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「ゼウスの義理の母は、山羊だった」 アマルテイアの話をするには、ゼウスの幼い頃のことを知っておく必要がある。 空と山の頂を領分とする全能神・ゼウスは、生まれるとただちに母のレアーの手によってクレーテーの王・メリッセウスの娘たちに預けられた。 なぜかといえば、父親のクロノスは、子供たちが自分を滅ぼすのではないかと恐れ、生まれてくる子を片っ端から飲み込んでいたからだった(だったら子供を作るんじゃありません)。 娘たちは、ゼウスをリュクトスの洞窟に隠し、クレーテー島にあるイーデー山腹の牝山羊のお乳を与えて育てた。 つまり、ゼウスは狼に育てられた「狼少女」(熊少女というのもいた)の話じゃないけど、「山羊少年」だったというわけ(ジャイルズの幻想小説にあったような)。 もしかして、ゼウスって歩くとき、四つんばいで獣のような歩き方をしたのかも。狼ならまだしも山羊じゃ…… 。草を食むのが好きだから、超ベジタリアンだったりして…… 。まあ、迫力に欠けることおびただしい。 話が横道にそれた。 そうです。この牝山羊こそが、アマルテイアなのです。幼いゼウスは、この山羊を義母だと思い込んで、すっかりなついていた。そしてアマルテイアも、この赤子をたいへん可愛がりやさしく接した。 そんな温かな心持った義母に、ゼウスは深く感謝し、3つの名誉を与えたという。 まず、彼女の死後、皮をゼウス自らの盾に張るのに用いた。この盾は、聖なる「神盾」として、知恵の神・アテーナーに与えられる。 槍と盾をもつ勇ましい姿は、アテーナーの偉大さを人々に印象付づける役割をした。自慢の娘に持たせる盾をアマルテイアの皮から作らせたというのは、ゼウスの彼女に対する並々ならぬ感謝の気持ちを表しているのではないだろうか。 そして角は、ヘスペリデスの園から取った黄金の果実で満たした。この果実は食べてもまた元に戻り、常に満ち溢れたままの不思議な果実。 これを称して「豊穣の角」といった(これには別の説があって、河の神・アケローオスがヘーラクレースに角を折られナイアデスによって神に捧げられ、豊穣の女神が、その角を受け取ったことから豊穣の角という)。 そして、3つ目の名誉として、ゼウスは山羊を星に加えた。星占いで知られる「山羊座」がアマルテイアなのだ。
山羊座生まれの人は、誕生日が来るたびに、思い出してほしい。ゼウスの愛情が星ぼしの中で、永遠に輝き続けているということを(もっとも、山羊座については、別の伝説のあるのだけれどね)。 |
ギリシャ神話
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ギリシャ神話体系
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「望んだものがすべて手に入るわけではない」 オーリーオーンはギリシャ神話きっての美男子で、名狩人だった。しかも父親は、ポセイドーンとあっては、世の女の子が放っておくはずがない。 名門のボンボンのオーリーオーンは、自分の魅力を十二分に理解していて、女の子をナンパすることにも名狩人だったのだ。 彼が狙えば、望みのほとんどが叶えられるので、当然彼は、すこぶるプライドが高かった。彼の相手は、人間、ニュムペーたち、女神たちなど様々。 「チッチッ、君たち。狩人が獲物を逃がしたら、廃業すべきさ。僕の場合、完璧だけど」 なんてぬかし…… 、いえ、仰っていたらしい。 そんなオーリーオーンの心を敗北感で満たして、初めての挫折を味あわせた娘たちがいた(ザマーミロ…… 、オホン、失礼しました)。 アトラースの七人の娘たち、プレイアデス(ちなみに、これは彼女たちの総称です)だ。 オーリーオーンは、追っかけた。武道館の楽屋口や雨の日のテレビ局でスケジュールをつかんで、先回りしている追っかけのように(その手の人たち、ゴメンナサイ)。 野を越え、山を越え、川を渡り、海を渡って、林や森を抜け、走りに走って、隠れて、待ち伏せをして、彼女たちを追いかけた。 されどプレイアデスは逃げる。どんどん逃げる。ひたすら逃げる。どこまでも、果てしなく―― 。 彼女たちは、純潔を守ろうとして固く誓っていたのでオーリーオーンでなくても、同じであったかもしれない。 そして彼女たちは、ゼウスによってさらわれてしまい、夜空の星にされてスバル星団になってしまったのだ。 オーリーオーンは、負けた。初めての敗北。信じられなかった。しかし、しかしだ。彼は、ただでは起きなかった。 この後、暁の女神・エーオースと結ばれる(だから、美男子って奴は…… )。エーオースはオーリーオーンに早く会いたくて夜明けの時間が短くなった。 月の女神・アルテミスは、どうして彼女が、そんなに急ぐのか不審に思い、覗きに出かける。アルテミスは、なんとオーリーオーンを見るや否や、一目ぼれしてしまったのだった。 オーリーオーンのほうも、アルテミスが狩りの女神でもあったので、ともに野を駆けたいと考えて、あっさりとエーオースを捨ててしまう(だから、美男子って奴は…… )。 ところが、これに怒ったのが、妹のアルテミスをとられたアポローンだった。彼は、曾祖母のガイヤをけしかけて、巨大なサソリにオーリーオーンを襲わせる。 サソリは、オーリーオーンを海辺まで追い詰めたが、海の飛び込まれて取り逃がしてしまう。しかし、アポローンは、あきらめずに妹を利用することを考えたのだ(悪どいぞ、アポローン)。 アポローンは、妹ではあったけれど、アルテミスのことが好きだった。だからオーリーオーンを許すことができず、さらに自分を裏切った(たぶん自分勝手な思い込みだと思う)妹にも悲しい目に遭わせずにはいられなかったのだ(なんか、昼メロみたい)。 アポローンは、海岸へ妹を連れていき、遠くの海面に浮かぶ人の頭を指して言った。 「あれは、お前のニュムペーを襲った野蛮な賊だ」 アルテミスは、銀の弓に銀の矢をつがえて、男の頭を見事射抜いた。その男こそ、オーリーオーンだったのだ。
まもなく真実を知ったアルテミスは、オーリーオーンを海から引き上げて、夜空の中で狩りが永遠に続けられる場所に置いた。 そこは、スバル星団となった娘たちを追い、サソリ座が夜空に現れる頃には水平線に沈むという場所だった。 そして、オリオン座は今でも、夜空に輝いている。 |
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「心優しき巨人の男、星となる」 ヘスペロスは、巨人アトラースの息子。ヘーラクレースの物語に出てくるヘスペリデスの兄弟でもある(アトラースを参照してください)。 ヘスペロスは非常に賢くて優しい親切な巨人で、人々からこよなく愛されていた。でも、人に好かれるという人物は、ギリシャ神話には滅多にいないこともあって、彼の人気を嫉妬する神もいたのだ。 「別に憎むとか、羨むとか全然してませんよ(ご本人の希望により一部音声を変えてございます) この嫉妬は、ついには殺人未遂事件にまで発展する。 ある日、ヘスペロスが山登りをしていると、件の神が目ざとくそれを見つけた。一思いに殺してしまおうと思ったその神は、強い西…… オホン、か、風を送って彼を吹き飛ばしてしまう(危うく暴露しまうところでした)。 このままでは地面に激突して、哀れヘスペロスは木っ端微塵に、しかし、この殺人は未遂に終わった。 木の葉のように天を舞うヘスペロスを見かけたのがヒヒ爺こと全能神ゼウス。それではいくらなんでも可哀想だと、彼をそのまま天空へ上げることにした。 かくしてヘスペロスは、夜空の中にあってもひときわ美しい星となった。その星の名は、宵の明星、金星というわけだ。 珍しくゼウスの善行が光るエピソードだが、ヘスペロスを殺そうとした犯人は判らずじまい(限りなく黒に近い人物はいるが、推定無罪ということで……)。結局、迷宮入りとなってしまった。
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「ゼウスのお気に入りの美少年。曙の女神にも愛される」 ある日、曙の女神エーオースがトロイアの王宮を覘いてみた。すると愛らしい美少年が眠っているではないか。 あまりの美しさに自分を抑えられなくなったエーオースは、この美少年ガニュメーデースをオリュムポスへさらってきてしまったのだ(前にもこんなことがあったような『ケパロス』のところをご参照ください)。 以来、ガニュメーデースは、オリュムポスの神々に気に入られて、やがてゼウスの給仕人となった。 ゼウスの給仕の中で、特に名誉とされていた酒盃に酒を注ぐ係(酌人)に就く。 ところが誰からも愛されていると思われていた彼を憎む神さまがいた。ゼウスの妻ヘーラーだ。 彼女が怒ったいるというと、ゼウスが浮気をしたのかと思うかもしれない。しかし、あのスケベ爺も男に果てを出さなかったみたいだ(だしたという説もあるけれど)。 ゼウスの酌人は、元々ヘーラーの娘ヘーペーに任されていた。娘の名誉ある仕事を奪った憎い奴、と言わんばかりに、この美少年を殺してしまおうと思ったのだった(おー、こわっ!)。 それを知ったゼウスは青くなる。ヘーラーの嫉妬深さには、何度となく痛い目にあっている(と言っても元を糺せば、お前が悪い)。 ガニュメーデースの身を案じたゼウスは、彼を夜空に輝く星にした。それが水瓶座である。 そしてガニュメーデースに恋をしていたエーオースは、曙の朝日が訪れる前に、水瓶座に回り道をするようになったという。
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「うちらは陽気な三姉妹。ちょっと危ない物語」 年末やら受験のときだけ皆々が口々に祈りの声をあげる。 「運命の女神さまっ、微笑んでください」 ところが、この運命の女神さまは、神話業界のアイドルみたいなもので、少しばかり、いやっ、かなりプライドが高く、ちょっとやそっとじゃ見向きもしてくれないのだ。 “運命の女神”という三人のユニットを組んでいるのは、クロートー、ラケシス、アトロポスの三姉妹。彼女たちのライバルは、その名も“復讐の女神”たち。 母は、必然の女神・テミスで、幼い頃より ――そんなの必然よ―― という言葉で厳格に育てられる。 この三姉妹には不言実行、母の命令は絶対だった。そのように運命づけられていた。 三人は、それぞれ仕事を分担していて、クロートーは機で、人間一人ひとりの命の糸を織る。ラケシスは紡がれた糸を測る。 「ちょっと長いわね。アトロポスお願い」と彼女が言うと、アトロポスがはさみを手に持って「このぐらいで良いかしら」と、チョッキンと糸を切る。 すると人間界のどこかで、名もなき人が心筋梗塞か何かでバッタリ、死んでいく(デスノートみたいに)。 こんなことを繰り返す恐るべき三姉妹、それが運命の女神たちなのだ。 「今日は、なんかムシャクシャするわね」と、そのストレスのはけ口が、この“糸チョッキン”だというからいい迷惑だ。 特にアトロポスは気性が荒くて、年中ムシャクシャしていたらしい。 「ああーっ、なんか腹立つ! あんな赤い糸、チョッキンしてやるわ!」 すると、幸福な二人は、突然別れるのだ。神話業界では、一番に恐れられている娘である。 しかし、後の二人も、実はアトロポスに引けをとらないほどコワイ。 「あ〜っ、ここ糸ほつれちゃった…… まぁ、いいっか」(良くない!) と、おっちょこちょいのクロートーは、いい加減に糸を織る。すると、まだどこかで誰かの運命が狂わされていく。 「わたし、不良品は嫌いなのよね〜。ちょっと短いけど、アトロポス、ここで切ってちょうだい」(お〜い) 真ん中のラケシスは、変に職人気質なところがあって、常に完璧を目指そうとする。そのために、どのくらいの人が命を縮められたであろうか。 こんな三姉妹に世間は甘く、神々は彼女たちにおべっかを使っては、運命を都合の良いように変えようとする。
なぜなら、彼女たちの副業は予言だったからである(自分たちで未来を紡いでいるのだから、的中率100%に決まっている)。 贈り物は貰いたいほうだい。必然の女神の元で厳しく育てられたが(多分育て方に誤りがあったのではないかと思うが)、結構楽しく生きている三姉妹だった(その分、周りは迷惑を蒙るのだけれどね)。 |






