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太宰治のワンペア…正直と素直…、サンデルの正義と善、宮崎駿の千と千尋の神隠し、ロールズの1971年・格差原理と公正な機会均等原理、生誕100年太宰治の悲喜こもごも
☆☆誠実と敗残に尖る巧拙・ユーロジヴィ、産まれてこなければよかった生命に眼醒め、思いを詰めた正義と自尊のシャドー・自我、ネジれに抗するワンペア…正直と素直…の太宰治が迎える生誕100年の悲喜こもごも☆☆
☆☆作品 正義と微笑 ☆☆
太宰治1942年34歳 日記小説:四月十六日金曜日の16才から十二月二十九日、僕は来年18才まで。無謀・開戦に掲げ、太宰治さんが自我のそのシャドーを定義する、その書き出しは、賛美歌から。スレスレにロシアの外に翔ぶ、ワンワード・ユーロジヴィ、聖痴愚の空恐ろしい、両義性です。
正義と微笑
太宰治
わがあしかよわく けわしき山路(やまじ)
のぼりがたくとも ふもとにありて
たのしきしらべに たえずうたわば
ききていさみたつ ひとこそあらめ
さんびか第百五十九
[#改ページ]
四月十六日。金曜日。
すごい風だ。東京の春は、からっ風が強くて不愉快だ。埃(ほこり)が部屋の中にまで襲来し、机の上はざらざら、頬(ほっ)ぺたも埃だらけ、いやな気持だ。これを書き終えたら、風呂(ふろ)へはいろう。背中にまで埃が忍び込んでいるような気持で、やり切れない。‥‥‥‥‥‥
☆☆ シャドーに托す太宰治さんの正気 ☆☆
口にせず書に現さず、慢心する忌まわしい日本の、
この無謀・開戦を慟哭、正義のそのリアリズムに襲われ、
茨を刺々しく痛ませて刻むクールな異の心境、
達して悟る、こころに凍る無下の緊張、
日本文学に空く、熱く篤い、生きる正義に焦がれて思う
希有の、そのヒトリになった感慨に縛られ、
鎖さず開く津軽に向かって、退き隠るその心境を
律すれば、シャドー、シャドーの不滅は滅びゆく
わがカラダの余りな冷たさをフォロー、
日本狭小列島が欠く不思議な生の正義、
若いリアリズムが弾いて微笑する17才の記憶を、
現実の宙に散りばめ、失われないリアリティを、
そのシャドーに借りて充たし、無謀・開戦の闇に、
微笑する正義の、幕を垂らしました。
情動・不定に戦きながら、愛しむ自我の境遇、
そうこころえた自我の達観は、最后の太閤を書いた、
16才のあの時、一代一世に輝く秀吉の、
その最后の骸がこころに映って、悟に墜ちた正義、
愚たらな自我の我と、それに抗い、冷たく佇む
ナルシストの鉄仮面は、ワンペア…正直と素直…が
微笑を贈る、黒光りのシャドー。
☆☆ 良かれとざわめく 造り物は ☆☆
表を飾る造り物の1から10まで、良かれとざわめく、狡猾のコッカ社会、唆す刺戟に傷つき眼を返して眼を凝らす正直、呻く口惜しさに生の正義が呼応し高ぶる素直、マル暗キに服する、ことなかれ事務・正義の誠実一路を、埋めるタダのそのタダ尽くめは、隠しを軸に囃す野放図・命令、ソントクツゴーをめぐり渦を巻く、面従腹背の踏み絵・正義のその他方、器用仕事にトコトンを究めて求め、騒々しい外に気を散らさす、内に隠る里山の…公正で自由な公平や平等…、ゴスペルとバイブルに加えた俳句の‘かるみ’に、知った自我の限界を悼み、生の正義に鞭ち打たれた太宰治のシャドー、正気をHUMAN LOST・1936年の反省・メモランダムに確保、情動・不定に抗し意を詰めた16才のクールな眼醒めは、最后の太閤に視て捕えた、骸一代の固有の個の生涯ヒトつ、ワンペア…正直と素直…を分離せず、ワンペアで挑んだ閉じる骸の一世一代は、この年、太宰治の生誕100年。
☆☆ 愛しむ自我の境遇 ☆☆
情動・不定に戦きながら、愛しむ自我の境遇、
そうこころえた自我の達観は、最后の太閤を書いた、
16才のとき、一代一世に輝く秀吉の、
その最后の骸がこころに映って、悟に墜ちた正義は、
愚たらな自我の我と、それに抗い、冷たく佇む
ナルシストの鉄仮面・シャドー。
ナルシストを知って個人主義を無我へジャンプ、正義に伏しその晴れ晴れしさに微笑を贈り、慢心の外を鎖し、ワンペアの…正直と素直…を孤立の渕に臨ませ、深々と深めた気鋭を閃かす38才の最后の太宰は、16才の最后の太閤に際立てた、生涯たったヒトつの結末の最後に結実する、冷厳な正義の骸でした。途中感は危険を孕んで竦ませ、結果にこころを早らせ、結果の酸いも甘いも噛み分け、揺れるこころの承認要求に、額づきます。
∈ 四月十六日金曜日から ∋
……人間は、十六歳と二十歳までの間にその人格がつくられると、ルソオだか誰だか言っていた。
…そんなものかも知れない。僕も、すでに十六歳である。
…十六になったら、僕という人間は、カタリと音をたてて変ってしまった。
…他の人には、気が附くまい。謂わば、形而上の変化なのだから。
…じっさい、十六になったら、山も、海も、花も、街の人も、青空も、まるっきり違って見えて来た。
…悪の存在も、ちょっとわかった。この世には、困難な問題が、実に、おびただしく在るのだという事も、ぼんやり予感出来るようになった。…だから僕は、このごろ毎日、不機嫌なんだ。ひどく怒りっぽくなった。
…智慧の実を食べると、人間は、笑いを失うものらしい。
…お茶目で、わざと間抜けた失敗なんかして見せて家中の人たちを笑わせて得意だったのだが、このごろ、そんな、とぼけたお道化が、ひどく馬鹿らしくなって来た。お道化なんてのは、卑屈な男子のする事だ。お道化を演じて、人に可愛がられる、あの淋しさ、たまらない。空虚だ。人間は、もっと真面目に生きなければならぬものである。
…人に「尊敬」されるように、努力すべきものである。このごろ、僕の表情は、異様に深刻らしい。深刻すぎて、とうとう昨夜、兄さんから忠告を受けた。…「むずかしい人生問題が、たくさんあるんだ。僕は、これから戦って行くんです。たとえば、学校の試験制度などに就いて…兄さんから、マタイ六章の十六節以下を読んでもらった。
…重大な思想であった。現在の未熟が恥ずかしくて、頬が赤くなった。忘れぬように。
…「なんじら断食するとき、偽善者のごとく、悲しき面容をすな。彼らは断食することを人に顕さんとて、その顔色を害うなり。誠に汝らに告ぐ、彼らは既にその報を得たり。なんじは断食するとき、頭に油をぬり、顔を洗え。…これ断食することの人に顕れずして、隠れたるに在す汝の父にあらわれん為なり」…微笑もて正義を為せ!……。
☆☆ 緊張の中から緊張の世界に生まれた子供は ☆☆
緊張の中から緊張の世界に生まれた子供は、音や手触りや光りから、言葉をヒトつづつ結び、結んだ言葉で意識をより豊かに、豊かに結ぶ言葉を自意識に変え、結んだ言葉から言葉を選んで周囲に意志を伝え、周りや辺りに、感じるままに注文を返しながら、それらの反応を個々に確かめ、その場その時に働く緊張を識別してキャッチ、ヒトリ前の自律と自立を表すとともに、他の多を個々の個に投じて自・他を識別、与する緊張の世界を精一杯に支持、囲む緊張に向かってしたいことや認められたいことのその意図を多の言葉を集めて表明、自覚には至らなくても準備中の抱負を周辺に述べ、生まれた者が固有する個の動機を、自我の姿の陰に隠さず、囲む辺りにストレートに顕して我の真意を伝え、多の他の中に顕す動機をもって固有の個を実存させ、内に閃いて選ぶ好奇心や興味を、外に向かって直下立たせ、緊張する世界の中に、固有の個をその動機の上に映す無我の自我に眼醒め、そのようにナルシストになった自我の我を、自らの試行に着かせるその妄想を執拗に潔く発憤させ、そのシャドーすら見逃さずに追って洗って自我の無我の、その真意を審らかせ、自我の我がシャドーの無我を、腐して煽て、誉めて貶め、トクを誘ってツゴーを裏切らせ、ソンを引かせてツゴーを選ばせ、ツゴーを選ばせてソンを裏切りトクを懐中に納め、自他の気を惹きながらも秘中の秘に納まる、ソントクツゴーを神々に尊び平和の忠誠を誓い、談合の公論を唯々諾々をもって制し、責任は見せしめに執らせ談合を責任から解放、大学連山にその座を温め、煙らす独論の坐りを伺い、模範の支配を伺いどおりに開く御用係りが吐くその俊秀の辞は、頭の先から脛の毛尖まで、リスクに挑みリスクの克服に鞭うつ、そんなリアリティを下々下に処し現実の緊張から逃れて消し去り、時のリアリズムを一時の努力に括って斥け、空きの明きに悼る辺境・志向の願って欲する観念の至極。
太宰治さんが俳句に‘かるみ’を求めました。造り物への憤慨は芭蕉さんを借り、
∈骨を見て 坐に泪ぐみ うちかへり∋
∈ぬす人の 記念の松の 吹おれて∋芭蕉
つづく
つつしんで……丈司ユマ著作権
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