|
10円札を輪ゴムで束ねて総額2万円を
龍司は川村のオッチャンへ差し出した。
「1万円はお世話に成ったお礼です」
「後のお金は日銭の稼ぎが無かった奴らに使って下さい」
眼をむいたオッチャンは、矢継ぎ早に質問する
「どうしたんだ!何処へ行くんだ!」
「大阪へ行きます」
「大阪で何か良い儲け話が在るんか?」
「金儲けではありません」
「大阪で、ベースボールをやります」
「なにお!馬鹿なこと言うな!」
「せっかく順調に稼げるように成ったのに、全部捨てるんか!」
「ヤメロ!考え直せ!戸田に誘われたのか」
オッチャンは薄々感づいたようだ
「戸田の馬鹿野郎も、明日出ていくと言って居たぞ」
「チェンジマネーの権利は如何するんだ!」
龍司は最近に成ってチェンジマネーで荒稼ぎをしていた。
進駐軍兵士たちは毎週木曜日が給料日であった。
週給である。給料は、毎週ドルで支給されるが、
日本国内で生活するには、
当然だが彼らは日本円に両替しなければならない。
此の頃のドル円相場は1ドル365円であった。
此れを龍司は390円で両替しドルを買い集めた。
此れが銀座PX周辺で評判を呼び、殆どの兵士たちは
金曜日の夕方には銀座に集まり、
靴を磨き、チェンジマネーをした。
このドル紙幣は、残らず闇屋の元締めが
10円上乗せして400円で買い取ってくれる。
当時は日本全国、物資不足であった。
砂糖・メリケン粉・石鹸・木綿・薬品・等々・・・・
然しドルさえ手に入れば、進駐軍やPXから
ふんだんに闇物資が横流しされ、手に入ったのである。
トラック一杯の闇物資は、即日完売出来た。
闇屋は大儲けである。
闇ドルの価格は日に日に高騰した。
終いには1ドル420円何て値が付いたが
龍司の1ドルからの取り分10円は不動であった。
今振り返って見れば、龍司は、11歳の頃から為替相場で
稼ぎまくって居たのだ。しかもその稼ぎ率は
現在を遥かにしのいでいるのには驚嘆する。
1000ドルで1000円稼ぎ
1万ドルの取引で確実に1万円を稼いでいたのだ
此の頃の龍司には、養子縁組の申し込みが殺到した。
有名な音楽家も会いに来たし
戦争で子供を亡くした方々も多かった。
中でも熱心だったのは
相撲部屋・闇屋の元締め・やくざの組長・達だった。
これ等を角の立たぬよう断るには難儀していたので
東京を一旦引き上げるのも潮時かなと考えた。
戸田は抜かりなく其処をついてくる
「今は引き時だぜ」
「どうしても戻りたくなったら、また来ればいいさ」
「銀座でひと暴れ何て何時でも出来るさ。」
戸田はニコニコとして悠然としている。
「明日は東京駅を出発するぞ」
「沼津の星井君もGOサインが出た!」
「明日は切符を買って汽車に乗ろうぜ!」
戸田の野郎威勢がいいが
俺の財布を当てにしてやがる。
腹は立たなかった。
つづく
|
20)さらばGI
-
詳細
全1ページ
[1]
コメント(8)
全1ページ
[1]








