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「牧羊神・パーン」

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 「明るく陽気な神さまは、笛を吹けば踊りだす」

 パーンというより、パンの方が通りがいい。なんと美味しそうな名前の神さまだこと。

 かのフランスの王妃マリー・アントワネットが、
 「パンが無ければお菓子を食べればいいじゃないの」と、うっかり言ってしまったために身を滅ぼしちゃったパンとはもちろん違う。

 この神さまは食べ物の神さまじゃなく、山羊、羊飼いの神さまという渋い役柄なのだ。どことなくアルプスの山々というイメージがして、妙に子供受けしそうな神さまなのだ。

 実はパーンはすべての神の中で最も年老いていて、元祖・音楽の神なんですね。音楽といえば、アポローンが有名なのだけれど、そのアポローンの笛もパーンが、シューリンクスを追って葦の原に彷徨ったときに、その葦から作った笛、つまりパーンフルートなのだ。
 彼に笛の音は、葦の原をそよぐ風に乗って、その霊感に導かれ、麗しい音色を醸しだすといわれている。
 まさに神業というべき醍醐味だった。でも、その葦の笛が、どうしてアポローンの手に渡ったのだろうか?
 事情は簡単―― 。

 「わしの葦の笛を、ヘルメースの馬鹿が盗んで、アポローンに売っちまったんじゃよ」

 でもね。そこは音楽を人生、いえ、神生の友にしているパーン爺さんのことだから、怒ったりしなかった。

 「まぁ、ええんじゃね〜の」と穏やかに周りの人間をなだめちゃったりして。

 長く生きてきてすっかり練れて丸い性格になっているんですね。しかも羊飼いの神さまだから、穏やかで慌てることもないだろうし…… 。

 ところがこんな温厚な彼も歴戦の勇士だったこともある。パーンが活躍したのは、ゼウスと若い神々がクロノスと対決したときのこと。
 勇士といっても、武器を手に持って戦ったわけではなく、自分の音楽の才能を遺憾なく発揮したのだ。
 つまり戦いのときに、大きな閧の声を上げて、クロノス側を圧倒したというのだ。パーンが声を上げれば、たとえ巨神たちであっても、その声に怯え、後ずさりする始末だったという。
 一時は不利な情勢で押されていたオリュムポスの神たちは、このパーンの声で敵が怯んだ隙に優勢に転じた。
 このときの、パーンの声を聞いて驚くという状況から"パニック”という言葉が生まれたというのだ。

 この戦で勝利したゼウスは、パーンの手柄をとても重くみて、彼が多少悪さをしても、多目に見てやったのである。

 まあ、悪さをしても、叱られないというのは、案外味気のないものかもしれない。というわけで、羊飼いの神さまとしてのんびり暮らした。

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パラケスス
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