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『シャーディック』下、リチャード アダムズ著、神宮輝夫訳、評論社 <あらすじ> シャーディックに導かれたオルテガ人たちの怒涛の進軍に、あっという間に首都ベラクは陥落し、彼らは念願のベラク奪還を果たしたのだった。 シャーディックを発見した狩人ケルデレクは、祭主王としてベラク帝国を治める。しかし、南の諸州は異民族の力が残っていて、5年以上にわたる紛争を繰り返していた。 そんな折、一人の領主エレロスが謀反の心を抱いて、首都ベラクを訪れるのだった。 主人公ケルデレクが、シャーディックとの出会いによって数奇な運命をたどっていく壮大な物語である。 <感想> アダムスの話を幾つか読んで気が付いたことですが、彼は登場人物に苦難を与えるとき、必ず血が流れます(その人物が怪我をする)。 特に主人公は、何かあるごとに怪我を負うので、いつも傷だらけなのです。これはイエス・キリストの受難をイメージしているのではないかと感じるほどです。 この『シャーディック』は、主人公ケルデレクの数奇な運命、シャーディックに翻弄されて受難し傷ついていく姿は、キリスト教文化における信仰心をテーマにしているのではないかと強く感じました。 カテゴリーは児童文学となっていますが、テーマ内容としては、重たい感じのする作品です。
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リチャード・アダムス
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イギリス文学
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『シャーディック』上、リチャード アダムズ著、神宮輝夫訳、評論社 <あらすじ> 架空の大陸ベラク。かつてこの広大な土地を支配していたオルテガ人は、異民族の侵入を赦し北の辺境である大きな河の中洲へと追いやられてしまう。 しかし、いつか彼らの元に神は、使いである巨大な熊シャーディックを遣わし、ベラク帝国を取り戻してくれるという伝説が残った。 シャーディックの伝説を祭る信仰クィソが女司祭ツギンタによって代々伝わり、取り仕切っていた。 そして時代が過ぎて、中洲の北側の未開の森林地帯で大火災が起こる。 火事に追われた1頭の巨大が熊がオルテガ人の住む中州へと泳ぎつき、狩人ケルデレクが偶然にも最初に発見する。 彼は、この事実をクィソの女司祭ツギンタであるサジェットへと知らせるのだった。 シャーディックの出現は、オルテガ人を動揺させ、熱狂的な意思のもと、かつての自分たちの土地だったベラク帝国の首都ベラクへと軍勢を侵攻させる。 ケルデレクは、神の力としてのシャーディックに魅せられて…… 主人公ケルデレクが、シャーディックとの出会いによって数奇な運命をたどっていく壮大な物語である。 <感想> 『ウォーターシップ・ダウンのうさぎたち』に続くリチャード アダムズの2作目の長編小説。アダムスは、動物ものの作品が得意で、基本的に動物たちが主人公であるのですが、本作品は巨大な熊にであることで大きく運命を翻弄される狩人ケルデレクが主人公になっている。 一応、児童文学というジャンル分けになりますが、内容は大人でも十分に楽しめるもので、ネイティブアメリカンの雰囲気たっぷりです。 アダムスの物語構成の仕方は絶妙で、読者を飽きさせず、最後までどうなるのか分からないという、ハラハラドキドキの展開が楽しめます。
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『鉄のオオカミ』 夢の冒険<2>、リチャード アダムズ著、井辻朱美訳、新書館 <あらすじ> 「鉄のオオカミ」をはじめ、10の短編が収められている。 ・「鉄のオオカミ」 (契約どおりにオオカミは襲ってきた。結婚式は大変なことに) ・「カラスよ月の光」 (エスキモーために、カラスは光を盗んでくる) ・「蛇のおくりもの」 (動物の言葉がわかるようになった羊飼い) ・「おしゃべりなキツツキ」 (キツツキが、なぜ長いくちばしで木を突きまわすようになったのか?) ・「月に行ったネズミ」 (月はチーズの岩山とおいしいクリームの湖だった。しかし月の猫がいた) ・「目の見えない少年と犬」 (愛犬ファンと一緒に苦難を乗り越えた少年の放浪記) ・「タヒチの大ウツボ」 (さんご礁の島々にココナッツが実るようになった伝説) ・「神さまの絵の具箱」 (ナイティンゲールが、あんなきれいな声で鳴くようになったのは?) ・「コマドリ」 (コマドリの胸が赤いのはなぜか?) ・「王子と魔法の馬」 (王子は馬の知恵で、永遠の若さを手に入れたが――) <感想> 短編の作品は、結末(オチ)がしっかりしていないと、面白さが半減してしまう。その点、本に収められている10篇の作品はしっかりとしていて、どれも面白い。 前作の『コルサンの岩山』と同様に挿絵の出来が良い。 収録されている作品は、そのままの民話・童話を載せているのではなくて、どの作品にも語り手を設けて、独自の味付けをしている。まさにアダムス風であり、前作品と同じく、テクスト理論に基づいた創りとなっている。 巻末の訳者のあとがきがで、アダムスとトールキンを比較しているのが興味深い。
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『コルサンの岩山』 夢の冒険<1>、リチャード アダムズ著、井辻朱美訳、新書館 <あらすじ> 「コルサンの岩山」をはじめ、9つの短編が収められている。 ・「コルサンの岩山」 (コウノトリの尾はなぜ短くなったのか?) ・「スタン・ボロヴァンと竜」 (頭も使いようでドラゴンを退治できる) ・「名は身をたすける」 (カニは英語でクラブといいます) ・「赤いオウム」 (おしゃべりオウムが幸運をもたらす) ・「黒い犬」 (マン島の不吉な黒い犬を知っていますか?) ・「麦畑のネズミ」 (小麦畑を荒らすネズミの正体) ・「海の中のねこ」 (ネコが海へ入らなくなったわけ) ・「百回」 (森の農夫のとんちばなし) ・「いくつまで生きられる」 (人間の寿命と動物の寿命) <感想> それぞれの作品は、ウィットの富んでいる。個人的には「コルサンの岩山」、「黒い犬」、「いつまで生きられる」辺りが面白いと感じた。 イギリスを主に世界各地からの民話を元にし、アダムス風にアレンジしている。これは作者自身の言葉にもあるように、――民話とは、ある特定の時や所で、自発的に大きな声で語られるときがベストである―― という、テクスト理論に基づいている。 本の解説に荒俣宏氏が寄稿しており、興味深い。さらに児童書であるため挿絵が多く、しかもできが良くて出版社の意気込みが感じられる作品だ。
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『ブランコの少女』下、リチャード アダムズ著、百々佑利子訳、評論社 <あらすじ> アランとカリンの甘い日々が始まる。アランの周りの人々もカリンの魅力に惹きつけられていった。そして、彼女の思いもかけない大手柄…… 。幻の陶磁器「ブランコの少女」を思わぬことから手に入れたのだ。 二人の幸せな日々は、いつまでも続くかと思われた。しかし、不気味な出来事が次々と2人のまわりに起き始めた…… 。言い知れぬ不安に苛まれる2人。徐々に大きくなっている焦燥感と不安。 そして、突然のクライマックス―― 。 <感想> カリンという女性は、海のイメージ、もしくは陸に上がった人魚姫のようなイメージを持つ。波間に現れる泡のようだ。 美しくありながらも、どこか儚げで、ふっと風に消えてしまいそうな感じがする。 カレンは何かを隠していた。自分は罪深い人間であると自覚していた。そこから逃れるようにアランに寄り添った。 アランは、カリンという海を泳ぐ魚だった。まさに水を得たと言わんばかりに、彼女によって新たな世界を見ることになる。
彼にとって今のカレンは、自分の一部であるかのようになくてはらない存在となっていた。だから、カレンの過去に興味はなかった。というよりも、今のカレンを失うのが怖くて彼女の過去を詮索できなかったのだ。 |






