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Bandazhevskyの心電図データの異常は、丁寧に考察を重ね、いくつかの仮定をおけば、メカニズムとしては、十分に想定できる、ということを議論しました。
ちょっと書ききれませんでしたし、さらにいくつかの仮定をおくことになるので、ここでは触れませんが、Bandazhevskyの論文のtable-2のデータにある、高血圧の高発症も、どうようの考察で、説明できる可能性が高いと考えています。(注:補足説明) では、かれのデータの50Bq/kg以下の内部被曝に抑えるためには、どのくらいの食事をとればいいのかを、議論します。 今、食事で20Bq/kgの低汚染量(日本の規制値以下です)の食事を取っていたとします。 セシウムの、生物学的半減期は、大人で70日、子供で20日。100日程度とか、110日と言うデータもあります。計算を簡単にするために、ここでは、100日と言うデータに基づいて、議論していきます。つまり、一度摂取した放射性セシウムは、その後、汚染物質を全く食べなければ、約100日で、その半分量が身体外に排出される、ということです。
1日の摂取吸収量を(20Bq/kg x 食事量1.5〜2.0kg)、と置き、吸収率を約90%とし、平衡状態の濃度を計算する。初日は0Bq/kgからスタート。
入ってくる量と、1日の減少量がつりあったところで平衡に達します。
平衡状態の蓄積量をN(Bq)と置くと、
Nの1日減少量と、摂取吸収量がつりあうということ。つまり、Nx (1/(100 x1.443)) = 20 x (1.5〜2) x 0.9
従って、平衡状態の蓄積量はN = 約3900〜5200Bq
体重60kgの成人とすると、65-87Bq/kg
Bandazhevskyの濃度を超えてしまいます。
試算では、約1年半から2年で、この平衡状態の濃度に達すると考えられます。
これが、食事は、厳格に10Bq/kg以下を目指さないといけない、という理由です。
でも、厳しいことを言いますと、10Bq/kgの食事を続けていたとしても、体重33-42Bq/kgに達してしまいます。本当は、10Bq/kg以下でもまだまだ不十分で、これより、1ベクレルでも2ベクレルでも低ければ低いほど良い、という考え方も、計算上は成り立ちます。 今の米の規制値は、100Bq/kgと伺っていますが、見直しをした方がいいと思います。 きちんとした、学術論文で、Bandazhevskyという学者が、明確なデータを出しているわけです。 決して、無視していいデータではないと思います。 福島の農家の方々のご苦労と、必死の努力を考えると、このような計算結果をここに書かねばならない、ということには、大変に心が痛みます。 どうか、政府が、手厚いサポートを供し、もしも、10Bq/kg以下が達成できない農家の方には、長期的には、安全な土地での再出発を支援する体制を、ぜひとも、早急に整えてあげていただきたいと思っています。 個々の住民が、今後どのような選択を取っていけばいいのか、難しい選択を迫られる状況もあると思いますが、どうか、いろいろな可能性を考え、皆様が善処されますよう、心からお祈りしています。 (注:補足説明) Bandazhevskyのデータでは、「高血圧」になる、と書かれています。それ以外に、「血圧が不安定」と本文に記述されているのも見逃せない大事な情報だと思います。ところが一方、セシウム内部被曝をラットで模した動物実験モデルであるGueguenの論文では、「低血圧」になります。このデータの乖離を以ってして、「ほら、Bandazhevskyは信用ならない」という誤解をされるかたも、もしかしたらおられるかもしれませんので、断り書きをしておきますが、実は、この2つは、矛盾しない説明を、(ある程度は)できると思っています。後ほど、時間ができたときにでも、少し詳しい解説と解釈を、書かせていただきたいと思います。 <<最初に戻る>> |
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とても勉強になりました。一応通読をさせていただきましたが、理解できていない部分がいろいろあります。もともと、放射性物質の危険性が単に遺伝子を壊すとされていることに違和感があり、Kチャンネルの話である意味目からうろこが落ちた思いです。一つ確認をさせていただきたいのですが、セシウムの化学毒性もこのKチャンネルに一つの原因があり、放射性セシウムはそういった化学毒性がより強度になるという理解でいいのでしょうか。
2013/7/18(木) 午前 2:55 [ たっけ ]
最近貴ブログを知りました。
私は量子物理も生物も素人なので、ついていけない部分が多々ありますが、Csの心筋細胞に与える影響についての考察に目からウロコの思いで読ませていただきました。
さっそくですが、分からないことがあるので質問させてください。
今回の記事中で、Nの1日減少量と、摂取吸収量のつりあいの式の中にある「1.443」という係数(?)は何を表すものなのでしょうか?
それと、Csの吸収率を90%と置いておられますが、この数値は生物学的には妥当なものなのでしょうか?
素人考えではちょっと高い数値に思えてしまうので。
お時間があるときで構いませんので、どうぞお教えください。
よろしくお願い致します。
2013/7/20(土) 午前 9:27
たっけ様、コメントをありがとうございます。ざっくりとした言い方では、たっけさまのおっしゃるご理解が、ここに書いてある要旨ということでよいと思います。ただ、普通の(非放射性の)セシウムで議論になる際のKチャネルは、機能異常が前面に出てくるのは、生理学的な見地からは、おそらく、むしろKvLQT1などで、放射性セシウム(Cs134/137)の際に議論になるのは、量的なことから言って、affinityの高いKir系の方が問題になるだろうな、と予想しています。ひとつ気をつけておいていただきたいのは、ここに書いた内容は、あくまで推定される理論、ということで、実験的に確認できたメカニズムではない、ということです。ただ、こう考えれば、Bandazhevskyのデータが綺麗に説明できる、ということで、仮説的理論のようなもの、と捉えておいてください。
2013/7/23(火) 午後 2:23 [ 大山敏郎(*) ]
(つづきです)従来の「線量計算」では説明のつかないようなデータが、バンダジェフスキーによる内部被曝調査(ヒトにおける)によって分かっており、そして、動物実験でも、このブログでは取り上げていませんが、微量のセシウム内部被曝で、各種の臓器に機能的変化が観察されるというデータが動物実験でも蓄積しつつありますので、ここに書いた説明が正しいのか、あるいはもっと別の説明になるのかは別として、従来の放射線医学の枠を飛び越えた、なんらかの説明が必要なのは事実だと思います。
2013/7/23(火) 午後 2:23 [ 大山敏郎(*) ]
オーパス様、お返事が遅くなりました。
まずは、「1.443」という係数について。これは、「半減期」を「平均寿命」に直すのに使う係数です。もしも、高校時代の数学をちょっと思い出していただくことが出来れば、わかりやすいのですが、放射性物質は、体内に沢山たまっていれば、それだけ、排出も沢山行われます(体内に2倍たまっていれば、尿や便中に排出されるのも比例して、2倍になります)。これを式で書くと、
dN/dt = -kN
という微分方程式になります。ただし、Nというのは、ある時間(t)における、体内蓄積量。時間tの単位を(日)とすれば、左辺は、1日に体内から減少する減少のスピードということです。
2013/7/23(火) 午後 2:31 [ 大山敏郎(*) ]
(つづき)
この式を解きますと、初日(t=0)の蓄積量をAとすると、
N = A exp(-kt)
となります。ただし、セシウムの物理学的半減期(約30年)は、生物学的半減期(約100日)に比べて、十分長いとして、崩壊による減少は、この場合計算外として、概算していきます。
生物学的半減期が100日、ということは、初日(t=0)における蓄積量Aが、100日目にはAの半分に減る、ということなので、上の式に入れると、kの値を出すことができます。
exp (-100k) = 1/2
k = 1 / (100 x 1.443)となります。(ちなみに1.443は1/2の自然対数の逆数です。kの逆数を一般的に数学的には平均寿命といいます)
さて、最初の式に戻りましょう。
1日の減少量は、dN/dt = -kNですから、このkの値を右辺に入れてやりますと
N x 1/(100 x 1.443)が1日の減少量ということになります。
2013/7/23(火) 午後 3:10 [ 大山敏郎(*) ]
オーパス様、あと、ご質問のあった、セシウムの吸収率に関してですね。これは、最初、私も「セシウムの吸収率って、こんなに良いんだ」という同じような感 想を抱きました。ただし、セシウムの形態によって、吸収率が異なってきます。フォールアウトの中のパーティクル様のものを摂取しても、これは吸収されにく く、3%以下といわれています。一方、水溶液や、食べ物の中のセシウムは、総じて、吸収率は良いようです。
90%というデータは、次の文献を参照ください。
(総論)http://www.atsdr.cdc.gov/toxprofiles/tp157-c3.pdf
http://info.ornl.gov/sites/publications/Files/Pub38374.pdf
(文献)
Yamagata N et al, 1966 J. Radiat. Res. 29–
Rosoff et al. 1963 J. Radiat. Res 643-
など
2013/7/23(火) 午後 3:10 [ 大山敏郎(*) ]
オーパス様
少々、上の式で筆足らずでしたが、コメントのお返事に書かせていただいた式は、ずべて、「経口摂取が初期値以降ゼロだったら」という前提での式で、「半減期」の考え方としては、こういうことになります。
一方、ブログの記事では、毎日、微量の汚染物質を経口摂取し続けたらどうなるか、という前提で計算しますので、一日の変化量は
20 x (1.5〜2) x 0.9 - N x 1/(100 x 1.443)
となります。第1項が、経口摂取による1日あたりの増加量。第2項が、排泄による1日あたりの生物学的減少量。
平衡状態では、これがつりあって、ゼロになるわけですから、ブログに書いたような計算になっていきます。
お分かりいただけるような説明になっているでしょうか?
2013/7/23(火) 午後 11:51 [ 大山敏郎(*) ]
丁寧な解説、ありがとうございました。
2013/7/24(水) 午前 0:33
オーパス様 こちらこそ、ご丁寧に有難うございます。
2013/7/25(木) 午後 8:07 [ 大山敏郎(*) ]
たっけ様
ちょっと筆足らずで、誤解を生む回答のし方をしてしまっているかもしれないので、補足させていただきますね。
2013/7/25(木) 午後 8:08 [ 大山敏郎(*) ]
非放射性セシウムと、放射性セシウムで、カリウムチャネルのターゲットが変わってくる、と考えているわけではなく、どちらも、同じように、結合していきます。
ただし、結合のaffinity(親和度)はともにKir>>>KvLQT1と考えられます(これは実験的に分かっている事実です)。つまり、ともに、先にKirのほうから結合していく。
非放射性セシウムは、カリウムチャネルをブロックして機能を阻害していくだけなのですが(これは実験的にわかっている事実です)、先にくっつくKirのほうは、実はブロックされただけでは細胞機能異常につながりにくく(ここは過去の実験データを元にした間接的推測です)、細胞に5万個Kirがあったとして、その全て(あるいは大部分)をブロックして、さらに余剰量の非放射性セシウムが、こんどはaffinityの低いKvLQT1をブロックし始めて、さらに、5万個ある(仮定)KvLQT1の10%くらいをブロックして、ようやくQT時間に影響が出始める(推測的考察ですが、一応量的な部分は過去の実験データとある程度の整合性を取っています)、と考えています。
2013/7/25(木) 午後 8:10 [ 大山敏郎(*) ]
(つづき)
つまり、非放射性のセシウムの場合、乱暴な仮定的数量ですが、5万5千個くらいで影響が出るイメージですね。
一方、放射性セシウムは、各種カリウムチャネルへの選択性は、非放射性セシウムと全く同等だけれども、同じように先にくっつき始めるKirに、これをオープンに壊すモデルを推定しているので(本文に書いたとおりです)、細胞にたった1個Kirが壊れても影響が出うるし、もっと言うと、100個の細胞に1つという割合だったとしても、臓器全体として影響が出うる、というメカニズムが想定できる、ということです。
これを一言で言うと、たっけ様のおっしゃる感じでよろしいかと思います。
2013/7/25(木) 午後 8:12 [ 大山敏郎(*) ]