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雲仙普賢岳の噴火では13個の溶岩ドームが出現しては崩落し繰り返し火砕流を発生させました.山の形は毎日変化しますので,次にどこから火砕流が発生するかを予測するために正確な観察が必要です.このため,地上の定点と呼ばれる複数の観測地点とヘリコプターからの観察が毎日繰り返されました.調査は地元の九州大学が中心でしたが,噴火が長期化するのに伴い,私たち日本大学文理学部地球システム科学科を含め全国の大学や研究機関の研究者が合同観測班として調査に参加しました. 地上では特別な許可をもらって立ち入り禁止地域内から観測をすることもありましたが,不測の事態に備えて車はエンジンをつけたままで,山と反対側に車を向け,いつでも逃げ出せるようにしておくのが鉄則でした. ヘリコプターからの観測は時間が限られていたため,溶岩ドームの形が前回とどこが違うかを短時間のうちに注意深く観察する必要があります.上の写真のように,私が観察したときの溶岩ドームはあたかも恐竜の背びれのようで,いくつもの固まりに分かれているように見えます.でもそのすぐ下は千度近い高温なのです.自衛隊の偵察用ヘリコプターに乗って何度か旋回し,ちょうど溶岩ドームの先端を通過しようとした時,ドームの先端がお餅のように膨れたと思うと急に下の方から融けるように無くなり代わりにもくもくとした煙が立ち上り始めました.ちょうど角砂糖を水に入れたときのようです.実はこれが火砕流発生の瞬間だったのです. 見とれている暇はありません.このままだとまともに火砕流に巻き込まれてしまいます.しかし,そこは熟練した自衛隊のパイロットの方の運転でしたので,ヘリコプターは急旋回して九死に一生を得ることができました.もちろん,この様子はビデオと写真の両方で撮影していました.下の写真で右に映っているのが壊れた溶岩ドームで,左側が火砕流です.火砕流の先端の様子は学科のホームページ http://www.geo.chs.nihon-u.ac.jp/html/introduction_field.html#disast をご覧下さい.火砕流からの噴煙はピンク色で風下側の町へと流れてゆきました.あまり,このような経験はしたくないですが,このような観察の積み重ねから火砕流の発生メカニズムが分かってきたのです. 宮地直道
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