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皆さんの身近な地域にはどんな水辺がありますか。名水でしょうか。それとも,残念ながら余りお薦めではないような所?
ところで上の写真は,日本では余りお目にかかれない光景です。場所はルーマニア国内のドナウ川の支流です。
川岸に置かれた大きな袋の中から取り出して洗っているのは,刈り取ったばかりの羊の毛です。羊のからだには汚れがいっぱい付いていますね。でも,ウールになる前の羊毛を商品として出荷するためには,まずきれいにしなければなりません。その手軽な場所がここでは川なのです。
写真手前の方に流れていく川の水はまっ茶色に染まってしまっています。その水を汲んで水質を調べてみると,アンモニアや有機物が驚くほど含まれていて,とても魚が棲めるような環境ではありません。
ここで紹介した例は,確かに「水に流す」ことのできない問題なのですが,一方で,そこには生計を立てるための現実もあるのです。私たち一人ひとりにとって,そして国際社会にとって,持続可能な水環境の保全を進めていくことは,今早急に解決を求められている課題の一つと言えるでしょう。
水質の改善だけでなく,必要な量の水をどのように手に入れるかも大きな課題です。世界には,毎日の水汲みが欠かせない日課になっている地域がまだまだ多くあります。
下の写真は,ルーマニアの農村でのそんな一光景です。
ここでは,日々の生活に必要な水を求め、谷底の湧き水まで歩いて往復しなければなりません。地面にしみ出る地下水が飲み水と生活用水を支えていて,貯めた雨水も大切な水源として利用されています。
今世紀に不足すると考えられる資源の第一位は,安定して確保することのできる良質な水であると言われます。水不足の心配がある国や地域に住む人々の数は世界人口の4割に達し,現に,国際河川の利用と管理をめぐる大規模な争いさえ起こっています。
市場経済が導入された後の東ヨーロッパが抱える水問題の調査に携わったことは,水道の蛇口が半ば当たり前になっている日本での暮らしや水の使い方を改めて考え直すきっかけでもありました。
(森和紀)
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