おおがいさんのトモダチ

森の生け花や山野の一輪差しを思う常識から常識による常識のための常識

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二蟹田4 免罪符になるはずがない想定や定義に挑戦した太宰治、小説の神様・志賀直哉を砕いたのは戦下に書いた津軽の風土記、太宰治生誕100年は大震災からの復活と二重・写し。
 …想定や定義…が免罪符になるはずがないのに、敵失漁りの要領を誇った、志賀直哉・風は蕉・風に恥じ、治・風にも恥じ、豊かな資金力にものを云わせて開いた一流・限定の大文化・サロン、嫌われたらソンと集まった小林秀雄らからお世辞を集め、小説の神様が文壇の神様を彷彿、誠意もなく魂もなく、気忙しい要領を気取る吸血の卑劣が、津軽の風土記に曝かれ、瀕する貧から易く逃れる観念に頼り、タダの観念に自己・陶酔、絶対の観念に尻を叩かれ、寄る辺のない狡猾の観念に汚され、文明開化を脇道に反らした元凶は、上意下達に固執し自由を捨させ、正統と異端をウソ尽くめに詰めた恫喝・依怙地、引きつる肉感・話法が、筏の内でも、筏の外でも、貪欲のトクをめぐるそのソンを相手に、ツゴーの限りを尽くし、乾く渇きを干乾しに吊し、富の壮絶・カニバリズムが、貧の貪欲・カニバリズムと激突、凄まじい欲得の渦が、リッチの日本人を非人に仕立て上げました。
 誠実とは正反対になった列島の狡猾、トクを囁き日本人のこころを二重性の中に鎖し、特別意識に陰るニッポン・カニバリズムはリッチになっても未開そのまま、大江健三郎を嘆かせ、テオドール・ジェリコー27歳が絵に画いた1816年メデューズ号の筏事件が、眼に眩しい。

  ……淡く咲いてゐる、観瀾山の桜は、花弁も薄くすきとほるやうで、心細く、いかにも雪に洗はれて咲いたといふ感じである。爛漫といふ形容は当つてゐない。
 ノヴアリスの青い花も、こんな花を空想して言つたのではあるまいかと思はせるほど、幽かな花だ。帰還兵のT君は、暑い暑いと言つて上衣を脱ぎ半裸体になつて立ち上り、軍隊式の体操をはじめた。タオルの手拭ひで向う鉢巻きをしたその黒い顔は、ちよつとビルマのバーモオ長官に似てゐた。
 小説に就いて何か述懐を聞き出したいやうな、素振りを見せ、集つた人たちは情熱の程度に於いては、それぞれ少しづつ相違があつたやうであるが、私は問はれただけの事は、ハツキリ答へた。
 「問に答へざるはよろしからず。」といふ芭蕉翁の行脚の掟にしたがつたわけである。一、他の短を挙げて、己が長を顕すことなかれ。人を譏りておのれに誇るは甚だいやし。私はその、甚だいやしい事を、やつちやつた。
 芭蕉だつて、他門の俳諸の悪口は、チクチク言つたに違ひないのであるが、けれども流石に私みたいに、たしなみも何も無く、眉をはね上げ口を曲げ、肩をいからして他の小説家を罵倒するなどといふあさましい事はしなかつたであらう。
 にがにがしくも、そのあさましい振舞ひをしてしまつたのである。
 五十年配の作家の仕事に就いて、問はれて、私は、そんなによくはない、とつい、うつかり答へてしまつたのである。
 神様、といふ妙な呼び方なども出て来て、その作家を好きだと告白する事は、その読書人の趣味の高尚を証明するたづきになる、といふへんな風潮さへ瞥見せられている。
 畏敬に近いくらゐの感情で過去の仕事が、最近どういふわけか、東京の読書人にも迎へられてゐる様子。
 贔屓の引きだふしと言ふもので、その作家は大いに迷惑して苦笑してゐるのかも知れないが、しかし、私はかねてその作家の奇妙な勢威を望見して、れいの津軽人の愚昧なる心から、「かれは賤しきものなるぞ、ただ時の武運つよくして云々。」と、ひとりで興奮して、素直にその風潮に、従ふ事は出来なかつた。
 このごろに到つて、その作家の作品の大半をまた読み直してみて、うまいなあ、とは思つたが、格別、趣味の高尚は感じなかつた。
 エゲツナイところに、この作家の強みがある
、と思つたくらゐであつた。書かれてある世界も、ケチな小市民の、意味も無く、気取つた一喜一憂である。
 「良心的」な反省をときどきするが、そんな箇所は特に古くさく、作品の主人公が自分の生き方に就いて、こんなイヤミな反省ならば、しないはうがよいと思はれるくらゐ。 「文学的」な青臭さから離れようとして、かへつて、それにはまつてしまつてゐるやうなミミツチイものが感ぜられた。
 ユウモアを心掛けてゐるらしい箇所も、意外なほどたくさんあつたが、自分を投げ出し切れないものがあるのか、つまらぬ神経が一本、ビクビク生きてゐるので読者は素直に笑へない。
 貴族的、といふ幼い批評を耳にした事もあつたが、とんでもない事で、それこそ贔屓の引きたふしである。
 フランス革命の際、王の居室にまで暴徒たちが乱入、暗愚なりと雖も、からから笑つた、フランス国王ルイ十六世、矢庭に暴徒のひとりから革命帽を奪ひとり、自分でそれをひよいとかぶつて、フランス万歳、と叫んだ。
 血に飢ゑたる暴徒たちも、この天衣無縫の不思議な気品に打たれて、思はず王と共に、フランス万歳を絶叫し、王の身体には一指も触れずに、おとなしく王の居室から退去したのである。
 貴族といふものは、だらしないくらゐ、闊達なものではないかと思はれる。
 無邪気なつくろはぬ気品が、まことの貴族にはある。口をひきしめて襟元をかき合せてすましてゐるのは、あれは、貴族の下男によくある型だ。
 貴族的なんて、あはれな言葉を使つちやいけない……。

   ☆☆ 志賀直哉を、戦下に批判、
      文化も文明も暗いその異境から、
      小説の神様に向かって、譏ろうとは怪しからん不届き
      そう書いた太宰治に下された弾圧、
     大震災の復興には鎮魂の森をと諭す建築家・安藤忠雄、
      上意下達で自由を失った列島の、木偶の今様を嘆き、
      100億円を寄付した人は、100億円がどう使われたか
       最後まで追わなければ、自由が死ぬと、呟き、
      意志と願いと現実の努力を、揃えてこそ自由と、
     かすみ我せきの率いるコームいん大集団が得意にする、
      フン詰まりの硬直状態を案じ、原発・紛糾の
     権力・破綻を怖れ、自由のない上意下達へ警鐘を鳴らし、
     反省を拒むその心底に「ゆきゆきて神軍」を響かせます。☆☆
  ……「貴族的なんて、そんな馬鹿な事を私たちは言つてはゐません。」と今別から来たMさんは、当惑の面持で、ひとりごとのやうにして言つた。
 私の話に少しも同感の色を示さなかつた。一座の人たちは、酔漢の放言に閉口し切つてゐるといふやうなふうに見えた。他の人たちも、互ひに顔を見合せてにやにや笑つてゐる。
 「ルイ十六世は、史上まれに見る醜男だつたんだ。男振りにだまされちやいかんといふ事だ。」私の声は悲鳴に似てゐた。いよいよ脱線するばかりである。ああ、「要するに、」先輩作家の悪口は言ふものでない。
 「でも、あの人の作品は、私は好きです。」とMさんは、イヤにはつきり宣言する。
 「日本ぢや、あの人の作品など、いいはうなんでせう?」と青森の病院のHさんは、つつましく、取りなし顔に言ふ。「そりや、いいはうかも知れない。まあ、いいはうだらう。」 私の立場は、いけなくなるばかりだ。
 「君たちは、僕を前に置きながら、僕の作品に就いて一言も言つてくれないのは、ひどいぢやないか。」私は笑ひながら、本音(ほんね)を吐いた。みんな微笑した。やはり、本音を吐くに限る、と私は図に乗る。
 「僕の作品なんかは、滅茶苦茶だけれど、しかし僕は、大望を抱いてゐるんだ。その大望が重すぎて、よろめいてゐるのが僕の現在のこの姿だ。君たちには、だらしのない無智な薄汚い姿に見えるだらうが、しかし僕は本当の気品といふものを知つてゐる。
松葉の形の干菓子(ひぐわし)を出したり、青磁の壺に水仙を投げ入れて見せたつて、僕はちつともそれを上品だとは思はない。成金趣味だよ、失敬だよ。本当の気品といふものは、真黒いどつしりした大きい岩に白菊一輪だ。土台に、むさい大きい岩が無くちや駄目なもんだ。それが本当の上品といふものだ。君たちなんか、まだ若いから、針金で支へられたカーネーションをコツプに投げいれたみたいな女学生くさいリリシズムを、芸術の気品だなんて思つてゐやがる。」
 暴言であつた。「他の短を挙げて、己が長を顕すことなかれ。人を譏りておのれに誇るは甚だいやし。」この翁の行脚の掟は、厳粛の真理に似てゐる。じつさい、甚だいやしいものだ。私にはこのいやしい悪癖があるので、東京の文壇に於いても、皆に不愉快の感を与へ、薄汚い馬鹿者として遠ざけられてゐるのである。「まあ、仕様が無いや。」と私は、うしろに両手をついて仰向き、  「僕の作品なんか、まつたく、ひどいんだからな。何を言つたつて、はじまらん。でも、君たちの好きなその作家の十分の一くらゐは、僕の仕事をみとめてくれてもいいぢやないか。君たちは、僕の仕事をさつぱりみとめてくれないから、僕だつて、あらぬ事を口走りたくなつて来るんだ。みとめてくれよ。二十分の一でもいいんだ。みとめろよ。」
 みんな、ひどく笑つた。笑はれて、私も、気持がたすかつた。……
(修正変更した抜粋の引用)
                     〈二蟹田5 〉につづく
          つつしんで……丈司ユマ
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