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今回の東北地方太平洋沖地震では誰も想像もしなかった広範囲の海底の岩盤が短時間のうちに動き,それに伴い巨大津波で発生して未曾有の災害を引き起こしました.ただし,この地域では約1000年前にも津波に襲われたことが津波堆積物の調査により明らかになっていました.津波堆積物は津波が陸上にもたらした堆積物のことで,最近10数年くらい前から本格的その研究が始まりました. 千島海溝に面する北海道の太平洋沿岸も地震が繰り返し発生し,東北地方沿岸と同様,津波の被害に見舞われてきました.写真は北海道太平洋岸中部の泥炭地の地層の断面です.泥炭は植物が腐って堆積した黒色の地層で,細かな砂や泥が良く保存されます.この断面で上の方に白く見えるのは北海道南部の火山から飛来した17〜18世紀の火山灰で,その下にはやや茶色く色の変わった2層の砂の層があります.これらの砂層中にはもともと泥炭層には含まれない種類の砂粒子や珪藻などの微化石が含まれ,そしてこの砂層は平面的に連続性が良いことから津波堆積物と判断できます. 北海道の太平洋沿岸ではこのような津波堆積物が各地で発見され,これらの調査結果から約500年間隔で大きな津波がこの地域を襲ってきたことが明らかになっています.しかし,今回の津波でも明らかのように津波は海底地形や湾の形などで高さは大きく変化します.このため,今後の防災対策を考えるためには津波の発生頻度だけでなく津波が陸上に遡上後どの付近まで到達したか,遡上後にどのような動きをしたかなども,過去の津波堆積物の調査を通じて明らかにすることが大切です.今回の津波に伴う津波堆積物の調査とともに,日本各地で津波堆積物の研究が進むことが期待されます. 宮地直道
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ちきゅう徒然
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