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「アリババと四十人の盗賊」と云う映画は、「アラビアン・ナイト」の一編を素材としているが、「アラビアン・ナイト」の話とは異なっている。 この映画のアリババは、盗賊団の若き首領であり、バグダッドを占領したモンゴルを民衆と共にやっつけるのである。賢い女奴隷のマルジャーナは出てこない。代わりにマリア・モンテス(さだめし、フスン・マリアム)が出てくる。 「開けごま」は共通している。 それにしても、チグリス・ユウフラテスの地、古代文明を育み、中世のアラビア文明を育みながら、 13〜14世紀にはモンゴルの侵略を受け、20世紀にはアメリカおよびその同盟軍の侵略を受けると云う大変な土地である。 映画は、アリババを先頭とする民衆の武装蜂起によって、モンゴル軍をやっつける所で終わりとなる。この映画の製作者は、21世紀のアメリカが、映画のモンゴル軍になりかねない状況を予想出来ただろうか? 日本も、「インド洋での補給支援活動を、我が国の国益をかけ、続ける」と云う。国益も問題だが、まず、どんな大義があると云うのか! また、どんな国益があるというのか!! 「薮(ブッシュ)に遮られて、見えなかったのです」では済まないだろう。
改訂 2008.09.30 |
論 説
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「アリババと四十人の盗賊」と云う映画を、DVD で見た。 映画は、1944年、アメリカで作られたものである。内容は「千夜一夜物語」の一編を素材とし、美男美女を活躍させる娯楽映画であるが、史実も取り入れ、イラク問題の未来を暗示しているようで、考えさせられる。なお、このアリババは、「開けごま」のアリババである。 映画は、モンゴル軍がバグダッドを占領するところから始まる。 モンゴル軍の殺戮から、辛くも逃れたカリフの遺児「アリ」が、盗賊団に助けられ「アリババ」となり、成長して盗賊団の若き首領として、亡き父の敵を討つために、また、奪われた国土を取り戻すために、フラグ・カーンに立ち向かうのだった。映画は、みんなの願いが実現したところで終わりとなる。 映画は、ハッピーエンドだが、モンゴル軍の侵略は、歴史的事実である。
1258年、イラクにあったアッバース朝は、フラグ・カーンの率いるモンゴル軍によって滅ぼされ、バグダッドは荒廃した。さらに、14世紀末、今度はティムールの率いるモンゴル軍に攻められた。この時は、潅漑施設までが破壊された。
以後、第一次世界大戦が終わるまで、イラクはオスマン・トルコの支配下に置かれていた。モンゴル軍の破壊の傷跡が深刻だったことを意味するだろう。 ぼくは、この映画のDVD を「製作:1944年、アメリカ」と云う理由で購入した。 最初の感想は、「アメリカは、B29 を大量に作っていただけでなく、このような総天然色の娯楽映画も作っていたんだなぁ!」である。その頃、わが「大日本帝国々民」は B29 の空襲に逃げ惑いながら、B29 に、高射砲ではなく竹槍で立ち向かうことを考えサセラレテイタように思う!! 次に、映画に出てくるイラクの民衆の愛国心。愛国心が燃え上がらないと映画は終わらないのだが、映画ほどではないにしても、愛国心ー郷土愛は無視出来るものではないだろう。一歩譲っても、古代メソポタミヤ文明以来の民族抗争を生き抜いてきた、したたかさは無視出来ないだろう。
「薮に遮られたので、見えませんでした」では済まないだろう。 2008.05.05 |
1)サマワの浄水施設ユーフラテス川の下流に、サマワ(As Samawah)という街がある。ここはイラクで、今までブログで取り上げてきたシリア・メスケネ地域から1000kmほど下流であり、日本の陸上自衛隊が駐留した街である。この街には、日本が援助して作った浄水施設がある。この施設は、「コンパクトユニット」と呼ばれ、3ケ所、費用は計1億円かかったという。日本の外務省は、「施設は、飲料水用」と云っているらしいが、住民の多くは、洗い物にしか使っておらず、「飲み水に困っているのに、なんでこんなものを、日本は作ったのか」と云っているようである。 この施設は、ユーフラテス川の水を単純に浄化しただけのものらしい。ちなみに、陸上自衛隊は、宿営地では「逆浸透膜浄水装置※」を使って川の水を浄化し、自分たちも飲用し、住民にも配っていたようである。 (この項は、川上泰徳「しょっぱい水」、朝日新聞(2008.3.31)夕刊、による。) ※適切な条件の下で、塩水の中から水だけを抽出できる膜を使った装置。海水を淡水化する方法として急速に発展した。 2)自衛隊のイラク派遣と名古屋高裁の判決「航空自衛隊の空輸先は戦闘地域である」と云う判決が、4月17日、名古屋高裁から出された。この空輸先は、首都「バグダッド」であるが、「サマワ」は戦闘地域ではないのだろうか。駐留にあたって他国の武力による援護が必要であること自体、戦闘地域になる可能性をもった地域であることを示していると、ぼくは 見る。攻撃する意志を持ってしまった相手に、「ここは戦闘地域ではありません」と云ったところで、「そんなのかんけえねえ」と云われるのがオチだろう。 湾岸戦争当時、アメリカ軍は、大量の「劣化ウラン弾」を使用している。サマワ付近も例外ではなく、土壌は劣化ウランで汚染されている。劣化ウランは、放射能こそ低レベルであるが、半減期は長く、重金属だから、体内に入ればいろいろな健康障害を引き起こす(たとえば、湾岸戦争症候群※)。もちろん、最大の被害者は、イラク国民であるが、埃にまみれて仕事をしただけで、劣化ウランに汚染されるのである。「かんけえねえ」と云ったところで、遠慮してくれるような相手ではない。 ※ (http://www.morizumi-pj.com/iraq/iraq-a/・・・) 「傍論」とか「そんなのかんけえねえ」などの発言があるが、とにかく、行政は、司法の判断を真剣に受け止めるべきである。 航空幕僚長にしても、上官の命令に従う義務もあるだろうが、国家公務員として憲法を遵守する義務もあるはずである。 3)ユーフラテス川の浄化川上泰徳(2008)は、この文章の中で「サマワを流れるユーフラテス川の水は、かなりの塩分を含む」と述べている。日本政府が、本当にイラク国民のことを考えるなら、「ユーフラテス川の浄化」に取り組むべきである。もちろん、シリア、トルコも関係する(図)。 当面、飲める水を供給するだけなら、陸上自衛隊がやったように、「逆浸透膜浄水装置」を導入すれば済むだろう。しかし、この方法は費用の問題は無視出来ないだろう。 長期的な解決となると、難しい問題がある。 まず、ユーフラテス川は、乾燥地帯を流れてくる川である。総延長は2800km(これでも、世界では38番目である。理科年表より)であるが、源流部のトルコも乾燥地域であるから、全流域、乾燥地帯と云って良いだろう。 さらに、最近はダムがいくつも出来て、潅漑用水としての水の消費も増えている。この潅漑が問題である。 従来のような潅漑方式であれば、ユーフラテス川の水は減るだけである。つまり、潅漑した水のうち、水分は蒸発し、川の水にわずかに含まれていた塩分は耕地に残留することになる。潅漑水は、ユーフラテス川に戻ってこない。しかし、これでは古代メソポタミヤの潅漑農業の二の舞いである。 新しい潅漑方式は、余り水(作物に吸収されずに地下へ浸透して行く水)を、途中で(塩水化した地下水に合流する前に)抜いてしまおうと云うものである。これが成功すれば、土壌の塩化を防ぐことは出来る。しかし、余り水は、今までに蓄積された土壌中の塩分(潅漑農業が始まった古代メソポタミヤ以来の)を洗い流しているので、塩水になっているわけであり、新しい方式では、そのような水が戻ってくるわけである。 まさに「河清を待つ」だが、21世紀の課題である。 ◎ここでいう「塩分」は、メスケネの経験から云えば、主に「石膏」である。 石膏は、硫酸カルシウム+結晶水。水にわずかながら溶解する。100グラムの水に最大0.2080グラム(25 ℃)。ちなみに食塩は、100グラムの水に最大26.4グラム(20 ℃)溶解する。
** 2008.04.30
** 05.05 地図に、「クルディスタン山地」を追記。クルド族の土地と云う意味である。 |
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