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日本大学文理学部 地球システム科学科 のブログアーカイブ

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アンデスの旅 その14

 サンチャゴ中央駅から列車に乗り,私たちはチヤンをめざして一路南下した.車窓からみる冬景色は日本と変わらない.落葉樹は葉を落とし,草は枯れて黄褐色になっている.どんよりと曇った冬空からは,今にもみぞれが落ちてきそうだ.

 途中いくつもの農家をみることができた.庭には豚が放し飼いになっており,寒空の下裸足(はだし)の子供たちが元気そうに遊んでいた.しかし,農家の様子はお世辞にも裕福とはいえないようだ.

 その国が豊かかどうかは,都会の様子をみていてもわからない.地方の有様をみると,その国の本当の豊かさがわかる.1980年代,日本の農村は本当に豊かにみえた.それに比べれば,このチリーも,中国や韓国も,農村は明らかに貧しくみえた(最近はどうなのだろう).

 しかし,その日本も,2000年代を迎える頃からほころびが目立つようになってきた.地方の町の中心街は特にひどく,シャッター街とよばれる,半ばゴーストタウンが目立つようになった.農村にも,かつての安定した繁栄の様子は影を潜めるようになった.いろいろなところに,ほころびが目立つのだ.財政再建団体に指定された夕張市などは,その典型である.1980年代,20年後の日本がこんなになるとは,思いもよらなかった.当時の日本は,rising sunだったはずだ.やはり,「驕れる者は久しからず」なのだろうか.

 南下する線路沿いの駅近くの倉庫の壁には「ビバ アジェンデ!(アジェンデ万歳!)の落書きがそこら中にみられた.社会主義改革を進めるアジェンデ大統領は,貧しい者の希望の星だったのだ.しかし,改革をあせったアジェンデは,志半ばで,軍事クーデターの銃撃戦に倒れた.

 列車は南下を続けた.車窓の冬景色はどこまでも変わらず,空は相変わらずどんよりと曇っていた.

つづく(高橋正樹)



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