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書庫ショート小説「あいつ」

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この物語はフィクションであり、ここに登場する人名・地名・団体名、その他あらゆる名称は架空のものであります。
よって、本物語に対する、ご質問・ご要求・ご意見・訴訟に関する諸問題は一切お受けできません。

「真夏の夜の夢」

ハバナの夜は蒸し暑く、髪の毛もべったりと肌にくっ付くような感じで、
街内は夜中の12時を回っていると言うのに、賑やかこの上ない。
繁華街には、コールガールやら如何わしい薬やタバコを売る子供。
そして、闇の中に潜めく犯罪の匂い。
唯一、高級ホテルの中はエアコンが勢い良く回り続け、別世界を繰り広げていた。
ダビドフのNo.9の葉巻に火を点けて、ゆっくりと1960年物のコニャクのグラスを回し続けている。
この部屋から見える、キューバの国会議事堂の正面には、カストロの肖像画が掲げられていた。
楊楊は軍服を着た髭で顔の半分も見えない、しかし目だけは獲物の喉首を噛み殺す勢いの視線を
ギラギラと放ち続けているその男の前で、ゲルベゾルテの細い葉巻に火を点けた。
沈黙の中のピアノ線上の交渉。
このピアノ線が切れてしまったら、多分私はこの世に居ないだろう。
楊楊は微笑んだその瞳の中で、一瞬の隙さえも見せないように、注意深くそして沈黙を噛み殺していた。

カーロス・ゲバラ・・・。
どうでしょう?
あなた方に取っても、悪い話ではないと思いますが。。。。
パトリオットの迎撃誘導ソフトと電磁誘導装置、それとオプションの開発技術者を
こちらに渡してもらいたいのです。
イスラエルに送って、インド経由で北に運ぼうとしているものは、偽物と判明しています。
貴方がそんな方法を使うはずはない。
もっと、直接的な方法が貴方・・・カーロスのやり方。
太平洋を漁船で北上して、アラスカ経由でベーリング海を渡り、シベリア経由で輸送する気ですね。
カーロスはダビドフの葉巻を灰皿に押し付けた。
楊楊さん・・・。
私達は、アメリカの横暴を許すわけにはいかないのです。
世界の勢力地図は、いまやアメリカ主導型では無くなって来ています。
それはご存知でしょう。
ただ、まだ新勢力の創世記です。
アジアの力が弱すぎます。
一口にアジアと言っても、イスラム−イスラエル圏での争い。
パキスタンでの内乱。
チェチェンの内乱。
アチェのクーデーター。
中国の農民問題でのデモ闘争。
北朝鮮の秘密警察とスパイ工作員の動き。
そして、総書記と軍部との確執とクーデーターへの恐れ。
アフリカでは至る所で、クーデーターが未だに絶えません。
我々、キューバはご存知のように、カストロが全てを掌握しています。
しかし、もうそうは長くは無いでしょう。
先に、PLOのアラファトが逝きました。
現在でも、跡目相続が決まらない状況です。
キューバはそうはなりたくは無いのです。
しかし、世界のインターネットからの情報は目まぐるしく、この国の土台すら傾かせています。
しかし、幾ら規制を掛けても、知りたいと言う欲望には勝てません。
従って、キューバの全国民に対して、軍部の統制令とそしてキューバ国民が全員一致できる
大儀が必要なのです。
その大儀のために、我々はケネディー大統領時代のキューバ危機の再来をします。
カストロの死を無駄にせず、ロビイストの検挙、政治犯罪法の適用をして、アメリカ系のスパイの
国外退去。
そして、核の保持。
これが我々キューバ国民が、カストロの死後に行う揺ぎ無い国防なのです。
カーロスは楊楊の目を外さなかった。
この美しい東洋系の女は、一体なんのために、俺に会いに来たのか?
死ぬ事も恐れずに。。
それ以上の大儀が、この女の中に有るのだろうか?
カーロスは分からなかった。

楊楊は静かに囁いた。
カーロス。。。
では、オプションとして、日本の核燃料再処理工場から搬出されつつある、
使用済みプルトニュムをこちらに搬入しましょう。
最低、3機の核搭載ミサイルが配備できますよ。
ただし、こちらの要求を直ちに実施していただかなくては、このお話は無かった事に。。。。
楊楊はニコライのライターで、再度火を点けようとしていた。
暫くの沈黙が流れた。
そろそろ、3時を回る。
あと2時間で、イスラエルのモハメッドは動き出す。
楊楊が此処来たと言う事は、モハメッドは多分殺されるのだろう。
あの作戦は失敗か。。。
カーロスは想像した。
北は焦り出すだろうな。
その時、フランスの動きはどうなるのか?
ミッテランは口を閉ざすだろう。・・・単なる失敗として。
だが、キューバはカストロの死のカウントダウンが始まりつつある。
時間が無い。
このままでは、キューバが自由社会国家に侵食されて、破壊してしまう。
カーロスはブレゲのクロノグラフを覗き込んだ。
そして微笑んだ。
楊楊さん・・・・。
貴女は此処から帰れると思っているのですか?
此処はキューバですよ。
もう国外には出られない戒厳令の時間帯だ。
貴女の見方は一人も居ない。
そう・・・貴女と一緒に来たアメリカ海兵隊員とSEALSのメンバーは皆、死んで頂きました。
報告が遅れてすみません。
カーロスは、窓際まで歩き、国会議事堂に飾られている、カストロの肖像画を見ていた。
一瞬の殺気が走った。
カーロスは振り向きざまに、窓際の机の下に転がり込んだ。
そして、ワルサーP38のセイフティーロックを外し、楊楊に狙いを定めた。
楊楊は座ったままだった。
しかし、楊楊の眉間には彼女のブローニング・オートマチックの銃口が向けられていた。
楊楊は話し始めた。
カーロス!
命にはどんな意義があり、その意義は何をするために有るのでしょうか?
私は、ベトナム戦争の落とし子であり、ポルポトを叔父に持つ女。
でもこの命は痛みを知り尽くしている。
だから、これ以上私のような孤児を増やしたくは無いの。
貴方の父のチェ・ゲバラもカストロに殺された。
そんなやり方を、貴方は引き継いで、このキューバを戦場にしようとしている。
本当の意味はなに?
カストロとかアメリカの勢力とかじゃないでしょ?
貴方の本当の心の奥底に流れているものは、カストロに父を殺された。
その仕返しをアメリカに向けているだけ。
カストロに向ければ、それは国民を敵に回すから。
そして、国民と言う財産を使って、自分一人のエゴを貫こうとしている。
大儀だと言ってね。
私は悲しい。
もっと、人と言うものを大切に、労わって愛しさを与えて欲しい。
それが出来るはずなのに・・・・それが悔しくて。。。怖い。

カーロスは目の前の女が自殺してまで、自分の心の中に光りを当てて、
そして諭してくれる事に胸が熱くなった。
図星だな。
楊楊。
参ったよ。
銃を仕舞ってくれ。
話を続けよう。貴女の提示するオプションだが、
そのプルトニュウムは使えるのか?
楊楊は銃を仕舞いながら応えた。
それには、フランスの技術者が必要です。
簡単なことでしょ?
そんな人間をキューバにご招待する事は。
カーロスは突然・・・笑い出した。
楊楊。
お前・・・最高だ!最高だよ。!!
ミッテランを人質にしろって・・・。
こりゃ最高だ。
面白い。それもアメリカに対しては大いなる脅威になる。
その話、乗ったぜ。
プルトニュウムは核弾頭には使えないものだろう。
それは小麦粉でも構わない。
要は、ミッテランだ。!
面白いぜ。。。
では、私の提案を呑んでいただけますね。
良かろう、今から手配する。
パトリオットの迎撃ソフトと電磁誘導装置、それにソフト開発者は、
3日後に沖縄の空港に着くだろう。
そして、そちらは何時から、その「ぶつ」を手配してくれるのかな?
世界サミットが今年の夏にヨーロッパで開催されます。
その時に、バカンス旅行をして頂こうと・・・・。

では、楽しいバカンスに乾杯!
乾杯。!
楊楊とカーロスは、モヒートで明日の世界地図を塗り替えようとしている。
カーロスは相変わらず、大きな声で笑いながら部屋を出て行った。
楊楊はゲルベゾルテの細い葉巻にニコライのライターで火を点けた。
薄い煙が、部屋中に漂った。
ニコライ・・・キューバは貴方の好きな場所だったわね。
このキューバは汚さないわ。
貴方の大切な想いが詰まっているものね。
死は形の有る物で、心が死んだわけではない。
心が死ぬ事が一番辛い。
貴方の言葉だったわね。
ニコライは私の中で何時までも生きているし、
私に生きる力と、その進むべき道をいざなってくれる。
ありがとう・・・ニコライ。

ハバナの夜明けはとても美しいと聞く。
薄紅色に染まりつつある窓辺に佇み、楊楊は窓を一気に開け放った。
少し冷たい風が部屋の中に流れ込んできた。
新しい夜明けの空に、バラ色のドレスが揺れた。

・・・続く・・・

あとがき。

最近忙しくて、なかなか書く時間が取れ無くなっています。
ごめんなさい。
書く時間は何とか成るのですが、構想を練りこむのが結構大変で。
出演頂いている方の、ブログからのキャラをあまりにも壊してしまうのも
・・・なんですし。
出来れば、ありのままで行きたいのがやまやまなのですが、しかし、こちら作り手の
想い入れもありまして、結構皆様には不愉快な思いをさせているのかな?
と思うのですが、もう少しお付き合い下さい。

さて、色々な問題が私も含めて「ひと」の上に下に、そして中には存在しますね。
一つしか無い体ですから、一つずつ整理をしていかないと、これは、
どうにも成りませんね。
問題は一斉に発生しますが、その回答や解決は一つずつしか出来ないのです。
だから時間が掛かります。
悩んでばかり居ないで、たまには悩む事も忘れて、
大きな声で笑いましょう。
私もそのように心がけています。
ではでは。
また次回をお楽しみに。

  • 復讐をすれば、また新たな恨みの種が落ちるだけ。。。楊姉さんはそれを身を挺して止めようとしたわけですね(゜Å) 小麦粉でもかまわない。。。結局最後は頭脳戦。実際の戦争も血を流さずチェスかなにかで決めてもらえればいいのにね(´・ω・。`)チビと同じおっぱい口のくせを持つ、2歳半のイラクの女の子が先日白血病で亡くなった特集を見て。。。何故子供の環境に優劣があっていいのかと泣きながら思いました。少なくともアメリカの子供はこんな理不尽な亡くなり方はしないはずです。

    *りとる*

    2007/4/9(月) 午後 4:21

  • 顔アイコン

    人間は、いま現在起きている事を認識するが、そこから学ぼうとはしない。これは過去の歴史がはっきりと証明しています。だから、同じ過ちを繰り返す。現世は天国であってはいけないのでしょうか?みんなが笑って生きていける世の中になりたいものですが、人間と言う動物はそうも行かないらしいですね。

    gery  funabashi

    2007/4/10(火) 午前 4:30

gery  funabashi
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