パンダイアリー

2019年も読書感想文メインです。たぶん。

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数学ガール ポアンカレ予想を読んで、改めて私は多面体とか幾何学が好きなんだと気付かされた。突如、取り憑かれたように多面体に関連する本を読んでみようと思い、手にとったのが本書。

本書の主人公は、ハロルド・スコット・マクドナルド・コクセター(Harold Scott MacDonald Coxeter, 1907-2003)。同い年生まれは、湯川秀樹、愛新覚羅溥傑、中原中也、レイチェル・カーソン、淡谷のり子。

ウィキペディアによると『イギリスのロンドンに生まれ、ケンブリッジ大学で博士号を取得後、カナダのトロント大学に就任する。専門は幾何学であり、不連続群や多胞体の研究で先駆的な業績を残した。また、数学の抽象化が称揚された時代の中、イメージ豊かな幾何学の探究を続けており、「現代のユークリッド」とも称される。 エッシャーにポアンカレ円板などについて幾何学に基づいたアドバイスを行った。1950年に王立協会フェロー選出』とある。本書という存在がありながら、思いの外、記載は少ない。

コクセターは、古典幾何学という色褪せた遺物に心を奪われ、同時代の大半の数学者や科学者から見れば無駄な努力をしているように見えた。しかし、純粋数学の理論についてよく言われるように、それが美しく、エレガントであり、卓越していて、深遠なものであれば、必ず何かを切り開くことが潜在的に約束されている。最終的に、あるいはほとんど必然的に、純粋数学の美しい理論は、しばしば偶然の成り行きで、発明者のあずかり知らぬところで、科学的における応用として結実するというパターンをたどる。(p.138)

本書の内容はこの引用文に尽きる。コクセターの生きた時代は、幾何学は時代遅れの、終わった、数学の領域と考えられていた。ブルバキによる、数学の潔癖なまでの簡潔性、つまりは、数学の教科書から、図形を排除する試みにより、幾何学は迫害され、絶滅の危機に瀕していた。

実のところ、ブルバキは、超一流のフランス人数学者たちから構成される秘密結社の偽名だった。(p.164)

本書でブルバキの存在を初めて知ったのだけれど、この存在と活動は興味深い。ブルバキ視点からの本も読んでみたい。

改めて現代の科学を見渡すと、幾何学と関連している事例が多い。コンピュータと幾何学の融合であるCAD(Computer Aided Design)、正20面体の構造を持つウイルスのキャプシド、たんぱく質の構造解析、分子式C60の球状分子であるフラーレン、そして12面体宇宙。

工学、生物学、化学、宇宙学へとコクセターの卓越した数学理論が新たな科学の地平を切り開き、あるいは科学者が切り開いたその先でコクセターの理論が待っている。

バックミンスター・フラーやエッシャーといった数学とは直接関連のない建築家や芸術家との交流も興味深い。

多面体や幾何学は人を惹きつける何かがある。自然の一部であり、あるいは宇宙そのものかもしれない。だからこそ惹きつけて止まないのかもしれない。

調べてみると多面体アートを作っている人はちょくちょくいる。私もなにか作ってみよう。ゴミが増えると、妻に怒られそうではあるのだけれど。

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