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翌日は調査に同行した.中部アンデスのアルティプラノは乾燥地帯で,樹木はほとんど生えていない.たけの短い草が生えているのだが,乾燥地帯の草で,葉は硬く細く先端が棘のように尖っている.触れると飛び上がるほど痛い. この草原のところどころにリャマが放牧されている.リャマはアンデス特有の家畜で,羊に似ていなくもないが,首が長く脚も長い.スマートでなかなか可愛らしい動物である.他には,人を含めてほとんど動物らしきものは見当たらない. こうした場所でトラックが故障しても,誰も助けに来てはくれないという.飢え死にするのを待つだけだ.トラック2台でくるのは,1台が故障しても,もう1台で脱出できるようにという,そんな理由もあるのだ. 道路といったものは存在しないので,轍のあとを強引にトラックで分け入って行くだけである.トラックが進まなくなれば,あとは炎天下を,ハンマーを担いでひたすら歩く.昼間の空は雲ひとつなく,ひたすらに青い. アルティプラノの火山は乾燥地帯に置かれてきたため,年代が古くともそれほど侵食を受けていないものが多い.もっとも,氷河が発達した場所は別である.なまなましい安山岩のブロック溶岩が,存外古いものであったりするのだ. こんな過酷な環境でも,インディオは生きてきたのだ.人間の環境適応能力には,舌を巻くものがある. 5日目には,食料もガソリンも尽きようとしていた.すべてが無くなる前に,海岸の人里の町まで降りなければならない.われわれは,何もない褐色のアルティプラノを後にし,再びアリーカへと4000mの高度を下った. アリーカの次は,海岸沿いの国道を南下し,イキーケの町に向かう.イキーケで水食料・燃料を補給し,再びアルティプラノへ挑戦するのだ. つづく(高橋正樹)
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