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 ▲千葉陸軍防空学校監修のレコード「敵機爆音集」。「ニッチク」現在のコロムビアで製造された。ボーイングB17D重爆機、ロッキード・ハドソン重爆機、カーチスP40戦闘機、バッファロー戦闘機の爆音が収められている(朝日歴史写真ライブラリー「戦争と庶民」(朝日新聞社、1995)より


 小学校の頃、戦争が終わってしばらくしてからのことだ。田舎の自宅の縁の下に、レコード盤が何枚も積み重ねられていた。ほこりまみれになっていた。軍歌ばかりだったようだ。なぜ、こんなにたくさんあるのか、不思議だった。これらレコードを聴いたことはない。家に蓄音機があったとの記憶もない。

 1年ほど前に、当欄『戦争の記憶』で次のようなことを書いた。
 《国民学校の音楽の授業では、音感教育が特別な目的を持って行われたという。「飛行機の爆音を聞いただけで、敵か味方か、機種は何か、どのくらいの機数か、などが確実に聞き分けられる『耳』の訓練にもなる」とされたからだ。》と。http://blogs.yahoo.co.jp/galleryimozuru/8634383.html?p=1&pm=l

 最近になって、この音楽教育の成果と課題を報告した記事に巡り合った。記事は、『音楽公論』第3巻第8号(1943年8月)に掲載された山口保治氏の《音盤「敵機爆音集」による国民学校聴覚訓練報告》だ。当時の音楽教育の目的がはっきりと伝わってくる内容であり貴重だ。ホームページの管理人が整理され丹念にまとめられた資料の一部であり、以下引用(一部割愛・修正)させていただく。

 ▼聴覚訓練では音高・強弱・長短・音色・方向などが扱われるが、聴覚訓練のみが重要であるという考え方や、音感教育でなければ音楽教育でないという両極端の考え方はとらない。
 ▼爆音についての聴覚訓練に対する教育的態度は、国民学校の一分野(音楽の中の聴覚訓練)として取り扱っている。児童のこの音盤(「敵機爆音集」)に聴き入る真摯な態度を巧みに利用すれば、聴覚訓練全般における聴く態度を習慣づけるのに役立つと思う。

 ▼同一高度で各種飛行機の音を聞き比べ、訓練ができたら違った高度で試みる方法を薦めている(同一飛行機の各種高度における音の違いを示す方法もある)。
 ▼高度は1,000メートルから始め、5,000メートル、最後に3,000メートルの順が良い。組み合わせはボーイングとカーチス、次にロッキードとバッファローの順序で実施すると良い。訓練の時間は5分前後と短くし回数を重ねるように努力しないと効果が上がらない。

 ▼常盤国民学校における現況。毎日一回朝礼後の3分、5分、あるいは全校体操の時間の僅かを割いて行なっている。高度1,000メートルについては9割ほどの児童がほとんど絶対的に識別できる、5,000メートルでは4〜5割。3,000メートルは未だ実施していない。
 ▼飛行速度による爆音の相違、天候による相違、風の速度方向があたえる影響、同一種類の飛行機であっても甲、乙、丙それぞれによって相違はないのか、単機と編隊による相違など知りたい点がある。

 勇ましい軍歌ばかりが戦争を遂行する精神的道具ではない。子どもたちのすべてにも戦争は覆いかぶさっていたのだ。音を聞き分けられないと「敵の飛行機も識別できない」と怒った先生もいたとか。
 長女さち子も「爆音を聞き分けるための音楽の時間で調音を教えられた」。ただ、レコード盤で「敵機爆音集」を聴いたことはないそうだ。

 縁の下にあったレコード盤は、戦争が終わり廃棄処分されるべきものだったものかもしれない。「学校にあったものが、わが家に持ち込まれたことも考えられる」と長女。その中には、「敵機爆音集」もあったのかもしれない。

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「敵機爆音集」というレコードが、戦争中にあったのですか。爆音で敵か、味方かを聞き分けろいうことですか。凄いことをしていたのですね。

2006/9/19(火) 午前 11:02 ich**obaka2*05 返信する

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教育のすべてが戦争を遂行するための教育だったんですね。こうした軍国教育の反省の上たって現行教育基本法があります。それを「改正」しようというのは、 何のためか。

2006/9/19(火) 午後 7:14 [ galleryimozuru ] 返信する

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