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パサデナ・デ・サルバドールの食堂で、裕福そうな黒人の一家をみかけた。尋ねてみると、カリブ海のスペイン語圏の小国からの観光客で、チリー南部にスキーに出かけるという。黒人というと,「貧困」や「熱帯」というステレオタイプの印象があり,その偏見に無意識のうちにとらわれているためか,裕福な黒人家族がスキーをするということ自体に何か違和感を感じてしまった. 人間は無意識のうちに多くの偏見にとらわれている.17世紀のイギリスの哲学者であるフランシス・ベーコンは,人間はすべてイドラ(偏見)にとらわれており,それから自由ではないと考えた.彼はイドラを克服する方法として,帰納法を提唱したのだ. チリーを含む南米では、いわゆるモンゴロイド様の扁平な顔をしたアジア人のことを「チーノ」とよぶ。これは一種の蔑称であって、ジャップというのと同じようにあまりよい表現ではないらしい。かつて南米一帯に中国からの出稼ぎ単純労働者が大挙して押し寄せたことがある。彼らは劣悪な条件下で安価な労働力として使用された。「チーノ」(すなわちチャイニーズ)はそうした過程で生まれた蔑称である。チリーの隣国のペルーで日系のフジモリ大統領が誕生したとき彼もチーノとよばれたというが、この場合は蔑称というよりは愛称であったらしいので、最近におけるチーノという言葉の持つ意味合いは、少し変わっているのかもしれない。 ラテンアメリカは,白人とインディオの混血であるメスティーソが主体を占める.混血であることが当たり前なのだ.ブラジルなどは文字通り人種のるつぼであるといわれている. アルティプラノでの調査中にウーゴ氏が私に「お前のおじいさんはどこから日本にきたのだ」と尋ねたことがある.突然のことで面食らったが,私の顔がやや立体的であることや色が白いこと,180センチメートルとやや身長が高いこと,などが理由であったらしい.4分の1くらい白人が混ざっているのでは思ったようだ.というのも,混血であることは彼らにとってはごく普通のことだからだ.ちなみにチリー人はみな身長が低い. 混血の地ラテンアメリカですら,人種偏見は皆無ではない.地球上から,人種や民族に対するイドラ(偏見)がなくなるのはいつのことなのだろうか. パサデナ・デ・サルバドールの黒人一家は,今朝も底抜けに明るくにぎやかに食堂で語り合っている. つづく(高橋正樹) |
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2008年06月10日
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