|
ちょっと久々の教員インタビューは、本年度より当学科の教授として指導してくださっている、加藤央之教授です。 加藤先生は地球温暖化や気象統計を専門としています。環境問題に興味のある方はぜひ先生からのメッセージを受け取ってください。 ―――まずは、学生の時に気象学の道を選んだきっかけはなんでしょうか。 小さい頃から、地質とか岩石とか地学全般が好きだったんですね。で、中学の時に一冊の本に出会いましてね。 ―――ほほぅ。 こういう展開はいかにもインタビュー向けでしょ(笑)。 ―――ええ、ありがたいです(笑)。 「登山者のための気象学」という本なんですけど,雲の十種分類の写真が載って説明されていたり、登山者が天気を予報する方法が書いてあったり、天気図を描く練習ができたり。入門書であり実用書であるという、すごくわかりやすくていい本だったんです。それで気象が好きになって、将来は気象の研究をしようと決めて、大学受験はもう地学一本で行きました。 ―――お話を伺っただけでも、良さそうな本だなぁとわかりますね。 それで北海道大学に進まれて、まず卒業論文はどういったテーマで研究なさったんですか。 「局地風」というものがありますね。気象条件・地形条件が整った時にローカルに吹く風のことで,日本では「赤城おろし」とか「六甲おろし」といった「おろし」や、ある地域にだけ非常に強い風が吹く「だし」などが有名です。卒業論文ではこの局地風の文献調査をやりました。北大の卒業論文は、ある研究テーマが、これまでにどのように研究されているかをレビューしてまとめるのが主なんです。 ―――へぇ…分析ではなく文献の調査なんですね。 えぇ。私は研究の中で文献調査を重視していて、この学科で学生の研究指導をする際にも初めにそれをしっかりやってもらおうと思っています。というのも、好き勝手にやりたい研究をやって、後で「それはもう既に研究されていますよ」となってしまったら遅いですからね。ある研究について現段階でどこまで進んでいるかよく調べて、まだこの部分は研究されていないから私はここをやるのだという点を明らかにすれば、自ずとその研究の成果は出てきますから。 ―――そうすると、先生の修士の時の研究は、卒論でやったレビューの結果を受けての研究ですか。 まぁ、ある意味、風のひとつですが、海風・陸風ってご存知ですか? 海と陸の境界で、温度差によって起こる風ですけど、海でそういった風が発生するなら湖ではどうなんだ? というところに着目したんですね。海陸風に対して「湖陸風」と呼びますが、北海道の洞爺湖で2年間観測を行って、湖陸風があることを実証しました。今では気候気象学の辞典に「湖陸風」とちゃんと載っていて、市民権を得ているんですよ。その欄には「洞爺湖」の例も書いてあって(笑)。 ―――それは嬉しいですね。 それはもちろん嬉しいですよ。で、博士課程では湖陸風の研究を続けることを考えたのですが、観測のできない冬場に始めた気象データ解析にはまりまして、方向が変りました。多変量解析という数学的手法の中に「主成分分析」というのがありますが、その頃、それを気象学に利用しようとする動きがありました。そこで、私もこれをデータに適用して地域の気象的な特性を把握しようとしたんです。気候区分ってご存知ですよね? 熱帯とか温帯とか。その気候区分を、例えば高気圧や低気圧の動きに対応する気温や日照時間の空間分布などのパターンによって定義しようとしたんですね。そして博士論文では、北海道の新しい気候区分を主成分分析によって提案したんです。 当時は主成分分析を気象の分野に使うなんてことはまだ珍しかったのですが、今ではこの学科の山川研(山川修治教授:気候気象システム研究室)の学生が卒論でやっていますね。私はその草分けの一人だと自負しているんです。 ―――おぉ、湖陸風と合わせて二つも草分けがあるんですね。 まぁ、新し物好きですから(笑)。 ―――卒論、修士論文、博士論文と、まったく異なる手法を用いて研究なさったように思えるのですが、それらの手法が互いに活かされているなと感じたことはありますか。 データ解析をする時、手に入ったデータをそのまま信用して解析する人がたくさんいるけれども、博士課程でデータ解析やった時は、修士課程の時に自分で実際にデータをとった経験があったから、まずデータの質とか精度とか、持っている意味とかを解析前にきちんと吟味するくせがついていたという点で前の研究が活きているなと感じました。その感覚はホントに、自分でデータを取っていないとわからないですからね。 例えば世界各地で温度や湿度が観測されていますが、昔、ある地点では観測機器の周りに管理人さんが自分の洗濯物干していて、信頼性は大丈夫?なんて笑い話もありました(笑)。データの中に、あれ、おかしいなって感じる値を見た時にきちんと疑えるかどうかは、非常に大事ですね。 ―――電力中央研究所に勤務する(1983〜2008.3勤務)ようになってからは、どのような研究をなさったんでしょうか。 大学の学部・修士・博士課程の手法を全部用いました。洞爺湖以外の湖で湖陸風の測定も行いましたし、台風で鉄塔が倒壊した時は局地風を測定しに行って、データ解析もしましたしね。 ―――企業での研究というと、災害に関してのものが多いようなイメージがあるのですが。 災害と、それから利用ですね。風力など発電に気象をうまく生かせるよう研究をする。それともう一つは環境問題。例えば発電所を含めた様々な工場などからの排ガスの拡散評価。そのような取り組みを「環境アセスメント」と呼びますが、環境アセスメントをどう行っていけば効率が良いか検討するのも役割の一つです。そういった大気環境についての研究を、勤め始めてからしばらくやっていました。 ―――最近ではどのような研究をなさっていましたか。 1980年代終わりごろから、地球温暖化について取り組んで、ずっとそれを中心に研究を進めてきました。東アジア、特に日本が温暖化によってどうなるかという予測と、気温が何度上がって、それによって関東地方がどうなるかといったような影響評価。それと、IPCCってご存知ですか? 世界各国の、温暖化について研究している研究者2000人くらいが集まった組織で、そこで温暖化に関する最新の報告書をまとめたものをIPCCレポートと言います。もちろん日本もそれに参加していて、私も関係しており、私の研究論文は第3次・第4次報告書に引用されています。 〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜
前編はここまで! 後編は地球温暖化に対する人々の意識や、科学者が担うべき役割などについてのお話があります。おたのしみに☆ |
過去の投稿日別表示
[ リスト | 詳細 ]
2008年05月16日
全1ページ
[1]
|
中国の四川省で5月12日に大地震が起きました。ニュースによると、大変な被害の様で胸が痛みます。 ニュースを見て「中国でこのような大きな地震が起きるなんて!!」と驚かれた方も多いのではないでしょうか?中国は日本と比べれば地震の発生頻度は低いのですが、大きな被害をもたらす地震を過去に何度か経験しています。 地震は大地を構成する岩石に大きな力が加わって、高速で壊れてずれることによって起きます。今回の地震の場合、岩石を破壊した大きな力はどこからきたのでしょうか? 世界地図を見ると、中国の西南部にはチベット高原、南の国境には世界最高峰のチョモランマ(エベレスト)を含むヒマラヤ山脈がそびえます。 これらの大規模な地形は、インド亜大陸が中国を含むユーラシアプレートに衝突したことによって出来たと考えられています。大陸の衝突は世界最高の山脈や四千メートル級の高原を作り出してしまったのです。凄まじい力だと思いませんか? しかも、それは過去の話ではありません。GPSを用いた地殻変動観測によって、衝突は今も続いており、中国の大地を変形させ続けていることが明らかになってきました。この大地を変形させる力が、今回の大地震の背景にはあると思われます。 村瀬雅之
|
全1ページ
[1]


