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列車が着いたのが上野駅だったのには驚いた。
てっきり東京駅へ着くものだと思い込んで居たのだ。
御昼過ぎの大阪発東京行の列車に飛び乗ったのだが
この列車は途中の米原で東海道線と別れ
日本海周りであくる日の11時過ぎに上野駅に到着したのであった
無賃乗車である。途中切符の点検で車掌が回ってきたが
この時は一目散にデッキへ隠れ避難した。
途中で列車がトンネルへ侵入した時は猛烈な煙にむせて
息が出来ず、死ぬかと思ったが窒息寸前にトンネルから抜け出し
なんとか、無事に生き返った。
上野駅では「切符は後ろが持っているから」と
言いながらニコニコして改札口を通過。
20mほど過ぎたあたりから、全速力で走って逃げた。
駅員が、何か大声で叫んでいたが、振り向かなかった。
気が付いたら、絵本で見たことの在る西郷さんの
銅像の前に立っていた。
見回すと、辺りには乞食や浮浪児ばかりだった。
何処かの田舎から出てきたのだろう
おのぼりさん風情の人が、ベンチへ腰かけて
おにぎりを食べていたが
横手からそのおにぎりを狙ってかっぱらいが
成れた手口であっという間に横取りし自分の口に入れてしまう。
目の前で手荷物をひったくられた老人を見た。
龍司はとっさに飛びかかって犯人を取り押さえ張り倒した。
すると間もなく、悪党の仲間らしい奴らに取り囲まれた。
いきなり「余計な邪魔するな!」
「見かけない野郎だな」と言いながら
20人程居ただろうか、全員で殴り掛かってくる。
彼奴等はかっぱらいや、強請で生計を立てているらしい。
久し振りに血が騒いだ。ここ何か月か溜まっていた鬱憤が
一気に噴き出した。10分ほどで粗方は殴り倒し
約半数のやつの顎を外した。
ほっとして気が付くと、数名の警察官に取り囲まれた。
警官は呆れていた。
「顎を外された奴から此処で事情聴取は取れないぞ」
「取り敢えず署まで同行して呉れ」
「言分は聴いてやる黙って付いて来い」と、言う。
自分では何も悪いことをした覚えは無いんだが
無賃乗車の弱みがあるので
此処は逆らうべきでないと考え、
おとなしく上野警察署へ同行した。
彼是事件の経過及び自身の身上調査聞き取りが終わった後、
「取り敢えず、此処で暫く待て」
「すぐに身の振り方を決めてやるから」と
地下にある留置場へ入れられた。
生まれて初めての豚箱入りである。中には3人の先客が居た。
「坊主。何をやらかしたんだ!」
「此処は天国だぞ、銀シャリが食えるんだ。」
「上野駅で捉まった闇屋の米が、溢れる程この警察に在るんだ」
「三食ギンシャリだぜ」
「娑婆へ出たってろくなものは食えないご時世だからな〜」
「何をやったか知らないが、ぺらぺら喋るなよ」
「一日でも長くいる事を考えろ!」
なんてこった。豪い事に成ったな〜。
ここで3日間留められた後、上野の児童相談所へ送られた。
上野児童相談所にも丸三日間間留められた。
本籍確認から始まって
現在に至るまでの経過聞き取り
学力検査・知能指数確認・性格診断・身体検査等々・・・
この結果により行き先が決まるらしい。
養護施設・教護施設・少年鑑別所・少年院・の、どれかだ。
龍司は練馬区にある養護施設・石神井学園へ送られる事に成った
「俺はこんな所へ入る為に東京に来たんでは無いぞ」
と思ったが、嫌も応も無かった。
講談社の絵本でしか見たことの無い皇居へ行きたかった。
銀座・品川・日本橋をこの目で見たかった。
龍司は入園3日目に石神井学園から脱走した。
何せ38度線を突破してきた人間である
こんな事はいとも簡単であった。
逃走途中の道側に、立派なサレジオ修道会の本部が在ったが
何の感慨も無く、見向きもしなかった。
延々と続く焼け跡で道を聞きながら歩を進めた
目指すは東京駅・皇居・銀座・である。
道中は総て歩きである。
無賃乗車の手も在るが、若し捕まって豚箱では堪らない。
石神井から4時間ほど歩いて東京駅に着いた。
夕暮れまでには今日の塒を見つけよう。
つづく
御一読有難う御座いました。
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18)初めての東京
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