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北海道南西沖地震の津波の話の続きです.津波は陸上に押し寄せる時に海水とともに海岸近くの海底の土砂を巻き込み,陸上に達した後は陸上の地面を削り内陸までこれらの堆積物を運びます.海水が引くときにこれらの堆積物の一部は陸上に残されます.これが津波堆積物です.津波堆積物の研究も1993年の北海道南西沖地震津波の後,急速に進展しました. 北海道南西沖地震の直後に車で被災地を進むと道路の隅に多数の土砂や砂が吹き溜っていました(写真上).この道路より高い斜面の草が倒れていることからこの道路が津波に覆われたことは明らかです.これが津波堆積物です.なお,この地点の堆積物は近くの海岸の砂にとても良く似ていました.もっともこのような砂は車の通行には妨げになるので,地震発生後2日目にはもう散水車がやって来て水で洗い流してしまいました. 海岸近くの休耕田は一面砂浜のようになっていました.休耕田に生えていた草は皆,海岸側に倒れています.草の倒れている方向は津波が海側に引くときの力の方向を示しています.このような草を掘って断面を見てみると,休耕田の土の上に約5cmの厚さで津波が運んできた砂が堆積している様子を確認できます(写真下).さらに注意してみると,草の下の方は海と反対側の画面右側に少し傾いていて,表面の1cmくらいのところで海側の画面左側に逆「く」の字のように折れ曲がっています.このことから下部4cmくらいは海から津波が押し寄せてきた時の波である押し波の堆積物で,上1cmくらいは海水が海の方向に引くときの引き波の堆積物であることがわかります. このように津波は広い範囲にシート状に土砂を堆積させることが分かりました.このことは地層中に津波堆積物が存在することを予想させるもので,実際,北海道南西沖地震の後,日本中の海岸域の多くの地点で,掘削調査が行われ,数多くの津波堆積物が発見されました.津波堆積物はその形成された時期が分かれば,襲来する間隔を予想することが可能です.このため,現在も日本各地で津波堆積物の調査が進められ,今後の災害に備える努力が続けられています. 宮地直道 |
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2010年03月29日
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