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・舞台:オセロー ・場所:ヴェニス ・人物:オセロー ・・・ヴェニス公国に仕えるムーア人の将軍 デズデモーナ ・・・オセローの妻、ブラバンショーの娘 イアーゴー ・・・オセローの旗手で悪党 エミリア ・・・イアーゴーの妻、デズデモーナの侍女 キャシオー ・・・オセローの副官 ロダリーゴー ・・・ヴェニス紳士 ブラバンショー ・・・元老院議員、デズデモーナの父 ヴェニス大公 モンターノー ・・・キプロス島総督、オセローの前任者 グラーシアーノー・・・ヴェニス貴族、ブラバンショーの弟 ロドヴィーコー ・・・ヴェニス貴族、ブラバンショーの親戚 ビアンカ ・・・娼婦、キャシオーの情婦 ・舞台:あらすじ |
「オセロー」
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エミリアが登場し、キャシオーが、ロダリーゴーを殺したこと、そしてキャシオーは、死んでいないとを告げに来る。 本当はイアーゴーが、止めを刺したのだけれど。
オセローは、キャシオーが死んでいないことを知ると、復讐を果たしたことにならないと言ってがっかりするのだった。 その時、オセローに窒息させられて、すでに死んでいたと思われていたデズデモーナが、少しだけ息を吹き返しエミリアと言葉を交わすのだった。 'A guiltless death I die.' (罪もなくわたしは死ぬのよ) ひょっとしたら、まだ、うまくいくかもしれない。しかし、もう遅い、遅すぎた。
死に臨んだデズデモーナの唯一の思いは、彼女の夫にして殺人者のオセローを許す。 Emilia: O, who hath done this deed ?
Desdomina: Nobody; I myself. Farewell:
Commend me to my kind lord. O, farewell !
(エミリア:ああ、いったい誰がこんなことを?
デズデモーナ:誰でもないわ。わたしが自分でやったの、
さようなら。わたしの優しい主人によろしく。ああ、さようなら!)
デズデモーナは、オセローを許すのだ。彼からいわれのない嫌疑をかけられ、不当な仕打ちを受けて、窒息死させられる。にもかかわらず、彼女はオセローを許す。究極の愛ではないのだろうか。
これをキリスト教的解釈によれば、デズデモーナがイエス・キリストになぞられ、一度、死んだ彼女が復活し、彼女の至高の愛と許しによって、オセローの罪も許される。 そうしてはじめて、二人は天国で改めて結ばれることが出来た。 このデズデモーナの許しと犠牲がなければ、言い換えれば、この場面がなければ、オセローの罪は許されず、彼は地獄の業火に焼かれたに違いない。 この一点だけをみれば、オセローは幸せな男だったかもしれない。 オセローは、エミリアに自分がデズデモーナを殺害したことを告げる。 'Twas I that kill'd her.' (俺が殺したのだ)この直後、オセローは、自分が犯した誤りのことをエミリアから聞かされる。 彼が真相を知らされて苦悶している最中に、イアーゴーと一群の将校が登場し、続いてエミリアとイアーゴーとの間に激しい口論が起こる。 イアーゴーは、エミリアを言いくるめようとするが、上手くいかないとみるや、彼女を刺し殺し、命からがら逃げ出すのだった。 しかし、さすがのイアーゴーも運が尽きる時がきて、将校たちがどっと飛び出して彼を逮捕する。 オセローが、彼を切りつけるが、周りの人々に阻まれた。 イアーゴーは、罪のすべて告白させるために生存を許され、さらに残酷な責苦を受ける。 Iago: Demand me nothing. What you know, you know.
From this time forth I never will speak word.
(イアーゴー:俺に何を訊いたって無駄だ。知っていることは
知っているだろう。これから先は、一言も喋らない)
イアーゴーのポケットから発見された書類とキャシオーの証言とが、オセローの犯した誤りの重大さ明らかにする。 彼にとっての将来は、もうない。彼の罪を償うには、死のみであった。 彼は自らの手で、その償いをつけるのだった。 Othello: Then must you sprak
Of one that loved not wisely, but too well;
(オセロー:その時は、この私のことをこう伝えてください。
賢くは愛せなかったが、あまりにも深く愛し過ぎた男として)
本当にオセローは、「あまりにも深く愛し過ぎた」のだろうか?
そうではない、と思う。やはり、妻が浮気をしたからといって、嫉妬に狂って殺してしまうのは、本当の愛ではない。 ましてや、オセローは、イアーゴーに騙されたのだが、結局は、愛する妻の必死の訴えよりも、この天使を装った悪魔の言葉を信じた。 このことは弁解の余地はなく、所詮、オセローの愛は、未熟な自己愛に過ぎなかったのだ。 つまり、ナルシストくんだったわけである。 しかし、何という結末なのか。
デズデモーナ、エミリア、ロダリーゴーが殺され、オセローは自害する。デズデモーナの父ブラバンショーは、娘の死を悼むあまり死んでしまった。 キャシオーとイアーゴーのみが生き残ったが、イアーゴーの生涯は残酷な拷問の中で間もなく終わるであろう。 |
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一方、城内の寝室。 デズデモーナは、眠っている。オセローは彼女の殺害の決意を固めている。 しかし、オセローは、デズデモーナに対する愛情は消えていない。もし、この世に二人だけで生きているのだったら、まだ彼は彼女を許したであろう。 'Yet she must die, else she'll betray more men.' (だが、生かしてはおけない、生かしておけば、もっと多くの男を裏切るだろう) オセローは、彼女の死は、世の中に対して捧げなければならない犠牲だと思っている。
これは、オセローの身勝手な言い訳に他ならない。 デズデモーナが眼を覚ます。 オセローは、デズデモーナが懺悔を済ますまで殺すまいと思う。しかし、当然のごとく彼女には、懺悔することなど何一つないのだ。 ここで初めてオセローは、デズデモーナがキャシオーと犯した罪のことを咎めると、彼女は完全にそれを否定する。 しかし、もはや手遅れであり、オセローを激怒させただけである。 Othello: By heaven, I saw my handkerchief in's hand.
O perjured woman ! thou dost stone my heart,
……
I saw the handkerchief.
Desdemona: He found it, then;
I never gave it him: send for him hither;
Let him confess a truth.
Othello: He has confessed.
Desdemona: What, my lord ?
Othello: That he has used thee.
(オセロー: あの男がハンカチーフを持っているのを、現にこの目で見ている。
おお、この嘘つきめ! お前のために、私の心臓は石に変わり、
……
私は、あのハンカチーフを見たのだ。
デズデモーナ: では、拾ったのです。
あげたりはいたしません。ここにご本人を呼んで、
真実の話をしていただきましょう。
オセロー: もう白状したよ。
デズデモーナ:何をですの?
オセロー:お前と寝たということを)
デズデモーナは、それを聞くとびっくりする。そんなことが本当だとはありえない。彼女は「そんなことを言うはずがありません」というが、キャシオーは死んでいる。(死んではいないが、オセローは死んだと思っている) Othello: No, his mouth is stopp'd;
Honest Iago hath ta'en order for it.
……
Desdemona: Alas ! he is betray'd and I undone.
Othello: Out, strumpet ! weep'st thou for him to him to my face ?
(オセロー:そうさ、もう口が利けんからな。
忠義者のイアーゴーが始末をつけてくれた。
……
デズデモーナ:ああ! あの人は謀られたのです。それではこの身も終わり。
オセロー:くたばれ売女! 私の前であいつのために泣いてみせるのか?!)
この不幸な言葉をオセローは告白と受け取り、デズデモーナは運命を閉じることになる。彼女のすべての言葉も無駄だった。 オセローは、一夜も一時間も猶予しない。祈りを捧げる時間も与えない。 デズデモーナを罪の最中に殺されなくてはならないと思い詰めているのだ。 そして怒り狂って、彼女を絞め殺す。 デズデモーナの喘ぎが終わるか終わらないかのうちに、オセローは自身の行為の恐ろしさに心が怯むが、もはや後戻りは出来ないのだ。
とうとうやってしまった! ついにデズデモーナを殺してしまった!!
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・四幕三場 城内の一室、デズデモーナに差し迫った破局が取巻いていた。 彼女は愛情のために死ぬことについて話す。 寝床には婚礼の時のシーツを敷いてくれるようにと頼む。 眼が痛むと、それが泣くことになる前兆だと考える。 彼女は夫の非難の言葉を考え続ける。 彼女は、世の中には思うようにならないことがあると知った。 これらのことを語るデズデモーナの言葉は、彼女の魂の清純さを表していた。 この場面でデズデモーナは、柳の詩を歌うのだが、シェークスピアの戯曲にとって不幸の前兆なのだ。
柳の花言葉には、「わが胸の悲しみ・愛の悲しみ」などがあり、女性にとってあまりありがたくない。 『ハムレット』のオフィーリアが溺れ死んでしまったのも、柳の木の近くだった。 よく柳の木の下に幽霊と言うけれど、その幽霊は、女の幽霊で、恋に破れた幽霊なのだ。 ただ、柳のためにことわっておく。 柳は、決して不幸な木ではなく、「自由・従順・素直」といった花言葉もあるからだ。 花言葉には、すべて2面性(いい意味と悪い意味)があると言うことだ。 これで四幕は、幕は閉じる。 ・五幕一場 サイプラスの街、ロダリーゴーが待ち伏せして、キャシオーに斬りつける。 しかし、キャシオーは、常に服の下に皮の鎧を着ているため失敗する。 そして、逆にキャシオーの反撃の方が強く、ロダリーゴーは傷つき倒れた。 イアーゴーは、ロダリーゴーの助っ人のため、近くに隠れ様子を伺っていた。 彼は、キャシオーに見られないように斬りつけるため、キャシオーの後ろから脚を斬った。 そして、どさくさに紛れて、ロダリーゴーにとどめを刺した。 幸か不幸か、キャシオーは、自分を刺したのが、イアーゴーだとは気がついていなかった。 ゆえにロダリーゴーが死に、キャシオーが重症なら、彼の陰謀は、計画通りに進んでいることになる。 ただ、イアーゴーにとって、キャシオーにとどめを刺せなかったのは、致命的だったのだ。
そしてクライマックスへ――
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城内の一室でオセローとエミリアが話していた。 オセローの悪夢を醒ます者は誰もいないのだろうか。彼の眼を真実に向けさせる者はいないのか。 この場では、その問いを答えるものがエミリアなのだが……
オセローが恐るべき行為に移る前にデズデモーナの侍女エミリアを訊問し、エミリアは、彼の疑っていることを否定する。 イアーゴーが注ぎ込んだ毒が効果を発揮する前に、オセローは、その証拠を掴みたいと熱望したこともあったが、既に遅すぎた。 完全に妄想に取りつかれている彼には、火に油を注ぐことになってしまう。 'I durst, my lord, to wager she is honest, Lay down my soul at stake: if you think other, Remove your thought: it doth abuse your bosom, If any wretch have put this in your head, Let heaven requite it with the surpent's curse ! For, if she be not man happy; the purest of their wives Is foul as slander.' (旦那さま、奥さまに限って間違いないことをお誓い申します。 わたしの命を賭けてお請け合いいたします。奥さまをお疑いなら、 そんなお考えをお捨てくださいませ。御心に背くことですわ。 どこかの悪党がそんなお考えを吹き込んだのでしたら、 そんな奴は楽園の蛇のように天罰を受けるがいい! あの奥さまがお心の清く、正しい方でないとしたら、 幸せな男なんてこの世に一人もございませんよ。どんな貞節な奥さまでも ふしだらな女ってことになってしまいますもの)オセローは聞く耳を持たない。 Othello: Bid her come hither: go.
{Exit Emilia.
She says enough; yet she's a simple bawd
That cannot say much. This is a subtle whore,
A closet lock and key of villanous secrets:
And yet she'll kneel and pray; I have seen her do it.
(オセロー:妻に、ここへ呼んで来い、早く。
〔エミリア退場〕
あの女もなかなか言いよるわ。だが、
あれくらい口が上手くないと、
取持ち役は勤まらんからな。ずる賢い女だ、
不埒な秘密の鍵を握っておる。
あれで、しおらしくひざまついて、祈ることもある。
そういうところを見たことがある)
エミリアがデズデモーナを連れて戻ってくる。デズデモーナにとっては、彼の身振りも言葉も怖い。恐るべき妄想が、彼をすっかり変えてしまった。 'Had it pleased heaven To try me with affliction; had they rain'd All kinds of sores and shames on my bare head, Steep'd me in poverty to the very lips, Given to captivity me and my utmost hopes, I should have found in some of my soul A drop of patience: but, alas, to make me A fixed figure for the time of scorn To point his slow unmoving finger at ! Yet could I bear that too; well, very well: But there, where I have garner'd up my heart, Where either I must live, or bear no life; The fountain from the which my current runs, Or else dries up; to be discarded thence ! Or keep it as a cistern for foul toads To knot and gender in ! Turn thy complexion there, Patience, thou young and rose-lipp'd cherubin,―― Ay, there, look grim as hell !' (それが神の思召しならば、 また、どのような試練を受けようとも、たとえありとあらゆる 苦悩と恥辱の雨をこの頭上に降らせようとも、 貧苦のどん底に沈み、窮乏に責め立てられようとも、 奴隷の身となり、生涯のすべてを引き渡そうとも、 私の心のどこかに、その苦しみを耐え忍ぶ 辛抱のひとかけらを見つけるだろう。しかし、それが世間の 嘲笑の的となり、人に指差される身になるとは! だが、それも堪えてみせる、立派に堪えてみせよう。 しかし、私の心に大事にしまっておいた、それを頼りに生き、 それを離れては生きられぬ、と決めたこの場所、 その生命の泉から湧き出す水しだいで、私の命の川は潤いもするし、 涸れもする、それを、そこから放り出されてしまうとは! また、その場所を不潔なガマが交尾したり卵を産んだりする池にしようとは! そうであるならば、初々しい薔薇の唇の天使である忍耐よ、 私の形相を変えろ―― そうだ、悪魔の顔となれ!) この後、売り言葉に買い言葉で、かなり下品な言葉飛び交うが、割愛する。
とても書けない。言葉の暴力であるんだよ。 そしてオセローはまたもや飛び出して行ってしまった。 ここで入れ替わるように、イアーゴーが登場し、自分が作り出した状況を楽しげに眺めるのだった。 しかし、イアーゴーは、油断しない。 いち早くことを片付ける必要があると考え、ロダリーゴーにキャシオー殺害を持ちかける。 つまり、オセローには訓示がきて、アフリカ行きを命じられたと言い(本当はヴェニスへの帰還)、妻のデズデモーナも同行する。そうなれば、二度とデズデモーナを口説くチャンスがなくなる。
しかし、今ここで事件が起これば、足留めを喰らうので、時間稼ぎができ、まだチャンスが残っていると言いくるめるのだ。 そして、そのためには、オセローの変わりにこの地の長官の職に就くキャシオーを殺害してしまうのが、最も効果的であると。 ロダリーゴーは、イアーゴーに言いくるめられて、キャシオー殺害を承諾してしまった。 普通に考えれば、どんなにひいき目に見ても、殺人を犯した者を、しかもキャシオーを殺した奴をデズデモーナが、振り向くことがないなんて、考えれば分かるものだよね。
しかし、悲劇、分からないのだ。 そしてイアーゴーは、内心でキャシオーのみならず、ロダリーゴーまで亡き者にしようと企むのだった。
そうとなればイアーゴーが、長官職を手に入れることは、容易なこととなる。 |








