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隣 「ハッハッハァーーー、アンタ商売する気おまんのか?
客、笑わしてどうしまんのや。今の客なんか、アンタの駄洒落聞くためだけに、物選んでましたで。
もっとお客さんに、じっくり、物見てもらわんと。手に取らはったら、その物の見所、さりげのーう言いますんや、さりげのーう、でっせ。
骨董のお客さんは難しい人が多いですから、あんまり言い過ぎると、かえって、ウットシがられます。じっくり見てもろて、一言、二言、言い添える程度がよろしいなあ。」
マ 「さよか、さりげのう言い添える、でっか。ほな次そうしまっさ。」
客 「ちょっと見せてや。」
マ 「ヘイ、いらっしゃい。どうぞ、見てっておくれやす。さりげなく、やね、さりげなく。」
客 「このケッタイな形の壷はなんだんの?」
マ 「ウワーーーーッ!!来たで、来たで、来たで!!尿瓶持っとる!さりげなく、やな。ンンッ、ンッ、オホン!!・・・・・それね、し・び・ん、だ。」
客 「なんやい、尿瓶かい!そんな物いらんわい。」
マ 「アアーーーッ、いてもうたぁ・・・」
隣 「・・・アンタ、アホだっか???
さりげのう、ちゅうても、小声で言うんとちゃいまんがな。
見所言わんとあきまへんがな、見所を。見所をそれとのぅ言うんでんがな。
きょうび、尿瓶てな物が売れまっか??ウソでも花生け、ちゅわんと、誰も買いませんで。もうチョット頭、使いなはれ、頭を!!。」
マ 「せや、ワタイも尿瓶て分かったから、いらんようになってんや。花生けでいかんと。エエー花生けでっせ、花生け、天下の珍品、花生けいりまへんか?」
客 「そないに、珍品なんか? チョット見せてみ。」
マ 「こらぁお客さん、お目が高い。
これこそ天下の珍品、取っ手付いてて、口が広い。こんな遣い易い物はない! どんな太い物でも、すぐ入る。こんなエエ花生けは無い!! 中にコヤシも入ってて、よう花育つ!!」
客 「コヤシ????クッサーーーッ!!
お前こら尿瓶やないか!! こんな物いらんわ!!」
隣 「アンタ、正真正銘のアホだんな。この商売向いてまへんで。」
マ 「イヤーーー、買うのは楽やけど、売るのは難しい!!」
隣 「アンタがさらに難ししてはりますんや!!」
客 「チョッと見せてもらいますよ。」
マ 「ヘイ、いらっしゃい。今度こそ案上せんと。何が御入用で?」
客 「いや何な、30年住み慣れた家を売りましてな、新築の家に替わったばっかりでんねやがな、今度の家はお蔭さんで、そこそこの庭がついてるんですが、木や花が植わってるのは、植わってるんやが、育つにはもう少し日にちがかかりそうや、ほっといたら、それで済みそうなもんやが、どうも庭にシマリが無い、なんぞ、庭のアクセントにでもなる物がないか、と思てやな、せんだってから、捜し歩いとるんですが、ほなそこにそれ、中々、ナリのエエ、大きさも調度、見た目も探してた感じによう合うた、なんとも手頃な壷がありましてやな、中々、黒くコゲた雰囲気もエエようやし、値さえ合えば、譲ってもらえんか、とこう思てるわけですねんけど、そら、一体、いつごろの物ですやろか?」
マ 「・・・・・ハハハ、よーーーう口回るなあ。一息でみな言い切りよった・・・」
客 「何、ボーーーッとしたはりますのん? この壷はいつごろの・・・」
マ 「あっ、ああ、ああ、ああ、これねえ、これだんなあ、こんなん知らんなぁ・・・この横に寝とる、取っ手の付いた、口の広い壷なんかは御入用では・・・はあ、それはいらん、さいだっか・・・これねえ・・・こんな時、Cヤンがおってくれたらナア、ワテでは分からんもんなあ・・・・・こんな時なあ・・・アーーーッ!! Cヤン!! Cヤーーーン!!ちょっと助けてえなあ。」
C 「なんや、どないしたんや?」
マ 「このお客さんな、この大きい壷、これいつごろの物や?ちーはるんや。でもワテら知らんさかい、どうしょう、と思てたら、Cヤンが通りかかってんや。こら渡りに船や、思て、呼び止めてんや。なあCヤン、助けてえなあ。」
C 「ああ、お客さん、この甕でっか。こら時代は弥生時代の物ですわ。弥生式土器ちゅう手でいける物やと思います。」
客 「弥生式土器ですか。エライ立派な物ですなあ。庭に置いたら映えますやろうなあ。ほんでこら、いかほどの物なんですか?」
マ 「500万円!!」
C 「アホなこと言いな!!お客さん、ビックリしたはんがな。・・・まあ、本来、あたしの物やないんで、値付けるのはおこがましいんですが、キズ気も少ないですし、大振りで、コゲもほどよく出てます。とは言うものの、きょうび、土器はそないに売れるもんでもおません。どうですやろか、20万がとこで考えてもらえませんやろか。」
客 「20万ですか・・・・ところで、こら元来、何に使た物ですやろか。穀物でも入れた物か、水でも入れてた物ですやろか?」
C 「いやーーーーっ・・・・ごまかしてお売りすることもできますんやが、そうしますと、この手伝いの者だけやなしに、店主にも迷惑がかかります。あたし自身も寝覚めが悪いですんで、正直に申し上げますが、こら、棺桶だ。」
客 「エッ!!棺桶!!」
C 「甕棺と申しまして、弥生時代の棺桶やそうです。あたしも専門や無いんで、それ以上詳しいことは存じ上げませんが、1500年以上前の物ですし、お庭に置いとかれるぶんには、さして差し支えも無いかとは思うんですが・・・・」
客 「そらアカン。棺桶、家に持って入るわけにはいかん!!」
マ 「エーーーッ!! そう言わんと、買うてえなあ。10万にしとくから、買うてえよう。」
客 「いや、あきません。」
マ 「ほな5万、いや、2万で買うてってえなあ。」
客 「いや、絶対にあきまへん! 同じ棺桶でも、壷やったらかまいませんが、カメだけは絶対にあきまへん!!」
マ 「何で壷やったらようて、カメはあきまへんねん?」
客 「カメだけに、のろいが怖い!!」
デンデーン、チャカチャンリンチャンリン、デンデーーン!! お後がよろしいようで。
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