その時はあらかじめ連絡してくれよ」



「そろそろ出発しないと、夜明け前までには間に合わないぞ」
そう言って宇宙船のタラップから降りてきたのは、ピッチオーニ船長だった。
「私が君を地球のローマまで無事送るから、安心してくれ」
「あれ、船長。その格好!」
エリオットはまじまじと見入って言った。
ネイビーのベレー帽に紺のジャケットに白いスカーフ、
白いスラックスに黒いブーツ姿…
「これが本来の服装なんだよ」
「うん、こっちのほうがカッコいいよ」
「そうか。あっ、そうだ!」
そう言って、船長は胸につけていたユニコーンのピンバッジを
外して、エリオットの胸ポケットに付けた。
「君の勇気に賞して」
「ありがとう、ピッチオーニ船長」
エリオットはとても嬉しかった。
「ではロミオ君、彼を地球へ送ってきます」
「お願いします」
ロミオはエリオットに大きく手を振った。
「元気で!エリオット!」
「じゃあな!ロミオ!」
エリオットと船長は宇宙船のタラップを上がっていった。
船内の窓から外を眺めると、ロミオがちぎれるほど手を振っていた。
エリオットも手を振り返した。


エリオットを乗せた白いユニコーンのような宇宙船は、
大きなエンジン音をならしはじめた。
巨大な船体がゆっくりと浮上し上昇をした。
空を上がり大気圏を離脱すると、この星を一周して地球へ向かった。
エリオットは暗黒の宇宙に浮かぶ、
宝石のように鮮やかにキラキラと輝くこの星(惑星)は、
まるで巨大なクリスマスツリーのようだと思った。
「ブオンナターレ ・スィニョーレ・ロミオ
(メリークリスマス・ミスターロミオ)」


ロミオたちは、夜空を見上げてエリオットを見送っていた。
「エリオット君か…… 30年後が楽しみじゃな。ロミオ新大統領」
政府の老人が、ロミオの肩を叩いた。
「ええ。さきの会議であなた方に言われなければ、僕は過ちを犯すところでした」
「なぁーに、それがわしらの役目じゃからのう」





目が覚めたら…



エリオットはベッドから寝ぼけ眼で飛び起きると、
そのはずみでズテンと転げ落ちた。
「イテテテ…」
お尻をさすりながら、クローゼットをあけた。
パジャマは……入っていなかった。
いつもの服に着替えると、今まで着ていたパジャマを嗅いでみた
ほのかに甘い香りがした。
窓際には少し汚れた木馬がおいてあった。
エリオットは窓を開けて朝日を浴びた。
「ううッ…寒い。ローマの朝は寒いなぁ」
嬉しそうに言うと、空の彼方に思いを馳せた。
「ハックション。朝食たべて学校行かなきゃ」
大きなクシャミをすると元気に部屋を出ていった。


パジャマの胸のポケットには、ユニコーンのピンバッジが
太陽の光をうけてキラキラ輝いていた。




おわり



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    こんばんは^^

    エリオットとロメオ君が仲良くなって
    ホッとしました。男性はあまり恨みなど持たずに
    仲良くなれて素晴らしいですね。
    そうか、クリスマスだったのね。

    エリオット君が夢を見ていたのかなと
    思ったけどユニコーンのピンバッチが
    輝いていたのなら夢ではないのね。

    お疲れ様でした。

    ナイス!

    屋号富有柿

    2019/1/19(土) 午後 10:43

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    > 屋号富有柿さん

    こんにちは
    どうもありがとうございます
    この星が1年中クリスマスなのと
    星自体がクリスマスツリーのようだったので
    「メリークリスマス」なんです。
    ここで終わりにしても良かったのですが
    それだと「戦場のメリークリスマス」になってしまうので……
    「メリークリスマス ミスターローレンス」

    原作では夢オチだったような気がしますが
    あえて変えてみました。

    Ray

    2019/1/20(日) 午後 2:59

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    こんにちは。
    まとめて読ませて頂きました。面白かったです(^ω^)
    お疲れ様でした。
    図書館にあるかなーって思ったんですが、この作品は無かった……Rayさん版が読めて良かったです♪

    逸歩

    2019/1/20(日) 午後 11:02

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    エリオットは無事に地球に帰れて良かったです。
    ローマに着くなんて、ロマンチック・・・
    噴水を見るそうで、ローマは水の都で噴水が物凄くあるのですってね(ブラタモリで)
    ヴォンタナーレ・・・イタリア語?スペイン語に似てますね。
    宇宙に浮かぶ星、本当にきらめきは、クリスマス・ツリーのようでしょうね。
    美しい夢の様なお話し、Rayさん有難う〜
    罰世界に行ったようでした。

    そしてRayさんの文才に乾杯!

    sumire

    2019/1/21(月) 午後 4:29

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    m(__)m
    別世界ですう

    sumire

    2019/1/21(月) 午後 4:31

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    > 逸歩さん

    こんばんは
    最後まで読んでいただいて ありがとうございました
    楽しんでもらえて嬉しいです
    原作の内容を知っている人が読んだら
    なんか違うぞ!と思うかもしれません
    書いているうちに、どんどん話が変わってしまいました

    ジャンニ・ロダーリはイタリア児童文学の巨匠で
    日本でも数々の作品が書籍化されているのですが
    「パジャマを着た宇宙人」だけ絶版になって
    それっきりのようですよ

    Ray

    2019/1/21(月) 午後 7:24

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    > sumireさん

    こんばんは
    読んでいただいて ありがとうございます
    私もブラタモリのローマ番外編を観て
    噴水の部分を加筆しました
    ローマ市内に2900ヶ所の噴水があるとか!

    メリークリスマスをイタリア語に翻訳してみました
    なんと、イタリアではメリークリスマスという言葉は
    無いそうで、似たような意味の言葉を選びました
    楽しんでいただいて 嬉しいかぎりです

    Ray

    2019/1/21(月) 午後 7:33

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    sumire

    2019/1/22(火) 午後 4:30

  • 最後は、「めでたしめでたし」の話に落ち着きましたね〜。
    ユニコーンのピンバッジは、エリオットの小さな冒険に対する勲章みたいな役割なんでしょうね。
    「…‥。興味があるならローマ中の噴水を見せてあげるよ。回転木馬ならぬ、相乗りのベスパでね」となったら、又違ったストーリーが…‥(笑)

    「ヴォンタナーレ」も含めて、最後まで書き切られた事に、ブラボー!

    志的好奇心

    2019/3/18(月) 午後 7:41

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    > 志的さん

    こんばんは
    どうもありがとうございます
    最後まで読んでいただいて 嬉しいです
    ベステン・ダンク!

    夢オチじゃないぞ! ということで
    原作ではパジャマのポケットにお菓子が入っていたのですが
    今回は冒険色を強くして バッジを持ち帰ることにしました。

    大人になったロミオとエリオットは
    きっとベスパでローマの休日を過ごすことになるでしょう

    Ray

    2019/3/19(火) 午後 6:34

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