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最近、知人から指摘されたのですが、当ブログの理論を誤解されるかたが多いのではないか、ということです。その一つが、
(誤解に基づく発言)「セシウムがカリウムチャネルに詰まるなんて、馬鹿な話をするな。カリウムチャネルはセシウムイオンを通すことは、昔から分かっている。セシウムがカリウムチャネルに詰まるなんて言っているのは間違いだ」
という誤解です。おそらく、このような誤解というのは、いろいろなカリウムチャネルの挙動を、ごっちゃにしてしまわれたために至ってしまった誤解なのだろうと思います。
セシウムが、Kirというカリウムチャネルに対して、「詰まる」挙動をする、というのが、このブログの理論のまず第一の着眼点ですが、もしかしたら、上記の誤解のように、この「詰まる」という部分に、異論を唱える方がおられるかもしれません。
カリウムチャネルが、カリウムイオンを選択的に通す生命分子であり、ナトリウムイオンを通さないというのは、説明した通りです。
では、カリウムイオンよりも、かなりサイズの大きい、セシウムイオンに関してどのように振る舞うのか?これはも、以前に解説を出しました。
当初、話を分かりやすくするために、少し端折って書いているので、もしかしたら、生物学を知っておられるかた、あるいは原発事故後に少し調べ物をされた方は、「あれ?」と思う箇所が、1箇所見つかるかもしれません。それが、上記のような、「詰まる」のか、「詰まらないのか」という議論。
カリウムチャネルのうち、内向き整流カリウムチャネル(Kir)以外のものは、実はセシウムイオンも、ゆっくりですが、通すものもが多いのです。
例えば、KvLQT1(別名KCNQ1, Kv7.1)などは、上記のKirチャネルとは少し様相が異なり、Csイオンは若干ですが通すことが知られています。このチャネルに関しては一価の陽イオン選択性もよくわかっており、Tl>K>Rb>NH4+>Cs>Naという順番に通しやすくなっています。カリウムイオンの通過のしやすさを1とすると、だいたい、0.08から0.12くらいの割合で、セシウムイオンをゆっくりと通します(Kirのように堅い足場固定にはならずに、ゆるく通す感じになります)。
しかし、実は、生物学系でもあまり知らない方もおられる様なのですが、カリウムチャネルのうち、内向き整流カリウムチャネル(Kir)に対しては、セシウムイオンは、特異的に、はまり込んで、ブロックしてしまいます。(現在では、Kirチャネルのどこに嵌まり込むのかという、詳しい解析もわかっていますが、さらに詳しい挙動と計算はまた後ほど)。ブログの当初の記事に書いた通り、このブログの理論も、Kirに対する影響を主眼に理論を構築しています。はまり込んだ場所で、崩壊を起こしたらどうなるのか、ということを延々と論じています。
はまり込む、詰まる、ということは、それだけKirに対しては、他のKチャネルに対してよりもaffinityが高いということです。より詳しいことは、新たな記事を準備中ですが(注)、一旦この、Csがkirチャネルに対して詰まるという挙動を元に、関係性を整理してみましょう。
(表1)
これも、すでに何度か説明したことを繰り返しているだけですが、この表のように、放射性セシウムと非放射性セシウムのKirに対する影響の出方も全く別物ですし、Kイオンのうち、放射性のK40というものもありますが、すでに過去の記事で取り上げてきたように、K40はKirチャネルに対しても、その他のKチャネルに対しても、全くの素通しなので、生命体分子に対する影響は(生体に常在する程度の量では)全くないと考えられるわけです。
Kチャネル側から見れば、K40というのは、素通し、つまり、言って見れば、「見えてい」ないわけです。忍者に例えれば、忍法隠れ身の術、といったところでしょうか。生命体分子が、何億年もかけて、環境中の放射性元素であるK40に適応してきた賜物と考えても良いと思います。
一方、放射性セシウムは、Kirにガチガチにはまり込みます。
足場固定した時に、放射性元素が崩壊するという条件を考える時、前述のように(記事1、記事2)、(固定されていない時に比べて)2つの大きな挙動を考える必要が有ります。(1)ひとつは、足場固定のために、エネルギーの伝達が、極めてよいであろうということ。(2)もう一つは、崩壊時の配位座や配位強度の変化が、隣接分子の電子挙動に影響を与えうる条件が成立する(化学反応を促すと、考察しうる)。
このうち、何度も説明はしましたが、(1)の足場固定された時に崩壊する時のエネルギー伝達の効率の良さに関して、もう一度、例をあげて解説してみます。
(もうひとつの(2)の配位座の問題は、とても重要なのですが、またいずれ機会を設けたいと思います)
皆様は、野球をやったことがあるでしょうか。
地上で野球をする場合、バッターボックスにたった打者は、ボールをインパクトする瞬間、足場にぐっと力を入れ、効率良くバットからボールに力(エネルギー)を伝達することで、ボールを遠くに飛ばすことができます。
では、宇宙空間でバッターがボールを打ったらどうなるとおもいますか?
バッターは、まあそもそも、バットをうまく振れないことに加えて、ボールをインパクトした瞬間に、同じ衝撃を反作用で受けます。反作用を受けるのは地上でも同じですが、ところが宇宙空間の場合には、バッターの足場が固定されていない為に、「踏ん張る」ことができず、バッターは、ボールを打った方向と逆方向に回転を初めてしまします。ボールも上手く飛んで行きません。つまり、足場が固定されていないために、エネルギーが上手く伝達できなくなってしまうわけです。地上で当たり前のように、子供も大人も楽しんでいる野球ひとつをとってみても、普段意識することのない「足場固定」による絶大な恩恵に預かっているわけです。宇宙空間という、足場のない世界に踏み出して初めて、足場固定の有り難みと重要性に気がつくわけです。
(図は「フリー素材挿絵の森」様から拝借改変)
さて、放射性セシウム(Cs134/137)と放射性カリウム(K40)。Kirに対する、足場固定の条件は、このページの上記の表1のとおりです。
まずは、このブログの理論の、第一段階の着眼点を、納得いただけましたでしょうか?
ちなみに、古典的放射性生物学(ICRPの理論)の成り立ちは、放射線による影響も、放射性物質の挙動も、すべて、足場のない世界で作り上げられた、現代物理学の法則を適応してしまっています。大事なパラメータの見落としがあると思います。
ご存知のように、Cs137は、β崩壊をしますが、出てくるβ線(電子線)はエネルギーと粒子性が強すぎて、たとえ隣接、固定されていても、隣接分子を素通りしてしまうと考えられるのかもしれません。しかし、β線放出直後のCsは、Ba原子に壊変しており、このBa原子が不安定であるがために、γ線を放出するわけです。γ線の場合には、波動性をもっていますし、なにより、固定原子同士での効率の良いγ線のエネルギー伝達に関しては、よく知られた物理学の知見です。 もう一度まとめます。
K40という生体内常在放射性元素の挙動から見れば、Kチャネルとの間に、足場固定はない。
一方、Cs137とKirの間には、強力な足場固定がある。
エネルギー伝達的な観点から物を言うと、Kirから見れば、Cs137に対しては、姿を見せているけれど、K40に対しては、姿を見せていないわけです。つまり、K40に対して、Kチャネルというのは、隠れ身の術を使っている、ということは、そういう意味です。
(延々と、(1)足場固定のことを説明しましたが、実は、(2)隣接時の配位座の変化という条件の方が、むしろこの問題では重要なのだろう、と考えています。この問題は、別途、時間を作って解説する機会を設けていきたいと思います)
(余談になりますが、すでに別途の附記で補足した、同じく生体内常在放射性元素である放射性炭素[C14]、トリチウム[3H]など。これらは、すでに述べたように、確かに、生命体分子の主要構成元素として生命体分子中にガチガチに取り込まれ、崩壊時にやはりその生命体分子を壊すことが想定できますが、Cs137-Kirの関係と違って、ランダムなターゲットをrecessiveに壊しているだけなので、やはり固体や臓器レベルでの生命体分子の機能としては障害が生じないだろう、ということを説明させていただきました。これも、生命の適応がうまくいっていることの例ですね。忍法に例えると、さながら、「分身の術」のようなものを考えると分かりやすいかもしれませんね。但し、14Cや3Hによって、機能障害につながらないと推測できる、と言っているのは、自然内部被曝線源として存在する程度の量では、という意味です。実験室レベルでの大量摂取になれば、障害が生じえます)
(忍者画像は「オンラインショッピング忍者衣装」様から拝借改変) <<2018年12月補足>>
基礎生物学界、特に、このテーマが深く関与しているKチャネル学界で、昔から根強く残っている、ある「誤解」があります。最近では、世界的な流れで見ると、ようやく修正されてきているようですが、まだまだ誤解したままのチャネル学者も多くいるようです。その誤解が元になり、当理論を信じるに足りない、とするご意見もあるかと思います。すでに、数年前の記事や、コメント欄での議論でもこのテーマに触れている通りなのですが、簡単にかいつまんで下記に但し書きをさせていただきます。(別個、詳しい説明のための別記事を以前から用意しているのですが、いくつかの説明図の完成を怠ってしまっていること、などなどが重なり、まだ公開しておりません。)
その誤解というのは、「心筋には正常の状態でも、ダダ漏れのリーキーチャネル、恒常的オープンチャネル、元々正常でも、恒常活性型Kチャネルがあり、少々、放射性セシウム崩壊時にKirがオープンになったところで、影響はない」というレッテルです。
これは、(1)パッチクランプという実験で用いられた条件の再構成不足による1990年代の見解を引きずっていること、(2)正常心筋の脱分極・再分極相を丁寧に考慮に入れてこなかったこと、(3)Kirの共挙動分子の複合体の役割(2000年代以降確立してきた概念です)を無視してきたことなどによります。(ちなみに、最後の部分、Kirは生成から代謝までのすべての期間を通し、Naチャネルと、共挙動する、という「ナゾ」の挙動をすることが有名ですが、かつてはなぜこのようなユニークな挙動をするのか、その意味づけすら明確ではありませんでしたが、この理論に沿った方向性での開閉機構の説明で、この部分は非常に合目的挙動に進化しているのだという、理にかなった説明が可能になってきます。すでに数年前に記事を用意してはいるのですが、もう少しわかりやすく書き換えたいと思っています。公開はしばしお待ちください。)
2000年代以降明らかになった、Kirの構造解析も、旧来のそのドグマ(Kirなどは正常状態でも常にリーキーチャネルであるという旧来の概念)が誤解であり、やはり当理論に沿った方向でのKir開閉機構の重要性、そしてあえて先進的なことを述べてしまうと、第1相から2相初期、第2相後期から第3相にかけての開閉が重要な意味を持つということを示唆しています。
(注)一旦、堅くガチガチにはまり込んだCsイオンも、やがては外れることもあります。この部分の定量的な計算に関する説明を準備中です。後ほど詳しい解説を記したいと思います。
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2015年11月01日
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最近知人から指摘されたのですが、当ブログの理論を誤解される方も多いかもしれない、と言われました。その誤解の一つが、
(誤解に基づく発言)「たった1個のカリウムチャネルが壊れたところで、細胞には5万と他のカリウムチャネルがあるので、細胞に異常が起こるわけがない。たった1個のカリウムチャネルが、、、と騒いでいるのは、オカルトに違いない(木を見て森を見ず)」
という趣旨の誤解があるということです。(まあ最後の「オカルトだ」とか「木を見て森を見ず」という部分は、私が想像で書いてみました。きっと生物学的な考え方に慣れておられない方だと、こういう受け止め方になるのではないかと思い。)この種の誤解の根底にあるのは、生命体分子の「壊れ方」に、いろんな種類があるということをご存知ないためかと思いますので、その点をまずは補足解説してみたいと思います。
カリウムとセシウムの挙動の最大の違いは、このブログでの初期から繰り返している通り、内向き整流カリウムチャネルにたいする挙動です。<該当記事へ>
きちんと定量的に、放射性セシウムの影響を論じるためには、まずここにあたえる影響を、定量的に考えなければならない、というのがこのブログの主張です。
その際、おそらく、専門家も、非専門家も含めて、上記のような誤解に陥ってしまう際の、最も馴染みのないであろう考え方を、再度まとめておきます。多分、このブログの理論を理解していただく上で、多くの方が戸惑ってしまわれるポイントかもしれません。
おそらく、多くの、古典的な放射線物理学的な考え方に馴染んだ方にとって、生物学的な議論のうち、慣れていない考え方のひとつに、生命分子というのは、「機能」をもっている、と言う点だと思います。
物理学の基本構成要素を扱う時に、普通は、モノとモノが、ぶつかったり、反発したり、引き寄せたり、passiveな作用しかありません。ところが、生物の分子には、「機能」というものがあります。これは、地球が誕生して、数十億年の経過で、化学物質が生まれ、生命が生まれ、進化してきたことの賜物です。最初はランダムに物質と物質がぶつかり合っていた時代から、進化の過程を経て、生命体分子が「機能」を持つようになった。
だから、慎重な生物学的問題に関する考察、というのは通常、生命分子が壊れるとき、その「機能」の壊れ方を、丁寧に考察することが要求されます。
生体分子の機能の壊れ方には、優性(dominant)、劣勢(recessive)な壊れ方の2通りがある、というのが、ここで補足説明しておきたいテーマです。
--------- 一般教養としての優性、劣勢というキーワード -------------
すこし、分かりやすい例を出してみます。
一般教養として遺伝学を習ったことのある人は、「優性遺伝」「劣性遺伝」という単語を聞いたことがあると思います。英語で言うと、dominant, recessiveという形容詞がそれです。
ある病気になりやすい遺伝子変異を論じるとき、その変異を、両親のどちらか一方だけから受け継いでも、病気を発症してしまう場合、その病気は優性遺伝性の遺伝病といい、両親からともに異常変異を受け継がないと発症しない場合、劣性遺伝の病気と言います。
例えば、劣性遺伝の病気には、ドゥシャンヌ型筋ジストロフィ(DMD)、フェニルケトン尿症、サラセミア、血友病などがあり、優性遺伝の病気には、ハンチントン舞踏病、家族性大腸ポリポーシス(FAP)、肢帯型筋ジストロフィ1型(LGMD1A, 1B, 1C, etc) などがあります。
上の図のように、父親と母親から1つづつ遺伝子をもらって、我々の体の細胞の中には、遺伝子がペアで存在しているんですが、仮に、両親のうちのどちらかの遺伝子が異常遺伝子だったとしても、ペアの遺伝子のうち、1個の異常遺伝子しか片親から引き継がなかった場合病気が発症しない場合には、劣性遺伝の病気(左図)といいます。一方、片親から1個だけ異常遺伝子を引き継いでも病気が発症してしまう場合、優性遺伝の病気と言います(右図)。
(厳密には次の通りに限らないんですが)分かりやすく、端折って書いてみますと、遺伝病の多くの場合は、遺伝子の異常が、生命分子(タンパク)の機能異常につながっていますので、遺伝子の優性劣性を、タンパク分子の劣性、優性と対応させて説明してみます。
<劣性の異常>について: 劣性遺伝の病気というのは、片側の遺伝子からの異常分子があっても、もう片側の遺伝子からの、正常な分子が、その失われた機能をカバーしてくれて、病気の発症は防がれる。
ドゥシャンヌ型キンジストロフィ(DMD)を例にとってみましょう。
この病気は、dystrophinという遺伝子に異常を持つことで、筋肉の進行性の破壊が起こり発症する遺伝子疾患です。dystrohin遺伝子に異常があると、タンパク分子としてのdystrophinが、ほとんど発現しないか、役に立たないdystrophinが発現するかのどちらかになります。
dystrophinタンパク分子というのは、筋肉の細胞膜表面で、大事な働きをしている生体分子なのですが、これが無くなる、あるいは役に立たないdystrophinになってしまうと、細胞の様々な機能に障害が生じて、筋肉の細胞が死んでしまいます。これが、筋ジストロフィという病気が進行していく原因です。
しかし、例えば母親から貰ったdystrophinの異常があっても、父親側からの正常dystrophinがあれば、機能をカバーできるので、片親からの異常dystrophinが一つだけの場合は、たとえ異常dystrophinを持っていても発症しないで、非発症のキャリアとなります(余談ですが、dystrophin遺伝子は性染色体上にあるので、社会的理由で、女児は両方のdystrophin遺伝子の異常になり得ないため、女性でDMDを発症することは、社会的にはありません。逆に男児の場合にはY染色体にはdystrophin遺伝子はないので、片側のdystrophinが異常の時に、機能をカバーしてくれる正常dystrophinが存在しないので、発症してしまいます)
つまり、まとめると、劣性の遺伝子異常の場合、その産物のタンパクが異常を持っていても、正常のタンパクが必要十分量あれば、機能をカバーしてくれて、細胞機能も正常。病気も発症しない。
<優性の異常>について:一方、優性遺伝病の場合、(わかりやすく書きますと)片側の変異からの異常分子による、機能異常が、積極的に優位に細胞の行動異常、臓器の機能異常につながってしまう。
同じ筋ジストロフィでも、caveolin-3という遺伝子の異常で起こるLGMB-1Cというタイプがあります。このcaveolin-3が、ある変異をもっていると、異常caveolin-3が、正常のcaveolin-3の機能までをも阻害し始めます(dominant negativeな作用と言います)。caveolin-3は、骨格筋細胞の、様々な機能維持に関わる重要な分子であるため、この、積極的な機能阻害が、細胞死のリスクにつながったり、なんらかの形で(まだ全容は未解明ですが)、筋ジストロフィの発症につながると考えられています。
従って、こういう、生命分子の機能異常を、dominantな機能異常と呼びます。つまり、優性の遺伝子異常の場合、その産物の異常タンパクが、他の正常タンパクの機能をも阻害してしまい、細胞機能に異常が出て病気を発症してしまいます。
このように、現代分子生物学で、生体分子の異常を考察する場合、分子機能の異常を、dominantなのか、recessiveなのか、ということに注意を払いながら、遺伝子機能やタンパク機能を解析したり、実験を設計したりすることが要求されます。1990年代の、「シグナル伝達」という分野で薫陶を受けた世代以降だと、割と日常的に遭遇する考え方です。
以上をまとめると、物理学と違って、生物学には、「機能」を考えないと理解できない局面が多々あり、その機能の壊れ方には、recessiveとdominantの両方の局面がある。
もしかしたら、専門的になりすぎて、分かりにくい説明になってしまっていますかね?
ちょっと日常生活での、たとえ話をいくつかしてみます。
------------日常生活での喩え話--------------
車の故障:recessiveな異常とは、エンジンが故障して、車が走れなくなってしまった状態。べつに1台の車が壊れたところで、街には五万と車があるので、誰もほとんど困らない。故障者の持ち主も、隣人に車を借りれば無問題。一方、dominantな異常とは、街中を走行中の車のブレーキが壊れ、暴走を始めるような故障のしかた。これは大変な事態につながる。
(人物イラスト無料素材様から借用改変)
料金所の故障:recessiveな異常とは、料金所のゲートが壊れて上がらなくなる場合。たくさんのブースがあれば、他に回避できるので、交通はなんら困らない(recessive negative)。dominantな異常とは、料金所に強盗が立てこもり、銃を乱射し始めるケース。これは、その料金所に他にいくつブースがあっても、たった一人の凶悪犯のために、交通の麻痺が起こる(dominant negativeな例)。
(いらすとや様から借用改変)
上記の料金所の右の例(凶悪犯による妨害行為)は、dominantな異常の中でも、dominant negativeと言われる異常の出方の例です。
dominant, recessiveという意味をご理解いただくために、頑張ってイラストを作ってみましたが、料金所のdominant negativeな例は、実はこのブログで延々と述べている、Cs137-Kirの例としては、ちょっと違いますね。少し近い例を考えるために、dominant positiveな例も考えてみましょう。
やはり、車のゲートの例を挙げてみます。
今度は、駐車場の入り口に、沢山ゲートがあるのを考えてみてください。
ただし、駐車場は大規模イベントのため、とても混雑しかかっています。したがって駐車場内のピーク時混雑緩和のために、1分に1台車だけ、というゆっくりなペースで車を通す、という設定に駐車場入場ゲートがなっていたとします。結構大きなイベント会場の駐車場なので、ゲートは100個くらいあるのを考えてみて下さい。ゲートが1個壊れて通れなくなっても、他に99個もゲートがあるので、不通過ゲートを回避できるので、無問題。これから入ろうとする車にとっても、ペースが乱される事もなければ、駐車場の中の秩序も保たれている。
ところが、ゲートの1個が、ずっと開きっぱなしになるような壊れ方をしたら、どうなるかというと、そのゲートから車がじゃんじゃんと無制限に入り始めて、駐車場は大混雑に陥ってしまう。これが、dominant positiveな壊れ方。機能過多になることで、システムに不都合が生じるパターンです。たった1個の構成員の機能過多でも、障害が生じる、というパターンは、身の回りにも結構あったりします。
さて、以上の例を踏まえた上で、このブログでのカリウムチャネルの話に戻ります。
カリウムチャネルが、ただ単に、詰まってしまった場合:これは、細胞には、仲間のカリウムチャネルが五万とあるので、他の仲間が機能をカバーしてくれて、システムの機能には影響が出ません(recessiveな故障)
カリウムチャネルが、開きっぱなしに壊れてしまった場合:これは、困る場合が生じ得ます。本来、そのチャネルが絶対に閉じていないといけないタイミングの時に、ジャンジャンとカリウム電流が流れ始めると、マズイことが生じ得ます(dominant positiveな故障)。これを定量的に計算したのが、以前の記事になります。
--------------以下余談------------------- トリチウムにしてもC14にしても、人体の構成要素である、タンパク、脂肪、DNAなどの有機物(生体分子)の中に、共有結合で取り込まれます。
つまり、(Kir-C137の話をしたときに、ガチガチに嵌まり込んだところで崩壊するのがマズイ、と言いましたが、それどころの比ではないくらい)、トリチウムもC14も、ガチガチに嵌まり込んだ場所で、崩壊します。元素そのものが変換するわけですから(C-->N, H-->He)、生体分子そのものの構造も劇的に変わり、おそらくは、分子が壊れてしまうことでしょう。
ところが、Kir-Cs137の時と違って、この場合は、全く恐れるにことはないんです。
なぜかというと、例えば仮に、C14などのせいで、生体分子が故障しても、まずほとんど(全てと言っていいほど)のケースで、recessiveな故障の仕方をするのです。さらに言うと、ランダムな分子が壊れますので、たとえ細胞機能に異常が出たり、万が一、細胞死に至ったとしても、(自然倍部被曝放射線源として体内に存在する程度の量では)、システムとして臓器の機能に異常が出ることはないのです。
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