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2019年も読書感想文メインです。たぶん。

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世界三大感染症の1つであるエイズ。かつては不治の病であったが、今では、根治できないものの、薬の服用を継続すれば、エイズは死なない病気になったと言われて久しい。

著者はピーター・ピオット博士。エボラウイルスの発見者の1人であり、国連合同エイズ計画(UNAIDS)元事務局長である。世界的に著名な感染症や公衆衛生の専門家だ。って言いながら、たまたま参加したフォーラムでご自身で著書を宣伝しておられて、気になって読んでみたのが本書だ。

政治や経済を抜きにして、科学が人びとのためにできることはほとんどないが、同時に科学的な根拠と人権の尊重がなければ、政治は有効に機能しないし、有害なことすらあるという確信を持つようになった。(p.1)

本書は科学的側面ではなく、むしろ政治や経済について多くのページを割いている。なぜか。感染経路や発症メカニズムが解明され、治療薬が発明され、市場に出回ったとしても、感染症問題は、特にエイズのような社会や文化が複雑に絡み合った病気は、科学だけでは解決しないからだ。事実、今でも解決していないのだ。

エイズの終わりはまだ見えていない。毎日約5千人が新規にHIVに感染し、約3千人が死亡している。歴史的な成功を踏まえ、予防、治療、研究、そして長期的な資金確保の拡大を進めていくには、これまでの2倍の努力が必要だ。(p.4)

確かに死なない病気となり、感染者数が減少したが、それでも毎日3千人もの人が命を落としている。同時に新たな感染者も出ている。

過去30年の経験から学ぶべき教訓が一つあるとすれば、それはHIV予防に特効薬はないということだ。地域の事情に合致し、必要な人に十分に行き渡り、継続して使える複数の手段を組み合わせること、つまり、「コンビネーション予防」こそが、HIV感染の拡大を抑えるのに最も適した方法なのだ。(p.145)

HIV感染は、季節的に空気感染するインフルエンザとは異なる。性感染症であるという点、さらに男性同性愛者による性行為のリスクが比較的高いという点が問題をさらに複雑にしている。性犯罪や売買春や道徳的価値や価値の多様性への寛容さと不寛容さといった、国や地域の制度や文化や慣習、もっと言えば歴史までもがHIV感染への克服を阻害している。

歴史的に見れば中世のペストから結核、ハンセン病、梅毒まで、スティグマと感染症には強い結びつきがある。(p.191)

さすがに今ではいなくなった(と思いたい)が、私が学生時代には、同性愛者への神の罰としてHIVが存在すると主張した医師がいた。感染症に限らず、病気=異常として扱われ、スティグマタイズされる。魔女狩りのように、スケープ・ゴートにされてしまうようなケースもある。

引きこもりを異常者扱いするようなメディアの取り上げ方は、現代の日本において典型的なスティグマタイズと言えるだろう。だが、スティグマタイズすることは問題の解決にはならない。

印象的だったのは、次の文章だ。

政治的決断を下す人にとっては、解決策のない問題はまだ問題ではない。解決策を探せということになる。(p.87)

なるほど。今こういう病気が流行っています、と報告を受けても、じゃあどうすれば良いんだということになってしまう。今こういう病気が流行っていますが、こうすれば流行が抑えられます、コストはこれくらいかかります、別の方法もあります、といった具合に具体的な解決方法がなければ、そもそも問題として政治的には認識されない。

エイズはグローバルファンドのように国際保健分野の新たな国際資金メカニズムを生み出してきた。(中略)傾向としては、開発援助は主として国際公共財、つまり国際安全保障、経済の安定、標準的な援助、地球温暖化への対応、感染症の世界的流行の抑制などに向けられている。(p.214)

旅行者やビジネスパーソンだけでなく、移民や難民も含めた人の移動が活発になると、安全保障対策は国際的な公共財となる。国の存亡をかけることになり、一個人が感染症対策をしても意味がないため、国として投資しなければならない。さらには国と国との連携が必要となると、グローバルファンドという新たなメカニズムが登場し、機能している。

これは感染症に限定されない。地球温暖化や異常気象、廃プラ問題、海洋プラスチック問題も同様に国際的な公共財という考え方へと切り替えていく必要がある。共有地の悲劇がもたらした事例と言えるだろうが、人の生き死にが直接的には見えてこない分、対応が遅くなってしまった課題とも言える。

私が小学生の頃は、酸性雨や光化学スモッグといった現象は公害の延長線上に位置付けられていた印象がある。今や、地球環境が危機的状況にあり、人類がこの先、生きていけるかどうかすら怪しくなってきた。人類存亡の危機だ。

とはいえ、私は希望を持ちたい。エイズへの対応は予断を許さない。しかし、大きく成果を上げているのも事実だ。科学的な裏付けや発見が、正しい政治判断につながることを無邪気ではあるが、信じたいのだ。

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