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大和武尊の御陵・白鳥御陵・シラトリノミハカ
列車はいいよ東京駅を発車した。
見慣れた、有楽町や新橋が後ろへ後ろへと消えていく。
銀座も、当分さよならだな。ふと、景色が滲んだ。
「朝刊!朝刊!新聞ですよ!新聞要らんか!」
チビどもは、大声で囃し立てる。
浮浪児仲間の年少組6歳の4人であった。
「坊や、小さいのにえらいね〜」
等と声を掛けられ
あちこちで新聞は売れていく。
やがて品川を過ぎ川崎駅が過ぎた頃
「新聞の中身!中身です!中身要りませんか〜」
奴らがまたやってきた。
さっき買ってもらった新聞は外側だけであった。
今度は中身を買ってくれと言う。
奴らの考えだした商法であった。
定価で買った新聞を、定価で売ったって儲けは出ない。
中身が売れればもうけが出るのだ。
「おーい。こっちだ!中身を呉れ!中身が無くっちゃな〜」
龍司は大声で援護射撃をした。
「こっちも中身頂戴!」
人のいいお客さんの何人かは笑いながら買って呉れる。
餓鬼どもは龍司を見送る為に、この列車に乗り込んだようだ。
小田原で彼らは泣きながら別れのあいさつを済ませ
向かいのホームから、東京行の列車に乗り込んだ。
日当は稼げたようだったが、龍司は500円を持たせた。
彼らは乗車券を持っていない。
入場券で乗り込み同じ入場券で改札を出るのだ。
車掌は何時も笑って見逃して呉れていたようだ。
列車は沼津駅に停車した。
大男がにこやかに乗り込んできた。星井君である。
背丈は龍司と大きく変わらない180位か、
太い眉毛の下には大きな二重のどんぐり眼が在った。
笑うと笑窪が右頬にくっきりと浮かぶ。
大柄のわりに動きは俊敏そうである。
学年は龍司より一つ上だった。
ここ何年も負け知らずの剛速球投手なんだと
戸田から紹介された。握手をして驚いた。
自分より手の大きい奴に初めて出会ったのだ。
星井君もぎょ!としたようだった。
戸田は二人を無事引き合わせて
大満足なようであった。
「取り敢えず、此れで腹ごしらえと行こう!」
熱海で仕入れた名物のとんかつ弁当が
二つづつ前に置かれた。
二人に異存はない。
贅沢にお茶も添えてある。
琵琶湖の畔、大津駅で守備の名人泉君が合流すると知らされた。
公式戦エラーゼロのショートストップだと言う。
目指すは大阪の南河内
大和武尊の御陵の側にある養護施設「白鳥学園」であった。
此の頃の河内は、田舎だった。
闘鶏が盛んで、今東光和尚の肝いりで
八尾の浅吉売出し中
河内音頭で日夜どんちゃん騒ぎ
地元出身の漫才師、花菱アチャコは全盛期である。
河内桃子は新人デビュウー売出し中であった。
道明寺の丘では河内葡萄で賑わい。
富田林の山林では柿や松茸が豊作だった。
羽曳野丘陵は狐狩り、兎狩りで賑わい
藤井寺の奥の丘陵には大きな賭殺場が在り
羽生村の盆踊りは夜を徹して行われ
たいへんなにぎわいであった。
ま、一口に言って
上品な所では無かった。
この白鳥学園に全国から各種精鋭が集まって来るのだ。
「飯の食い放題・保証」
この言葉につられて
人材が集まった。
それ程世の中は飢えきっていたのである。
日本人全員が
腹を空かせて居た。
つづく
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21)汽車は大阪へ
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