☆ニーチェの髭こと、物かき屋・凛 七星の隠れ家ブログ☆

ただいま『競艇放浪記』と『追憶〜メモワール』のみ公開しています。最新記事か書庫よりどうぞ。

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三月の東京方面での滞在中、時間を見つけて競艇場めぐりをしたが、首都圏

周辺の本場で最後に訪れたのが江戸川だった。その夜は浅草あたりで昔から

つきあいのある悪友と、ひさしぶりに呑む約束をしていたので、行動範囲を

考えると江戸川の本場には、その日に行くのが都合よいと考えていたのだ。

よく「東京は田舎者の集まり」といった揶揄があるが、確かにそういう側面は

なきにしもあらずだ。なにしろすべてが東京中心にという一極集中の構造が

歴然とある。地方の人にすれば「とりもなおさず行かねば」ということになる

のは、いたしかたない。そして大都市の圧倒的なポテンシャルに気圧されて、

コンプレックスから肩の力を入れ東京に馴染もうとする姿が、滑稽に見えて

しまうのである。とくに「うちらんとこがホントの都。いまは東京にやらせて

あげてる」という京都や「中央がなんぼのもんや。ワシらはワシらで、権力に

おもねんと勝手にやっとるわい」な大阪などは、歴史的な背景もあって独自の

文化圏や価値観を持っているから、東京に対して一線を画したものを持って

いるのと、対抗意識も働くせいでそんな視線と態度を見せがちだ。何が言い

たいかというと、けっきょく文化だ美意識だというものは豊かさの中でしか

生まれないし、洗練されないということだ。江戸では「いき」上方では「すい」

と呼ぶ「粋」さは、そんなところから生まれる。ちなみに筆者は京都の出身で

大阪に長く住んでることもあって、冒頭のような斜に構えた東京観はあるの

だが、根っからの江戸っ子たちがいる下町エリアに関しては別で、そこには

都会の粋さを感じるし、センスもよいとおもってる。そして居心地もいい。

だから江戸川競艇場に行く日の予定は、とても楽しみにしていた。しかし、

こんなふうに書くと、読んでくれてる人の中には反感を持つ人もいるだろう

なぁ。まぁ、いいや。


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江戸川の本場までは都営・新宿線で船堀駅まで行き、そこからは例のごとく

無料送迎バスに乗った。それにしても乗客の顔ぶれは年齢層がかなり高い。

競艇ファンは年齢層が高いが、とりわけ高い感じを受ける。ハッキリ言うと

爺さんばかり。わたしなんかは比べたらハナたれ小僧みたいなもんである。

そんな爺様たちが喜々とした顔で、その日のレースについて語り合っている

様子は、どうにも微笑ましく感じてしまった。あっという間に本場へ着くと、

入場ゲート前で大魔神の巨大フィギュアが出迎えてくれる。中に入るとすぐ

展示ケースに飾られた、昔のペコちゃんやビクター犬の人形が目に入った。

懐かしくなって少し眺めたあと、足を進めると場内の至る所で昔の名作映画

の、いまではすっかり廃れて見られなくなった絵看板が飾られている。邦画、

洋画の懐かしい場面や、俳優たちの顔が並ぶ様子には、オールドファンなら

涙ものだろう。ボートレースは横に置いて、これだけでもなかなか楽しめる

ものである。そして、やはり客層は圧倒的に爺様世代。戸田で総理大臣杯を

やっている裏の一般戦、いわゆるヒラ戦というのもあるだろうが、なにやら

勝負より集会所でのおしゃべりを楽しむみたいな雰囲気に、博打の緊張感と

いうものが著しく欠けている。中には場外発売の戸田とレースを放映してる

モニターと、江戸川の水面の両方に血走った目を配らせるオヤジたちもいる

にはいるが、大半がなけなしの僅かな年金から工面した百円玉で遊んでると

いった老人たち。どうにも調子が出ないまま2レースほど打ってみたものの、

まるっきり目を外した結果に「い、いかんがー。って、いたな昔そんな名前の

マラソン選手。じゃなくって、ちょっと気分転換でもしなきゃね」と、屋上が

公園のようになってるので、風に当たろうと上ってみた。芝生や植木のある

中に並べられたベンチに腰を下ろすと、遠くに東京の新しいランドタワーと

なったスカイツリーが望めた。春らしい暖かな陽射しに包まれ、焼きそばを

頬張るガソリンをがっつりキメた、少し赤ら顔のゴキゲンな初老の男が

「いい天気だねぇ」

と話しかけてきたので、わたしはオトナな対応で差し障りのない微笑みと、

挨拶めいた言葉を返した。荒川の流れを堰き止めることなく作られた、日本

で唯一の流水面競走コースの端には、なんと定期便のポンポン船がゆっくり

と航行する。その曳き波のせいでレースが中断するのはファンの間で知られ

るところ。せっかく気分を変えようとおもったのに、まったくの逆効果では

ないのな、まったり状態にわたしは陥ってしまった。さりとて、ここで稼が

ないと、その夜の呑み代も大阪へ帰る足代も心許ない。ままよと、これまた

他の場では販売されていない日本酒でぐびりと喉を鳴らすと、勢いをつけて

勝負を再開した。


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しかし博打とは不思議なものである。日本酒のめぐりでレースの展開を深く

考えないで、単純シンプルな予想をしたのが功を奏し「あらら、また当たった

よ、ほっほっほ」ということに。そんなことで何度もつづけて換金した金を

財布に押しこんでいると、鼻先に安っぽい香水の香りが。ふと顔を上げたら、

そこには昔むかしあるところで…は、それなりのオネーサンであったかもな、

しかし、いまとなっては残念なことになってる初老の女性が、べったり塗り

まくって不自然に白い顔でウインクをするから背筋が悪寒でいかんことに。

「ねぇ、おにいさん。三千円でいいからさ。いいことしてあげる」

いや、もう、それはいいことも何も。わたしは見ざる聞かざるで、ただちに

その場から離れざるをえなかった。いや、それにしてもまだまだお盛んだ。

さすが粋である…よくわからんが。そうこうしているうち、あっという間に

最終レースの時間。江戸川のレースだけでなく戸田の方も打ったが、上々の

成績で余裕がかなりできたので「ここは一発、いきますか」と、かなり強気に

大きく張ったら、そんなアホな!展開になってしまって、あらららら。まぁ、

それでも勝ちは、このあと必要であろう分くらいを確保していた。わたしは

ハズレ舟券を食べてくれるロボット山羊ちゃんの口に、いましがた終わって

紙くずになったものを差し入れると、帰りはタクシーを使い駅まで向かった。



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浅草で待ち合わせていたので、約束の相手に「いまから行く」と電話をすると、

待ち合わせ場所にした神谷バーに入って、さっそくお先に一杯という次第。

ところで、この店は電気ブランというブランデーベースで作られる懐かしの

カクテル発祥地である。どうしてそんな名前がなのかというと、発案された

当時は電気が珍しかった明治時代で、例えば大正時代に流行した文化住宅・

文化包丁などの「文化…」、あるいは現代ならインターネットの普及につれて

流行した「サイバーなんちゃら」や「e-どうした」などと同じニュアンスで、

最新のものを表現する言葉として「電気」が流行していたのだね。それに原料

のブランデーの「ブラン」を合わせたのが名前の由来。まぁ、機会があったら

一度お試しあれ。話をもどして、間もなくやって来た友としばし神谷バーで

呑んだあと、河岸を変えて「浅草らしい」居酒屋で呑もうということになった。


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少し歩いて細い路地に入ったところに、ちょうどよい具合の寂れ感が漂った

赤提灯があったので、鼻を利かせて暖簾をくぐるとピンポーン!で大正解。

いい味の粋な店であった。すっかりヨレてる地元の常連客ともなじんでいる

と、わたしの携帯電話が鳴るので発信者を見たらば、なんと世界的に活躍を

する女性映画監督からでビックリ。ベルリン映画祭での受賞セレモニーから

帰ってきたところで多忙なのにも関わらず、オレとぜひ呑みたいので時間を

作ったという。なんともウレシイ話だが、先約の悪友と呑んでいる。彼女の

立場を考えて事情を説明すると、いっしょに呑んでもいいとの返事。それを

知った悪友は映画好きなヤツなので、とたんに瞬間凍結したみたいにカチン

コチンに緊張してしまって大笑いした。ふだんは粋がってるくせにと茶化し

たら「オレは福井県出身で平凡な家庭の子。おまえさんと違うのだよ」などと

ぬかしやがる。てやんでぇ、べらぼうめぇ。いや、使い方が違うぞ、それは。

ともあれ、やがて美人でチャーミングな才媛がおでましになると、予想以上

に悪友は固まったが、わたしと彼女がフランクな関係であるのを見て徐々に

打ち解けたら、一転して調子に乗って家で呑もうと言い出す始末。このへん

が、もう粋な適度さを欠くところ。監督さん、困った顔してるだろうがよ、

である。しかし、昔からの悪友関係ぶりをわたしたちから聞かされたことも

あって、了解してくれるところが粋だった。友人宅は日暮里駅のすぐ近く。

それなのにマンションの周囲には柳の木など緑に囲まれ、なかなかに風情の

あるロケーションで「粋じゃねぇか」であった。そんなこんなで、その夜は

長唄でも浅酌低唱して杯を重ねたいような、粋がいっぱいの楽しい夜だった。

あ、だからといって近くの吉原までは行ってませんぜ。



つづく……次は、いつ執筆して掲載できるかなぁ。


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ほほー。3000円で・・・ってそこ?(笑)

確かに東京はビル街よりも下町のほうが、本来の東京・・・
いや江戸!って感じがするよねー。
べらんめー口調の昔のおねーさんとかってカッコイイなーって思うしね。関西のパワフルおばちゃんと江戸っ子ねーさんは意外に気があったりする。
そして、映画監督さんや悪友さんとの宴も楽しげで何よりー
(= ̄▽ ̄=)V

2012/4/23(月) 午後 7:08 chie〜☆

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幅の広いお知り合いがいるのですね。
ある意味、感心。

2012/4/24(火) 午前 6:42 [ 答他伊奈 ]

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お早ようございます!
黄砂現象で太陽が霞んで、新緑の木々もこの霞空に若葉色として溶け込んでゆきそう。クヌギの幼葉がシャンパンの気泡に見えるのは私だけでしょうか。
わたしも京都生まれですから、斜に構えて見てるというたら見てる。でも大阪は東京に(言葉も住人も混在してきている)、東京は大阪に混ざりこんできている。(以前は関西弁つかったら笑われてけど、今や王道?ほんまの関西弁じゃないんですけれど。いい一日でしたね。ええ字養になりました。

2012/4/24(火) 午前 7:24 [ えっ!毎日が楽し ]

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おはよう〜(^^♪
なんかとても懐かしい文章を読んでいるようで、東京風景のレポート楽しかったよ!!
やっぱりたまには、凛君の文章を読みたいね(^^♪
全☆彡ポチ☆彡

2012/4/24(火) 午前 10:04 レイ

江戸川競艇は呑ん兵衛な博徒には天国!
他の本場だと、アルコール類は置いてあってもビールくらい。
ところが江戸川はビールに酎ハイ、日本酒と売っている♪
まぁ、それだけ観客が血の気のなくなった爺様が多いという
ことなんだろうけど 笑

2012/4/24(火) 午後 4:26 凛 七星

作中に登場する映画監督に「固有名詞は伏せてるけど勝手に
書いちゃって事後報告」と伝えたら「固有名詞もOK!」という
ウレシイ返事が。でも、それはちょっと…やめとくww

2012/4/24(火) 午後 4:43 凛 七星

作中登場の悪友からもTwitterのDMで「ワロタ!」と。
ネタにしてすまんww

2012/4/24(火) 午後 4:45 凛 七星

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酒なしでは見れないみたいにいわはるのでドキドキしましたわ。
面白かったです。神谷バー、私はずっと紙谷と思ってたんですよね。浅草はいいですね。どこやっけ、じじばばの原宿と言われてるとこ。朝はよからあいてて釜みたいに酒飲めて。粋なおっちゃんがおりました。
しかし3000円のおばちゃんがすごすぎるなあ。
監督って奈良の人でしょうか。もっと若い人だろか。へびいちご?
バックナンバーも覗きます。

2012/4/26(木) 午前 4:52 [ 針男 ]

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あの〜、本文とは関係のない話で申し訳ありません。
最近の幽玄佐東さんとのツイッターでのほのぼのとしたお話などを、ブログネタに頂戴しております。事後報告ですみません。
私は3月から幽玄佐東さんの観察ブログを書いております。
今後ともお友達の少ない幽玄さんと遊んでいただけますよう、お願いします。凛さんのご指導によりまして、少しでも幽玄さんが大人しくなってくれることを期待しています。

2012/4/29(日) 午後 1:45 [ - ]

私は、ハズレの紙を食べてくれる山羊が、気に入りました!
その隣のお姉さん・・・ニーチェさんとは・・・。

2012/5/9(水) 午前 8:19 つばき

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∧__,,∧
(´・ω・`)江戸川区の我家へ寄ってくだされば・・・
/ φ口o
しー-J

2012/5/9(水) 午後 4:53 日帰り温泉とグルメ


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