|
『チム・ラビットのぼうけん』 、アリソン・アトリー著、石井桃子・中川李枝子訳、童心社 <あらすじ> ・チム・ラビット (まだ小さくて幼いチム・ラビット。でもで好奇心いっぱいの彼は冒険好きで、野原に出ては、さまざまな出来事に遭遇する。にわか雨や雹、雷。それはチムとって初めての経験で、家に逃げ込んでは、お母さんラビットにしがみつく。その度に彼女は、チムに、それらのことを教えていくのでした。 ところがある日、チム・ラビットが遭遇したものは、犬だったのですが、そうとは知らないチムは……) ・チム・ラビットと はさみ (ある日、チムは草刈場で、人間が落としていたハサミを見つけました。それを拾って打ちに持ち帰って、お母さんラビットに『これは、何?』と聞きます。でも、彼女も知りませんでした。そこへお父さんラビットが帰って来て、大ハサミと分かります。これは便利と、彼らは色々なものを切っていきました。ところが、ある日、チムが……) ・チム・ラビットの うん (チムは、旅の途中のカッコウと出会いました。カッコウは世界中を飛び回ってたくさんの外国の話を聞かせてくれました。そしてカッコウの不思議な力を教えてくれたのです……) ・チム・ラビットと かかし (ある日、チムは麦畑で案山子と出会いました。その案山子の身なりはボロボロで貧相な姿です。『こんな姿ではカラスを追う払うことができない』と案山子は嘆きます。そこでチムが考えたこととは……) ・チム・ラビットの いえの がらすまど (チムが森を歩いていると、二つビカビカ光る物が落ちていました。それは何と人間が落していったメガネだったのです……) ・チム・ラビットと 三ばの カササギ (お母さんラビットが毛布の洗濯を済ませて枝に干して置きました。チムはそれが風に飛ばされないように見張ることになったのです。しかし、悪戯好きな三羽のカササギがやって来て、その毛布を持ち去ってしまったのです……) ・チム・ラビットの あまがさ (家の外は雨がザアザア降っていました。窓から外を眺めていると、一羽のアヒルのエミリーが通り掛かりました。彼女は水を弾く羽を持っているので、雨が降っても困りません。それを羨ましく思うチムでした。そこでチムが取った行動とは……) ・なぞなぞ かけた (チムは、学校の先生からなぞなぞの宿題を出されました。とても難しいなぞなぞです。そこでお母さんラビットやお父さんラビットに訊いて回るのでっすが、誰も答えが分かりません。そこで森中を歩き周りであった人に訪ねていきました……) ・チム・ラビットと あかちゃんぐつ (ある日、チムが畑を歩いていると、何か光る物が落ちていました。それは今まで彼が見たことのない物でした。家に持ち帰って、お母さんラビットに訪ねると、それは、人間の赤ちゃんの靴下だったことが分かります。そこでその靴下を返しにいくことになったのですが……) <感想>
アリソン・アトリーの代表作『ぐれ・ラビット』シリーズ、『サム・ビッグ』シリーズらの中一つ『チム・ラビット』シリーズの最初の9編が編まれている・ 子うさぎチムの発見と驚き、その成長を温かくとらえたお話を、石井桃子による訳と、中川宗弥の挿絵でおくるで飾られてる。 読み聞かせにぴったりのロングセラーで、好奇心いっぱいのチムは子どもそのものでありながらも心優しく、そして賢い。漢字には送り仮名を入れ、数も極力減らしてあるので、読み聞かせなら3歳から、自分で読むなら小学校低学年から楽しめる内容になっている。 |
アリソン・アトリー
[ リスト | 詳細 ]
|
『グレイ・ラビットのおはなし』、アリソン・アトリー著、石井桃子・中川李枝子訳、岩波少年文庫 <あらすじ> ・スキレルとヘアとグレイ・ラビット (むかしむかし、森のはずれの小さな家に野ウサギのヘアとリスのスキレルと小さな灰色ウサギのグレイ・ラビット住んでいました。 彼女らは、主食であるニンジンを近くの農家へ採りに出掛けていましたが、その度にお百姓さん捕まりそうになり、怖い目にあっていました。 そこでグレイ・ラビットは、農家のお百姓さんのようににニンジンを栽培する方法を森に住むカシコイ・フクロウに聞きました。しかし、フクロウは方法を教えるか変わりにグレイ・ラビットの小さな真っ白い尻尾を要求してきたのでした。) ・どのようにして、グレイ・ラビットは、しっぽをとりもどしたか (森のフクロウに取られてしまったグレイ・ラビットの尻尾はフクロウの家の扉の呼び鈴にされていました。 どうにかして尻尾を取り戻したかったグレイ・ラビットでしたが、妙案が浮かびません。 そこで可哀想に思った仲間たちが様々な方法で尻尾を取り戻す方法を考えたのです。 モグラのモルティは、尻尾の話を聞くと、何か思案をしながらその場を立ち去っていきました。 クレイバビットは風邪を引いた森のフクロウのために、風邪によく効くぷリムローズ酒を持っていたのですが、駄目でした。 次のスキレルが村のよろずやへいって、お店の呼び鈴を盗み出してきましたが、音が大きすぎて、フクロウの家の呼び鈴には仕えませんでした。 さいごの思案顔で立ち去っていったモグラのモルティが、地中に埋まっていた昔の銀貨を加工して鈴を作って持ってきたのです。) ・ヘアの大冒険 (大変な見栄っ張りで、お洒落なヘアは、実はとても臆病者で自分の家の敷地内から出たことがありませんでした。 そんな彼が、一年発起して隣町の沼に住むヒキガエルのトードに会いに行くことにしたのです。 道中に様々なことを経験したノアでしたが、やっとの思いでヒキガエルのトードの家まで辿り着くことができたのです。 ノアはグレイ・ラビットに頼まれていた泡立て器をトードに渡しました。トードはお礼に、毒薬の瓶をノアに渡しました。 ノアは、その帰り道に、なんとキツネに見つかってしまい、夕飯に誘われたのです。ここままでは、いつか食べられてしまいます。あれやこれやと試しましがうまくいきません。 そこで最後の手段で、ヒキガエルのトードから貰った毒薬を香水と偽ってキツネに渡し、キツネはハンカチに毒薬とは思いもしない香水を鼻に近づけて臭いを嗅いだとたんに、気を失ってしまったのです。ノアはその隙に逃げ出しました。) ・ハリネズミのファジー坊やのおはなし (牛乳配達屋のハリネズミどんのは1歳の誕生日を迎えるファージー坊やがいます。ですから、今日はいつもより早く牛乳を配達に回りました。 すると、各家々から、その訳を聞かれ、みんなはファージー坊やのために卵をプレゼントされました。そうです。ハリネズミは卵が大好物なのでした。 そんなファージー坊やは、お母さんに頼まれたお使いの帰り道で、近くの牧場に住む飼い犬のスポットに見つかってしまい、犬の飼い主である少年に捕まってしまったのです。) <感想>
『グレイ・ラビット』シリーズは、アリソン・アトリーのライフワークとも呼べる作品集で、最初の出版から、彼女が亡くなる前年まで、およそ40年近く書き続けられたシリーズです。 本作は、その最初の4編である『スキレルとヘアとグレイ・ラビット』『どのようにして、グレイ・ラビットは、しっぽをとりもどしたか』『ヘアの大冒険』『ハリネズミのファジー坊やのおはなし』が収録されています。 のちBBCラジオにて放送されるなど、彼女の代表作となりました。生き生きとした擬人化された動物たちの個性が光る作品です。 |
|
『氷の花たば』 、アリソン・アトリー著、石井桃子・中川李枝子訳、岩波少年文庫 <あらすじ> ・メリーゴーランド (イギリスのペンという小さな村に年に1回、サーカスのキャラバンがやってきます。村に住む兄弟のジョンとマイケルは、キャラバンのリーおばあさんから、不思議な呼び子を貰う話) ・七面鳥とガチョウ (農場での暮らしに厭きた七面鳥は旅に出ることにしました。旅の道中で、ガチョウやコブタ、プディング、キジたちと出会い、今は廃墟となった城跡を目指しますが、そこは盗賊たちの根城になっていたという話) ・木こりの娘 (森の奥に住む木こりの夫婦に一人の娘が生まれます。彼女は成長するととても器用ぶりをみせて、編み物や仕立物をして生計を立てていました。そんなある日、炎が燃え盛る家の暖炉から、一匹の金色の熊が現れて、彼女にイラクサの上着を仕立ててくれるようにと頼んだ話) ・妖精の船 (少年トムの父親は船乗りでした。年に数回しか家に帰って来れない父でしたが、いつもたくさんのお土産をトム持って帰って来てくれました。そして父が帰ってくるクリスマスの日、岸辺に迎えに行ったトムは、不思議な光景を目にする話) ・氷の花たば (トム・ワトソンは激しい吹雪の中を家に向かって急いでいましたが、道に迷ってしまい、彼は極寒の中で死を覚悟したとき、不思議な男に出会います。その男のおかげで、トム・ワトソンは一命を取り戻し家へたどり着くことが出たのです。トム・ワトソンは彼にお礼を申し出ました。すると彼は暖炉の近くにあるバスケとの中になるものと申し出たのです。いつもならたいしたものが入っていないバスケットでしたが、トム・ワトソンが家に戻って見てみると、バスケットの中には一人娘のローズが入っていたのですという話) ・麦の子ジョン・バーリコーン (とても慎ましい暮らしをしていたおばあさんが、道端で一つの不思議な卵を拾います。やがて卵から孵ったものは、鳥ではなくて金色の妖精のような子供ジョン・バーリコーンでした。そして彼は不思議力を持っていたという話) <感想> 前回の『西風のくれた鍵』と同じく幼い子供を対象とした6作品をが収められています。 著作者であるアリソン・アトリーは、大変な努力家で、貧しいながらも3度の奨学金を得てマンチェスター大学やケンブリッジ大学へと進み、物理を専攻します。 本来であれば、科学者の道を辿るはずの彼女が作家へと転進したのは結婚がきっかけとなります。 家庭生活のうちに、彼女はひそかに、自分の心に刻まれた幼少時の思い出を書きつづった自伝的小品集書き始めたのです。 物理の研究をしていた彼女が、作家として成功できたのは、ある意味不思議といえるかもしれませんが、おそらく物理という学問を探求していく中で、彼女なりの生命との根源とか、自然のうちにい潜む永世といった哲学を獲得していったのではないかと思うのです。
|
|
『西風のくれた鍵』 、アリソン・アトリー著、石井桃子・中川李枝子訳、岩波少年文庫 <あらすじ> ・ピクシーのスカーフ (動物たちの言葉がわかる不思議なスカーフを拾った男の子の話) ・雪むすめ (少年の作った女の子の形をした雪ダルマを北風が雪と氷の国へ持ち帰る話) ・鋳かけ屋の宝もの (小さい町々を鍋やヤカンを直して回る貧しい鋳かけ屋が手に入れた宝ものの話) ・幻のスパイス売り (異国の香りを運んでくるスパイス売りのおばあさんの話) ・妖精の花嫁ポリー (ピクシーに見そめられて花嫁になった人間の女の子の話) ・西風のくれた鍵 (西風のくれた鍵で木の秘密を知った少年の話) 人間と妖精との交錯した不思議な世界を描いた自然の息吹にみちた美しい6つの物語。 <感想>
それぞれの作品には、著者アトリーの成長期に深く心に刻まれたイギリス・ダービーシャーの情景を思い浮かぶような自然の営みを題材にしていながら、不思議な世界観を持った作品です。 アトリーの作品には、『グレイ・ラビット』シリーズのような幼い子供を対象としたものと、年上の思春期の少年少女を対象としたもの、大人向けのエッセイと、その幅の広さは驚くばかりです。 しかも読者対象の年齢が高くなるにつれ、文体や登場人物の性格も複雑になり、奥行きの深いものになり、彼女の作家としても資質の豊かさ、技術の確かさを示している。 今作の『西風のくれた鍵』は、幼い子供を対象としていますが、彼女のもつ自然観というものがあふれていて、現代の大人が読んでも楽しめるのではないかと感じます。 |
|
『時の旅人』、アリソン・アトリー (著)、松野 正子 (翻訳)、岩波少年文庫(出版) <あらすじ> 少し病弱なペネロピーは、喧騒なロンドンを離れて、伯母の住むサッカーズ農場にやってくる。 サッカーズは、何百年も前からつづく農園で、荘園屋敷には昔のものが数多くあった。外は斜面に広がる畑や小川、牧草地に囲まれ、自然にあふれていた。 伯父のバーナバスや伯母のティッシーも好い人たちで、ペネロピーは次第に健康をとり戻していく。 そんなある日、古い屋敷の廊下の突き当たりのドアを開けると、16世紀の貴婦人たちがいた。 16世紀のサッカーズ農場の主だったアンソニー・バビトンが、囚われのスコットランド女王メアリー・ステュアートを秘密のトンネルを使って助け出そうとした事件に巻きこまれていく。 時の壁をこえて、現在と過去を行き来する少女が見た歴史の真実とは…… <感想> 作品に登場するサッカーズ農場は、著者のアトリーが実際に18歳まですごした場所で、農場の様子を作中から、自然にかこまれた農場と、そこでの暮らしが、彼女にとってかけがえのない大切なものであったと容易に想像できます。 それほどまでにからだ全体で感じとった空気や土に水、花や木や草など、とても丁寧にくり返しくり返し愛情をこめて書かれています。 それを読むことで、読者自身のなかに眠りがちな感覚を活き活きと目覚めさせてくれる。それがアトリーの作品の魅力ではないでしょうか。 主人公のペネロピーは、多感な11、12歳〜13、14歳くらいの物語で、アンソニー・バビトンのトンネル事件に巻き込まれていく中で、彼女の精神的成長を描いています。
この事件は、失敗に終わることを知っている彼女は、そのことをアンソニー・バビトンの家族たちに話すことができず、苦悩していく…… 。 そして結末へと物語りはゆっくりと進んでいきますが、できれば終わってほしくはなかったと感じる作品でした。 |






