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今年も北海道東部の斜里町から網走市にかけてのオホーツク海沿岸に流氷が接岸しました.この地域は斜網(しゃもう)地方と呼ばれ,小麦やジャガイモ,てん菜の産地として知られています.皆さんが今日食事で使う片栗粉や砂糖はこの地方の作物が原料かもしれません.斜網地方の南には屈斜路(くっしゃろ)カルデラと呼ばれるわが国最大級の巨大カルデラがあります.このカルデラは34〜 3万年前にかけて繰り返し発生した大規模な噴火により作られました.この噴火に伴い噴出した火砕流(屈斜路火砕流)はカルデラ周囲の谷を埋め火砕流台地を作りました.先に挙げた畑作物は水はけの良い土地を好みます.このため,火砕流台地の広がる斜網地方は北海道でも有数の畑作地帯となったのです.ただ,火砕流の堆積面には起伏があるため,大規模な農地を作るにはある程度,人工的に斜面を削って平らな農地を作る必要があります(写真上).その結果,多くの露頭が出現しました. このようにして作られた露頭の一つでは11万年前に噴出した屈斜路火砕流堆積物の断面を観察できます(写真中).この時の火砕流の噴出量は100km3以上と見積もられており,とてつもなく大規模な噴火の産物であることがわかります.露頭の中ほどには大きく波打ったような境界が見えます.この境界はどうやってできたものでしょう?よく見ると波打った境界の上を覆う層には多数の横筋が見えますが,下の方の層には見えません.また,境界の右側の一番谷底のようになっている部分には多数の礫が集まっていました.これらのことからどうやら下の火砕流が堆積した後,その上面が削られて凹凸ができ,そこを何度も細かな流れが覆ったようです. この境界面を良く見ると,最初に境界を覆っているのはとても細かな火山灰の層です.ただ,この火山灰は良く見ると直径1cm程度の丸い球状の火山灰の塊の集合のように見えます(写真下).このような火山灰をもとに作られた球状の塊を火山豆石(かざんまめいし)といいます.火山豆石は空中に飛散した火山灰が落下する際に空気中の大量の水分があると,この水分をもとに火山灰同士がくっついて成長し形成するといわれています. では,この大量の水分はどこから来たのでしょう?一つのアイディアとしては大規模噴火でカルデラが形成され,その窪みに水が溜まり,そこで新たに噴火が起きて火山灰と一緒に湖水も大気中に吹き飛ばされたことが考えられます.別のアイディアとしては,大規模噴火により多数の塵が大気中に放出され,それが気候の寒冷化とともに降雨の増加を招いたことが考えられます.このような大気中の水は降雨となり火砕流の堆積面を削り,削られたできた土砂は火山泥流となってこの地域を何度も埋めたのかもしれません.いずれにせよ噴火による気候の寒冷化や火山泥流など噴火の影響が完全に収まるには何10年,あるいは100年以上の期間が必要だったことでしょう. このような巨大噴火はめったに発生しませんが,当学科の高橋正樹教授も著書「破局噴火」の中でご指摘の通り,このようなカルデラができる場所には少しづつマグマが蓄積し数万年に1度の頻度で巨大噴火が発生するリスクがあるのです.ただ,同時にこのような噴火による影響は長い歴史の中ではほんの一時期で,噴火のお陰で風光明媚な屈斜路湖が誕生し,すばらしい畑作地帯が作られ,我々はその恩恵を享受していることも忘れるべきではありません. 宮地直道
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2010年03月11日
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