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教科書を疑え

先日ノーベル賞受賞が決まった本庶佑氏は、教科書を疑えというアドバイスをしました。私はそれにとても感銘を受けたのです。新たな研究でわかった新事実で前の研究を塗り替えることが学問なんだと思うのです。当然ですが染織品にも当てはまる事です。

東博の東洋館の地下では、「東洋の」テキスタイルを見ることができます。有り難い事ではあるけど、キャプションにミスが目立ち、訂正されません。ずっと以前の資料を残した担当者への敬意が強すぎるのか、または新しい担当者が品物への興味がないのか。何れの理由にしても少々酷いレベル。

例えば原産国イランと書いてある横にインドではこの様な織物を織って、それをイラン人が身につけたとありました。何か書かなきゃ、って書いたのか、しっかりと読んだ人がいたら混乱するでしょう。他にも全く難しくないタイプのものを違う原産国と時代で展示してあります。先進国ではない国の博物館ではあり得ますが、日本の国立博物館としてはちょっと残念。教科書ではないですが、権威を疑えです。

全ての美術品と一緒とは思いますが、アンティークテキスタイルを購入する時に決め手は好きである事。私は一番そこが重要だと思います。胸にグッとくるものを選ぶのが大切でしょう。

人それぞれ嗜好が違いますが、逸品を見て心動かされることはあるはずです。目と心で見る、という事でしょうか。時に見かけるのは頭で見るタイプの方です。知識があり過ぎてそこに頼るばかりに目と心を忘れてしまうと大失敗になりかねません。

染織品は贋作が難しいメディアではありますが、高額だけれど何とか作れそうなものだとチャレンジする人がいます。すぐに見破れるものから、かなり高度に似せているものまでまちまちです。そうすると、本など印刷物で見ていたものが目の前に手の届く価格であったりして、舞い上がって買ってしまうという事が起こるのです。プロでも時々聞く話です。
幸いにも贋作を購入した失敗は無いものの、私も知らない人から画像だけでの紹介で購入して「失敗したー!」と後悔したことはあります。皆様、画像で判断する場合には納得いくまで詳細をご確認ください。

もう一点は情熱です。これは計算出来ないことで、好きなものに出会ったら出来る限り入手する手立てを考えること。レアなものは一生に一度の出会いかもしれず、逃した魚は大きいのです。私はその情熱があり過ぎて困るのですが、、、でも良いものは常に素晴らしいですし、この満足感は代え難いものです。

クローン美術品

古代オリエント博物館のシルクロード展の記念講演を聞きました。
3名の方がそれぞれご専門分野を解説下さり、それぞれ興味深いもので非常に勉強になりワクワクしました。

特に前田耕作先生の講演においての思想(宗教)とイコノグラフィーの伝播、バーミヤンについてのお話はもっと色々聞いていたいものでした。

以前東京芸大美術館で、そのバーミヤン大仏の壁画をクローン美術として蘇りさせた宮𢌞正明先生のお話もありました。クローン美術品として失われたり保存の為には公開出来ないものを展示して見せることが出来るのは、とても有意義な事だと思います。触ったり出来る、また製作当時の様子に戻す事も出来る、凄い技術です。しかも材料も同じものを使う為に、化学分析しても同じ結果が出るという事でした。これは絵画だけでなく彫刻にも応用出来るようです。

染織品はどうでしょう。本家を参考に仕立てる場合もあります。例えば京都の祇園祭の掛物、古いものは保存して新しいものを使うようですが、クローン美術品の様には行かないと思います。染織品は材料も技術も化学分析で同じになるものは作ることができないと考えます。例えば動物の皮を使った金蘭など、材料を作る技術すらないでしょう。

染織品は受け継がれてきたものは奇跡的であり、更にクローンを作ることが困難なかけがえのない美術品だということを肝に命じて、出会ったものを大切にして行きたいと思います。

ゾロアスター教研究

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ロンドン大学の卒業生向けの冊子が送られて来ました。
日本の学校と違い年会費は無いものの、よく寄付を頼んで来ます。

私などはするとしても微々たるものですが、今回の記事によるとゾロアスター教研究の為に500万ポンド、実に7億円以上の寄付があったとのことです。
元々インドに住むパルシーと呼ばれるゾロアスター教徒は90年も前から寄付をしてきました。

数年前にゾロアスター教の宗教、美術など総合的な会議がロンドン大学のブルネイギャラリーで行われました。名前の通り、ブルネイの王様の寄付で出来たギャラリーです。
参加者の多くが本国イランのゾロアスター教徒ではなく、インドに住むゾロアスター教徒でした。それだけ、彼らは真剣に取り組んでいるだけでなく、経済的にも恵まれています。

メアリー・ボイスという著名な研究者がいましたが、在学中には宗教学の専攻でもなく接点はありませんでした。ゾロアスター教徒のテキスタイルに興味を持ち研究する為にも収集してきましたが、奥が深く宗教も複雑で、まだまだ分からないことだらけです。

日本にも非常に優秀な研究者の方がいらっしゃるようですが、通常宗教学の研究で染織品となると参考になるものが限られているのが現状です。
以前、パトリシア・ベイカーさんとお会いした時に、イギリスとゾロアスター教徒の関係は長いのに、そのテキスタイルを研究しているのはあなただけですね、とお話しするとお互い情報交換しましょうね、と言って頂きましたが、残念ながら数年前にお亡くなりになってしまって。。。

この寄付をきっかけに、またゾロアスター教徒の染織分野の研究者が現れる事を期待しています。

山王祭

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今年は2年に一度の山王祭で、京橋、日本橋エリアには町ごとのお神輿など飾ってお祭りが始まっています。
ショウルーム向かいの桜川公園にも飾られていますが、こちらは八丁堀の町内会のようです。

新しいビルだらけの東京中央部ですが、古くからのお祭が今も生きているのが素晴らしいです。時代や生き方が変化してきても、伝統文化を守り続ける意義があります。伝統工芸の継承にも大きな役割を果たしていると思います。

染織においても、特別な儀式の為に作られたものには特別な思いを感じます。しかしながら、染織分野は昔ながらのものを継承して行くのは難しい時代です。アンティークにはあっても現代では誰も作っていない技術もあり、復活させるのには大変な努力と時間が必要です。

効率を重んじる時代に於いても、心の豊かさにはプラスαの何か、自然・文化・芸術・伝統祭礼などが絶対必要なのだと感じています。

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