引っ越してから、よく、母の寝顔を見るようになった。
今までは別居状態だったから、年をとった母の寝顔は見た事なかったのだ。
幼い頃にも見ていそうなものだが、私は祖母の意向で幼い時から(それこそ物心つくくらい
から)祖母と一緒に寝ていたので、若い頃の母の寝顔はほんの数回しか見ていない。
引越しして、母が寒い時はこたつ虫になっている、この冬。
あーなんて年取ったんだろう?って思った。寝顔は決して安らかではない。なんとなく
険しい感じだ。
苦労ばかりかけてきた。
無理して専門学校も卒業させてもらったし、今まで色んな意味で甘えてきた。
今も。
健康なら花嫁修業でも何でもするのだが。いかんせん、病気持ちでウツウツしてる時は
なにもできない。そんな自分が悔しい。
本当なら家事手伝いだってしたい。
母の助けをしたい。
でも、出来ない自分のもどかしさ・・・・。
ごめんなさい、お母さん。
私は、今描きたいもので溢れているんです。本名のように。
他の何を差し置いても描きたいものがあるんです。傍から見たらくだらない絵でも。
今、私が唯一「熱心に」出来る事。
絵を描くこと。
一日一枚でもいい、何か絵を描く。
描きかけに終わってもいい。
それが目標なんです、お母さん。
いつもすっぴんで、化粧っ気もなくて、ひっつめ髪で。
でも、私にとっては最高のお母さんです。
寝顔を見ては、苦労かけてすまないなぁ・・・・と思います・・・・・。
ただ、私が早く結婚すればいいとか、平凡な話じゃないし。
病気が治る事。
これが先決。
今、私は旅の途中。
いろんな所で旅をして。色んな刺激を受けている。
病気も、絵を描けるくらいになら、まぁ、なった。
旅立てる日は、いつだろうか。
その時に。
母に最大級のありがとうが言いたいんだ。
旅立つ日には、何をあげよう。
満開の花束?
好きな本?
綺麗な服?
それとも、それとも私の笑顔かな。
今までが嘘のように笑いたい。
その時が来たら。
快活に、溌剌と。子供の頃のように。
何事もなかったかのように。
そうしたら、母の寝顔のしわはとれるだろうか。
苦労ばかりしてきたお母さん。
幼いころに両親を亡くし、父と恋愛結婚したのはいいものの、嫁いびりに泣かされて。
それでもめげずに生きて、働いてきたお母さん。私を育ててくれたお母さん。
夜勤をした後、農家の仕事もして、家族の健康に気を配った食事を作り、洗濯し、
掃除し。
それでも勘違いでも何でも愛情を注いでくれるお母さん。
ありがとう。
ありがとう。
ありがとう。
こんな所ではこぼせない涙が、心の中で溢れているよ。
面と向かっては、何故か言えないひねくれんぼんばの私。
でも、心の中ではいつも思ってる。
ありがとう。
母譲りの癖っ毛も。
同じ足の小指の爪の形も。
年をとったら二重になるこのまぶたも。
丸っこい指も。
全部、貴方からの贈り物です。
お母さん。
いつか、私の病気が治ったら。貴方が働かなくなるような家庭になったら。
二人で温泉に行こう。
背中流しっこしよう。
お母さんの好きなお寿司も食べよう。
ママの笑顔とキスはラズベリー。
その甘さと酸っぱさが私を泣かせる。
でも、それがあるから私は行けるよ。遠く、遠く、何処までも。
母の寝顔を見るたびに思うこと。
あの懐かしい母の胸の柔らかさ。温かさ。肌触り。
どんなに大きくなっても覚えているよ。
どうか長生きしてください。母よ。いつか、
「あんな事もあったわね」
と語り会える日が来るのを夢見て。
お休み。
お眠り、愛しい母。
最上級のキスと、最愛のキスを込めて。