内部被曝を論じるブログ

Bandazhevskyのデータを論じています。ご意見、間違い指摘などを頂けると嬉しいです。

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Bandazhevskyの心電図データの異常は、丁寧に考察を重ね、いくつかの仮定をおけば、メカニズムとしては、十分に想定できる、ということを議論しました。
ちょっと書ききれませんでしたし、さらにいくつかの仮定をおくことになるので、ここでは触れませんが、Bandazhevskyの論文のtable-2のデータにある、高血圧の高発症も、どうようの考察で、説明できる可能性が高いと考えています。(注:補足説明)



では、かれのデータの50Bq/kg以下の内部被曝に抑えるためには、どのくらいの食事をとればいいのかを、議論します。

今、食事で20Bq/kgの低汚染量(日本の規制値以下です)の食事を取っていたとします。


セシウムの、生物学的半減期は、大人で70日、子供で20日。100日程度とか、110日と言うデータもあります。計算を簡単にするために、ここでは、100日と言うデータに基づいて、議論していきます。つまり、一度摂取した放射性セシウムは、その後、汚染物質を全く食べなければ、約100日で、その半分量が身体外に排出される、ということです。


1日の摂取吸収量を(20Bq/kg x 食事量1.5〜2.0kg)、と置き、吸収率を約90%とし、平衡状態の濃度を計算する。初日は0Bq/kgからスタート。
入ってくる量と、1日の減少量がつりあったところで平衡に達します。
平衡状態の蓄積量をN(Bq)と置くと、


Nの1日減少量と、摂取吸収量がつりあうということ。つまり、Nx (1/(100 x1.443)) = 20 x (1.5〜2) x 0.9
従って、平衡状態の蓄積量はN = 約3900〜5200Bq


体重60kgの成人とすると、65-87Bq/kg
Bandazhevskyの濃度を超えてしまいます。

試算では、約1年半から2年で、この平衡状態の濃度に達すると考えられます。

イメージ 1




これが、食事は、厳格に10Bq/kg以下を目指さないといけない、という理由です。
でも、厳しいことを言いますと、10Bq/kgの食事を続けていたとしても、体重33-42Bq/kgに達してしまいます。本当は、10Bq/kg以下でもまだまだ不十分で、これより、1ベクレルでも2ベクレルでも低ければ低いほど良い、という考え方も、計算上は成り立ちます。

今の米の規制値は、100Bq/kgと伺っていますが、見直しをした方がいいと思います。
きちんとした、学術論文で、Bandazhevskyという学者が、明確なデータを出しているわけです。

決して、無視していいデータではないと思います。



福島の農家の方々のご苦労と、必死の努力を考えると、このような計算結果をここに書かねばならない、ということには、大変に心が痛みます。
どうか、政府が、手厚いサポートを供し、もしも、10Bq/kg以下が達成できない農家の方には、長期的には、安全な土地での再出発を支援する体制を、ぜひとも、早急に整えてあげていただきたいと思っています。

個々の住民が、今後どのような選択を取っていけばいいのか、難しい選択を迫られる状況もあると思いますが、どうか、いろいろな可能性を考え、皆様が善処されますよう、心からお祈りしています。





(注:補足説明) Bandazhevskyのデータでは、「高血圧」になる、と書かれています。それ以外に、「血圧が不安定」と本文に記述されているのも見逃せない大事な情報だと思います。ところが一方、セシウム内部被曝をラットで模した動物実験モデルであるGueguenの論文では、「低血圧」になります。このデータの乖離を以ってして、「ほら、Bandazhevskyは信用ならない」という誤解をされるかたも、もしかしたらおられるかもしれませんので、断り書きをしておきますが、実は、この2つは、矛盾しない説明を、(ある程度は)できると思っています。後ほど、時間ができたときにでも、少し詳しい解説と解釈を、書かせていただきたいと思います。



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散々、QT延長症候群、というのを議論してきました。

いったい、QT延長のなにがまずいのでしょうか?
そういえば、以前、あるかたが、議論に乗ってきてくださり、次のような大事な意見を言ってくださいました。

「心臓なんて進化の過程で強固にできてるんだから、ごくわずかな細胞がダメになったからと言って、機能異常につながるようなヤワな臓器じゃないよ」 という感想をいわれた方がおられ、それはもっともだな、と思うのですが、

QT延長症候群というのは、心臓が「機能異常」を来たしたり、それだけで「脈が乱れたり」、している状態では決してなく、 QT延長だけで、個体がすぐに死んでしまうような状態ではない、というお話をさせていただきたいと思います。

むしろ、心電図上の、あるパラーメータであるQT時間が延長している、ということ以外は、自覚的にも他覚的にも全く無症状。 心臓も全く正常に機能している、という状態。

QT延長の何が問題か、というと、「安全マージンが少なくなっている状態」ということ、というのを、解説してみたいと思います。


生命体には、フィードバック機構というのがあって、何かの異常が起こったり、なにかの変化が起こったときに、これを、もとの状態に戻そうとする働きがあります。

これからの生物学で、もっと真剣に考えていかないといけないのは、こういった、フィードバックの「安定性」ということです。

たとえば、ハンディカムビデオに、「手振れ補正」という機能がついていますが、
これは、手振れによる、ブレ角度の情報を、メカがフィードバックを掛け、撮影のときに上手くブレがキャンセルされているわけですが、 何気なく使っている、こんなメカのこんな当たり前のフィードバックも、下手な設計をしたら、 ブレがキャンセルされるどころが、ブレが余計に大きくなったり、「発振」してしまったり、ということが起こります。 そうならないように、如何に、システムを安定にするようなフィードバックを掛けるか、ということを論じる学問があり、 「制御理論」と呼ばれています。

制御理論的には、(ちょっと乱暴な言い方を許していただければ)、フィードバックが「遅れる」ことは、安定性の余裕が無くなる、という言い方が出きます(附記参照)。




心筋細胞の、電位状態のことを考えると、上記に論じて来たカリウムチャネル、この場合にはKvLQT1と言うのは、膜電位の脱分極状態を感じ取って、 これを、再分極の側に戻そうとする、一種のフィードバック機構に携わる分子と見ることもできます。 外向きK電流IKsをオンにして、フィードバックを掛けているわけです。

再分極が遅れる、ということは、制御理論的に見れば、位相が遅れ、安定性の余裕が少なくなっている、ということです。 QT延長症候群、というのは、言ってみれば、安定性の余裕がなくなっている状態とも言えます。

勘違いされておられる方もおられるかと思うので、断っておきますと、QTが延長したからと言って、すぐに健康障害の状態が起こっているわけでもなく、 すぐに個体が死んでしまうわけでもありません。むしろ、心電図上、QT時間が延長していること以外は、自覚的にも他覚的にも、無症状と言っていいくらいです。

でも、システムとしての安定性の余裕がなくなっているので、ちょっとした刺激があると、
「不安定な状態」(この場合には、不整脈)に至るリスクが高くなっている状態、と解釈しておいてください。

ただ、一旦不安定な状態に陥ると、重篤な不整脈に通じることがあります。下記の図の、Torsades de Pointesという状態が、危険な状態です。


つまり、セシウム内部被曝は、ごく微量、体重50Bq/kgであっても、高率に、心臓伝道路障害を来たす可能性があり、Bandazevskyの明確なデータがある。他の疫学調査とも整合性があり、動物実験でも否定はされていない(私は個人的には、再現が取れている可能性があると感じます)。そして、重篤な不整脈を発症するリスクの高い状態を来たしている。

従って、食事からのセシウム内部被曝は、10B/kg以下を守らないといけません。食品、特に、主食の米は、厳格に検査し、福島の子供たち、日本のこれからの世代を、しっかりと、リスクから守ってあげて欲しいです。


イメージ 1
(他サイトからの転用です)


<<次は、話が変わって、食事の中のセシウム摂取に関して>>

<<最初に戻る>>
前頁の話が、随分と長くなってしまいました。

外向きK電流(IKs))に拮抗する、内向きKチャネルKirを、もしも放射性セシウムが、ある一つの細胞で、Kir1個だけ、オープンの状態で壊すことができたら、IKsは相対的に低下するので、QTは延長する、という話をしました。

その続きです。以下、少々、議論に厳密性を持たすために、細かい議論に走りますが、ざっくりと理解したいかたは、次をスキップして、少し下の、<<生物学的データとのすり合わせ>>に飛んでください。


-------------細かい議論に興味のない方はスキップしてください--------------------

話を簡単にするために、とりあえず1細胞に1個チャネルを壊して、影響がでるかどうかを論じるために、
N2=1とおきました。実際には、セシウムの内部被曝量から計算されるモル数、分子個数、崩壊のスピード、そして、心筋1kgに含まれる細胞数を計算すると、N2<<1の場合を想定しないといけないのは分かっているが、それは、次項にて述べることにします。

また、当然のことながら、gain-of-functionになったKirとて、数日でturnoverする。
新たな崩壊との間で、低めの、個数/細胞の割合で平衡になるだろうから、同じくN2<<1の場合の議論に含めて考える。

さらに、gain-of-functionになったKirとて、negative feedbackを受け、機能が弱まるかもしれない。かりに、downregulationに掛かる時間を数日とすれば、上記のturnoverの日数の計算範囲に掛かってきて、そのころには、また別のK-channelがセシウム崩壊の影響を受けているから、やはり、同様の桁のN2<<1の議論に含めて考えればよい。

どなたかが、突っ込んでくるだろうと思いますがら、あらかじめ言っておきますと、KvLQT1の方がオープンで壊されたら、 QT短縮するじゃないか、という可能性について。これは、多分、そんなに考えなくていい。
なぜなら、Csのaffinityは、格段にKirへの方が良いから。

-----------------スキップ終わり----------------------------------------

<<生物学的データとのすり合わせ>>


さて、随分と上の方に、粗い計算ですが、KvLQT1の開確率が、p<0.002以下であれば、QTが延長する、という数式をだしました。

まあ、かなり荒い計算で、開確率は、時間、膜電位とともに変化し、一定値を取り続けるわけではないのですが(一応、IKsの場合には、phase2の最初のころはチョロチョロ、中盤以降、後半の方に、マックスになるような時間変化をすると考えられています)

はたして、実際の、KvLQT1の開確率の様子は、どうなっているのでしょうね? p<0.002でしょうか、どうでしょうか。
下記に、ある論文からの、KvLQT1の開確率の様子を引っ張ってきました。



イメージ 1


(他サイトからの転用・改変です)




データでは40mVからのデータとなっていますが、IKsが議論となるphase2の膜電位は、(データにもよるのですが)、この近辺からphase2のIKsの働きが始まり、0mVのちょっとしたあたりまでがphase2とすると、(他の電圧での開確率も確認中ですが)

どうでしょう。p<0.002の議論、桁として、大きく外れてはいない感じに思います。


以上、もちろん、まだデータを集め切れていない部分はありますが、QT延長の可能性は、ある程度は、定量的にめどがたってきている可能性はあると思います。



もう一度、わかりやすく書きますと、KvLQT1の開確率がp<0.002ということは、KvLQT1チャネルと言うのは、自分たちが働かなければならない時(心室心筋細胞の再分極フェーズ2)においても、チンタラチンタラ、のんびりと働いてしまうチャネルである。
p<0.002という「チンタラ度合い」は、たとえKvLQT1が5万個あったとて、たった1個の、逆向きのカリウムチャネルKirが全力で邪魔しに掛かったら、影響を受けてしまうほどの、そんなチンタラ度合いである、ということ。
つまり、たった1個の放射性セシウム崩壊とて、再分極遅延と言う形で、心筋細胞機能に影響を及ぼしうる。(ただし、ノロマな細胞にしてしまっているだけで、もちろん、細胞死を引き起こすほどではない=ここ重要)。




ただし、もちろん、上記のデータは、細胞実験でのデータであり、実際の生体内でのKvLQT1の開確率が、どういう値を取るのかは、測定してみたら、この値とはずれていました、という可能性もゼロではありません。ただ、現状での入手可能なデータからは、ごく微量のセシウム内部被曝で、QT延長という可能性がありうる範囲に、カリウムチャネルの挙動としては、収まっていると考えられます。



<<次の話題では、心臓の伝道路に関して>>

<<最初に戻る>>


さて、上に断っておいたように、想定されるCs内部被曝量は、非常に少なく、一つの細胞につき、
1つもチャネルを壊せないだろうな、という濃度を議論しなければならない。つまり、上記の式において、N2<<<1の場合。

ではここで、すべての心筋細胞で、再分極が延長しないと、phenotypeとして影響がでないか、
といえば、そうではないという可能性も考えておかないといけないということを論じる。

心筋細胞が、伝達系をなすからこそ、このような独特の思考が大事になってくる。

言うまでも無く、心筋細胞は、Gap-juncitonを介して上流のペースメーカーから、下流に向かって、
脱分極、再分極の電位情報を伝達している。伝言ゲームをやっているわけです。 (注:補足説明)

イメージ 3


単純な伝言ゲームにおいては、誰かどこかにノロマなヤツがいたら、下流は次々にしわ寄せを食らう

これが、心臓を伝達系と捉えるとき、その他の臓器と違うところ。
語弊はあるが、心臓は直列処理をしている臓器ですから、並列処理をしている肝臓などとは、ことなる理解が必要。

イメージ 1




上の図を説明します。単純化しすぎではあるが、まずは1次元の直列伝達系とすれば、

C1-->C2-->C3--> …. … …. -->Cn (ただしCiは各心筋細胞)

と伝わっていく過程の、どこか一箇所が遅延すれば、最終的には全部遅延。
つまり、心筋細胞がどれか一個でも遅延すれば、最終的にQT延長となり、セシウムは目茶目茶危険と言う結論になる。

N2<<<<<<<<<<1でもQTが延長するという結論になる。でも、言うまでも無くこのモデルは正確ではないでしょう。

つまり、心筋の細胞―細胞のネットワークは、上記のように1次元の伝達系ではなく、2次元、3次元にgap junctionで電気的につながって、ある程度の伝播の冗長性があって、 興奮・脱興奮のシグナルを伝えている。

では、2次元、3次元の場合、1個の心筋の遅れが、どのくらいの影響を、全体に及ぼすのか?
逆に、全体が遅延してしまうくらいの影響は、何個の心筋細胞の遅延で生じうるのか。
これは、システムを単純化すれば、ある程度のシミュレーションが可能だとは思う。
1次元であれば、「孤立波(ソリトン)」が、バネでつながった格子モデル(戸田の格子モデルなど)を伝わっていくのを考えればいい。
途中に1個だけ、他とはバネ定数が違う格子が存在したときのインパクト。
まあ解を出そうとしたりシミュレーションしなくても、1次元の場合には、上の伝言ゲームでの遅延の話のように、
1個でも遅延したら影響が出ると言うのは予想が付く。

これを、2次元・3次元格子モデルに拡張したときどうなるかを考えればよい(下の図の通り)。

イメージ 2




あ、そうそう、ちょっと追加で断っておきますが、細胞が「死んでくれれば」、楽なんです。心筋細胞が死んだとたん、 まずgap-junctionが切り離され、伝達系から隔離されると考えられているから。
問題は、「私正常心筋細胞よ」なんて顔をして、みんなの足を引っ張るヤツが出来てしまった場合。そのことを論じています。





随分と長い議論になってしまいました。お付き合い頂き、有難うございます。
ここで、結論をまとめさせていただきたいと思います。


----------------------------------------------------------------------------------
極く微量のセシウム内部被曝、体重あたり50Bq/kgで、高率に心臓伝道路の機能障害が起きる、というBandazhevskyのデータは、いくつかの仮定をおけば、正しい可能性が高い。QT延長症候群を引き起こしているというメカズムは、最新の医学知見と矛盾していない。その他の疫学調査と整合性もあり、動物実験でも再現されている可能性がある。
----------------------------------------------------------------------------------



従って、食事からの放射性セシウム摂取は、引き続き、注意をし続ける必要がある

以上が、結論です。



(注:補足説明)最近の循環器学の数々の実験医学データからは、心筋細胞のギャップジャンクションを介したシグナルの伝播が、再分極にも重要だと言う実験データが蓄積しています。Phase 2の持続時間はIKsが主因と考えられていますが、生体内での、脱分極持続時間(APD)の、心筋細胞-心筋細胞ごとのズレは、ギャップジャンクションを介したシグナルが重要です。つまり、個々の心筋細胞自体それぞれにも、再分極時間を決める自律機能があるけれど、心臓全体の調律の協調を行うために、再分極も協調リズムを取っていると考えられています。ここからは、あくまでも、仮説としてですが、phase 2-->3のトランジションの伝播が大事なのかな、と個人的には理解しています。phase2の遅れが、モロに下流に効いて来るというモデルは、この再分極のギャップジャンクション協調モデルに従っています。後ほど、補足させていただきたいと思います。



<<次は、再びQT延長症候群について議論します>>

<<最初に戻る>>
ここで行う議論は、

<<<ごく微量のカリウムチャネルがオープンの形に壊れたときに、影響が出うる可能性を定量的に検討する議論>>>
です。QT延長症候群と言うものに関して、議論してみたいと思います。

ちょっと、専門的になりすぎるかもしれないのですが、まず、第一のポイントは、分子の壊れ方を2通りに分けて考える。

ひとつはloss-of-function (ここではチャネルがclosedの形に壊れる)。
もう一つはgain-of-function (ここではチャネルがopenの形に壊れる)です。


ちょっと乱暴な言い方になって、正確ではありませんが、この場合、と限定して論じさせていただければ、
前者はrecessiveな異常分子として捉えることができ、細胞機能にも影響はほとんど出さないまま、turnoverされて、それでおしまい。
後者は、定量計算にもよりますが、dominantな異常分子として働きうる可能性を持っていて、場合によっては、数万個のうち、たった一つでも、 細胞の機能に影響を与える可能性すら否定はできない

という感じの流れになっています。
<注:dominantな異常、recessiveな異常に関する補足>

ポイントは、世の中の医学者に支配的な考えというのは、
「ごく微量の分子が壊れても、5万とある他の分子が機能をカバーしてくれて細胞の機能に影響など出るわけが無い」
「心臓にkg当り10の11乗個もある細胞のうち、ごくわずかが機能異常になったからと言って、心臓の機能に異常が出るはずが無い」
この2つの、固定観念のために、Bandazhevskyのデータを信じられない
、と、検討する前から、可能性を排除してしまっているのが実情だと思います。

ですが、きちんと定量的に考えれば、可能性は十分にありうる、という結論に達します。
この議論では、上記のオープンvsクローズの議論以外に、ちょっと乱暴な言い方をしますと、「心臓は直列処理をしている臓器で」、「並列処理をしている肝臓などとは影響の出方が違う」 というのが、もう一つのポイントです。

まずは、心臓の伝道路と、心電図の成り立ちについての基本事項です。

イメージ 2

(他サイトからの転用です)

ここでは、QT時間についてのみ、議論します(本当は、丁寧に考察していけば、QRS波形にも影響がでる可能性も考えられるのですが、このウェブサイトでは無視します。<注:補足説明1>)

上記の心電図の、QRS波のはじめから、T波の終わりまでを、「QT時間」と呼びます。これが延長しちゃうと、まずいことになってしまうのですが、なぜまずいか、という詳しいことは後回しにして、まず、

QT時間が何できまるか?

上図にあるように、洞房結節(SA node)、心房(Atrial Muscle)、房室結節(田原結節、AV node)、ヒス束-プルキンエ線維(図中には描いていません)を出た後、心筋細胞に興奮、脱興奮が伝わり、心室細胞から心室細胞に、細胞間のギャップジャンクションという部分を伝わって、電位の変化の信号が伝達していきます。(本当は、脱興奮にかんする伝わり方は別の見方もありますが、信号が細胞から細胞に伝達するのが重要、という見方は同じと考えることができます)。

つまり、上図の、青い波形の、なだらかな右肩下がりの部分が、延長するかどうかで、QT時間が延長するかどうかが決まります。

この部分を詳しく見ましょう。下図のphaseの2-3の部分の議論です。

イメージ 3

(他サイトからの転用です)


この部分で、大事な、「心筋再分極時の外向きK電流」というのがあり、IKsとかIKrとか呼ばれています。
知っている人にはわざわざ説明する必要もないことなのですが、下の図のように、心筋細胞が静止時には、細胞内Kイオン過剰、細胞外Naイオン過剰となっています(これら2つのイオン以外に、細胞内には陰イオン過剰となっているので、細胞膜電位はマイナスです=分極状態)。心筋興奮時には、まず、Naチャネルが開いて、Naイオンが流れ込むために、細胞内が陽イオン過剰となり、細胞膜電位はプラスに転じます(脱分極=興奮している状態)。
で、心筋細胞が、もういいやって思って、興奮を鎮めるときは、今の逆をやってNaを汲み出すのではなく、今度はKイオンを外に出すことによって、陽イオン過剰状態を是正します。ちょっと考えていただければ分かるんですが、その方が楽なんですよ。 (狂ってしまったNaとKの濃度勾配にかんしては、あとでゆっくりと、その他のチャネルや、ポンプといわれる別種の分子をつかって、もとの状態に戻していきます)。

つまり、再分極には、外向きK電流(IKs, IKr)が大事


イメージ 4

厳密に定量化するには、まだまだ我々は最先端の知見でもデータをそろえきれないのですが、この心筋再分極時の外向きK電流に関して議論してみます。IKs, IKrのうち、どっちかに絞った方が 話がはやいんで、IKsについて。繰り返しますが、再分極時の外向きK電流でQT時間が決まる。 IKsやIKrが小さくなれば、流れうる電流が小さくなりますから、同じ再分極電位に達するのに時間が掛かる。つまり、QT時間が延長する。

いきなり、端折って、式を出します。

総電流 IKs = N x p x i

(ただし、ここで、Nは総チャネル数。pは開確率、iは単一チャネル電流)

セシウム内部被曝で、この、外向きK電流IKsが、有意に小さくなることがあるかどうかを、以下に延々と議論して行きます。
もう一度繰り返しますが、IKsが小さくなれば、QT時間は延長するからです。


とりあえず、この場合、チャネルとしては、KvLQT1 (KCNQ1)を考えておききましょう
総数Nに関しては、今はとりあえず数万(ここでは5万)という数字を受け入れておくことにしましょう。
iは数pS。簡単に試算するために、単位を省いて、i=1としておく。


開確率pは、膜電位と時間の関数です。
KvLQT1というのは、膜電位の「脱分極状態を感じ取って」、オープンになります。つまり、膜電位の関数、というのは、そういうことです。

さて、イオンチャネルのことに詳しくないかたは、話がこんがらがってきたかもしれません。
別のイオンチャネルを例にとって、「開確率」のことを説明しておきます。
イメージ 1

チャネルがクローズ、つまり閉じているときは、ほとんど電流が流れません(開確率はほとんどゼロ、ということ)。上の図の、上段あたりのグラフです。チャネルがオープンの状態になると、上図の下段のグラフのように、少しずつチャネルが開く確率があがり、電流が流れやすくなります。開確率が上がった、ということです。

つまり、イオンチャネルの世界では、チャネルが、開いたり閉じたり、という現象を、この、「開確率」という確率で表現します

上の式の、pというのが、開確率です。

ただし、以下の議論では、外向きK電流 の責任領域のフェーズ、つまり心筋再分極時phase2の約200msecの間の、時間でおしなべた 「時間平均の」開確率として扱います。ピークじゃないですよ。
仮にピークでの開確率が0.3-0.6くらいの範囲だったとしても、時間平均、1分子平均にすれば、 もっと小さくなる。つまり、p<<1。


このような、時間平均チャネル平均で極小なpの元では、Nが1つ減って 50000 --> 49999 に変わったところで、全く総電流IKsには変化が無い。 KvLQT分子が、一個消えてなくなっても(クローズの状態で壊れて、怠けて休んでいても)、全然気にならない。

IKs = N x p x i

の、Nが5万分の1減ったところで、屁のカッパ、ということです。

実は、原発事故後も、「セシウムの化学毒性は低いから、心臓に影響なんて、よっぽど高濃度じゃないと出るはずがない」という考え方をする議論もあったんです。
つまり、この、「クローズの状態で怠けている」というのが、心臓に全然影響の出ないパターン。そして、私が、recessiveだとか、loss-of-functionの方のパター ンだと分類している、チャネル分子の障害メカニズムの一つ。全然影響が出ない。


言ってみれば、会社員が5万人いて、そのうちのごく一部の社員しか真面目に働いていなくて、 しかも働いている会社員も、適当にサボっている状況で、一人の社員が欠勤しても、気付かれる ことすらない。

コールドのセシウムによる化学毒性、というか、生理学実験で普通に用いられるチャネルブロックの手法は、こちら側になる。影響を出すためには、超超大量に投与しなければならない。

実際、coldなCsをラットに投与してQT延長させる実験の論文があるんですが(上の方に書いた Gueguenの論文とは別の論文です)、モル計算で、Bandazhevskyのデータの10の9乗くらいの 超高濃度を入れてやら無いと影響がでない。まあ、ここに書いたとおりです。

もう一度、まとめ、書き直しておきますが、KvLQTによる外向きK電流の寄与は

IKs = N1 x p1 x i1     ......①

です。
但し、ただし、N1, p1, i1はKvLQT1の総チャネル数、開確率、単一チャネルコンダクタンスです。 
ここで、N1=50000, p1<<1, i1=1。

つまり、細胞1個あたりに、チャネルは5万とあり、開確率はとても小さく(チンタラチンタラと働くチャネルであるということ)、単一チャネルコンダクタンスも取り立てて大きなものではない(これは、簡便のために、無単位数の1とおきました)。


さて、別のカリウムチャネルに注目してみましょう


一方、上記の外向きK電流に関するチャネル以外にも、心筋細胞には、内向きKチャネルがある。とりあえず、大まかにKir系。 この内向きKir系のチャネルは、KvLQT1に比べ、単一チャネルコンダクタンスが10倍くらい良い。つまり、上記のiが10倍。
ホットなCs分子(放射性セシウム、Cs134/137)が、仮に、このチャネルを、openの状態に壊すことができたら、これはgain-of-function の状態で壊している、ということ。

今、仮に、ホットなCsで、ある1つの細胞で、1個だけ Kirをオープンの形で壊すことができたとしましょう

つまり、Kirが、生来、心筋細胞の脱分極・再分極のどのフェーズでどんなはたらきをしていて、
チャネル特性がどうで、pがもともとどうだったかなんて、全然関係ない。
外向きに拮抗する、内向きチャネルを1個だけ、p=1に固定できる、ということ。
(注:その他のKir分子は、このフェーズでは、外向きK電流の邪魔をしないように、クローズ(closed)になっています。つまり、この1個のKir分子以外の49999個に関しては、p=0です)。

この場合のKirによるK電流は、N2 x p2 x i2  ......②

ただし、N2=1, p2=1(オープン固定された1個のチャネルは完全にオープンに固定されており(p2=1)、それ以外は全てphase2では閉じているから)、i2=10(コンダクタンスの良いチャネルであるということ)



たった一個のオープン固定されたKirチャネルが、KvLQT1のチャネル集団に、どれほどの影響を与えうるかを比較するため、①と②の大小をざっと比較してみます。

N1 x p1 x i1   -  N2 x p2 x i2
但し、ここで、上に説明したとおり、N1=50,000, p1<<1, i1=1で、N2=1, p2=1, i2=10 です。


ざっとした概算ですが、もしも、p1の時間平均チャネル平均の確率が、p1<0.002以下であれば、IKsは顕著に(1割程度)変化することになり、 QT時間は延長することになる

これが、仮定として、hotなCsがdominantな形に(オープンの状態に)Kチャネル(特にKir系)を壊すことがあれば、 ごくわずかなCs内部被曝で、QT延長につながるかもしれない、というひとつの可能性。

イメージ 5



<<ここのKirの議論は、誤解を受けやすいので、補足説明2をしておきました:リンクに飛んでください>>


話を簡単にするために、とりあえず1細胞に1個チャネルを壊して、影響がでるかどうかを論じるために、
N2=1とおきました。実際には、セシウムの内部被曝量から計算されるモル数、分子個数、崩壊スピード、タンパク代謝速度との平衡、そして、心筋1kgに含まれる細胞数を計算すると、N2<<1の場合を想定しないといけないのは分かっているが、それは、後ほど述べることにします。



<注:補足説明1>QT延長以外に、QRS異常(脚ブロック様変化)、再分極の不均衡のもう少し詳しいメカニズムからST部分の異常、J波出現などの可能性も想定に入れています。胸部不快感や心電図異常などから心筋梗塞を疑わせるのに、逸脱酵素上昇の見られない不可解な症例では、鑑別診断のひとつとして、セシウム心筋症を選択肢に入れ、そういう症例では今後、内部被曝実測をしていく必要があるのではないかと思います。
<補足2>KvLQT1への影響は次頁。


(4/10/2016):説明を端折りすぎていた箇所がありましたので、少し修正させていただきました。


<<次の議論は開確率を再び検討し、定量的な考察をします>>

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