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この物語はフィクションであり、ここに登場する人名・地名・団体名、その他あらゆる名称は架空のものであります。
よって、本物語に対する、ご質問・ご要求・ご意見・訴訟に関する諸問題は一切お受けできません。
「誓い」
不思議と恐怖感は無かった。自動小銃が自分を狙っていても、
何時もよりも冷静な自分が居る事を感じていた。
周りで仲間が銃弾に倒れている。
その人数は、数秒間で片手の指を越えた。
中央操作室に登る最後の階段。
上から、数人の武装特殊警官が自動小銃で自分を狙っている。
こままでは、そこにいけない・・・・。
背後にも人の気配を感じる。
さきは右手のひらが汗ばむのを感じ始めた。
背中合わせに三上三尉が背後を監視・援護している。
じりじりと、10センチにも満たないだろうか?・・・その距離が遥か彼方の永遠のように・・・
なかなか辿り着けない。
このまま、この場所で朽ち果てて終わるのか?
さきは階上のドアに視線を向けている。
が、しかし、自分の拳銃の弾が最後の弾装に成った事を気にしていた。
あと、6発で弾が無くなる。
あと・・・6発。
三上三尉!弾は有るのか?
三上は答えなかった。
さきは全てを理解した。
前に3人。
背後に2人。
彼らの自動小銃からは横殴りのビンタのように、
弾が飛んでくる。
突然さきは背中に暖かい感覚を覚えた。
三上! さきは明らかに動揺した。もしかして。
・・・・三上三尉は小さな声で答えた。
俺の腹のところに2発の手榴弾がある。
これを取れ。。。。
さきは一瞬、目を泳がせた。
三上が・・・。まさか。
さき!俺の腹から手榴弾を取れ!
三上はもんどりを打って、倒れかけ、自動小銃の先を階段に突き刺し、やっとの事で持ちこたえた。
さきは三上三尉から真っ赤に成った手榴弾を自分の胸ポケットに差し込んだ。
さき・・・・。一発をドアに目掛けて投げろ。
絶対にドアを外すな。
あいつらは、一瞬怯む。
その時しかチャンスは無い。一回きりだ。さき・・・・。
俺は立ち上がって、背後の奴を引き付ける。
後を向かないで、ドアの内部に入り、そしてもう一発を、
中央操作室のコントロールナビゲーションシステムに投げろ。
メインコンピューターは黄色いテーブルだ。
そこを破壊するんだ。
そうすれば、使用済み核燃料の搬送システムは自動では動かない。
あとは、手動で搬送するしかない。
そのときは「あいつ」が阻止してくれる。
そのいしずえとなるのが、今現在の、我々・・・さきと俺の任務だ。
当初の任務とは違ってしまったが・・・そんな事は、日時茶飯事だよな。お互いに。。。
だから、俺達の目的の達成を仲間に託そう。
そのために、今の力でできる事を確実に遂行しよう。
さき・・・分かってくれるか?
しかし、このミッションも大変だがな。。。
すまんが、腹のベルトを目一杯きつく締め付けてくれないか?
このままじゃ、俺は立てない。
わっわかった。やってみる。
さきは、背中合わせの三上三尉のベルトを両手を背後に回し、
きつく締め上げた。
両方の手にはぬるぬると暖かい血が張り付いた。
三上!死ぬなよ。
頼むから・・・お願いだから・・・。
さき・・・いままで楽しかったよ。
お前みたいな奴とは、もっと前に出会いたかったな。
また、何時か逢おう。その時まで楽しみにしている。
「三上三尉」・・・!
ただいまより、さき警視庁特別捜査官の背後を援護するために、
階下の2名の警察特殊部隊と戦闘状態に入ります。
では、成功をお祈りします。
敬礼!
三上三尉はそのまま立ち上がり、背後に対して自動小銃を撃ちまくった。
階上のドア付近に居る3名も三上に標準を合わせた。
さきは、その一瞬を逃さず、階上のドア目掛けて手榴弾を投げつけた。
突然の豪雨の中で、一瞬の静寂を感じたときは無いだろうか?
その時は、多分全く異次元の事を考えている時が多いと思う。
または焼けるような暑さの中で、一瞬の清々しさと涼しさを感じるときや、
自分が現在、何故?この場所に居るのかさえも忘れてしまうような・・・
そんな感じを持ったときは無いだろうか?
それはもの凄く一瞬で・・・1〜2秒程度の時間かも知れないが、
しかし、その時思っていた事って、何故か引きずってしまう事が多い。
そして、夢なのか・・・と現実の次元に引き戻される。
心の幻。時間を超越した瞬間、人は正直になれるのかも知れない。
ドアは完全に爆破した。一瞬の静寂を逃さず、さきは階段を駆け上がった。
3名の屍を乗り越え、中央操作室に飛び込んだ。
と、同時に銃弾の雨がさきを襲ってきた。
さきは、体中に痛みを感じた。
しかし、恐怖は感じなかった。
いま、さきが見ているものは、黄色いテーブルのメインコンピューターだけ。
手榴弾を投げつけた。
投げた・・・はずだった。
でも、その前に腹が異常に焼けるように熱く成っているのを感じた。痛い!
意識が薄れていく中で、踊るように銃弾を浴びせかけられている自分を感じていた。
まだ、意識がある。
このまま、あと4歩・・・・。遠い、永遠な距離に見えるほど・・・遠い。
記憶が薄れていく。
手榴弾は右手の中にある。
安全ピンを抜くんだ。左手を右手の上に持って行け!
さき・・・。
体が動かない。
あと2歩。転がっている椅子に足を取られた。
勢いが付いて、コンピーターのキーボードに自分が張り付いていた。
安全ピンを抜け・・・・・。
ぬけ・・・・ぬけ・・・・抜くんだ。さき。。
突然の閃光。中央操作室のメインコンピーターは意識を失った。
全ての制御が自動運転から手動運転モードに切り替わった。
三上三尉航空自衛隊沖縄基地特殊部隊勤務・・・殉職。
コードネーム:さき・・・警視庁特別捜査官・・殉職。
「あいつ」と国重警視庁総監はこのオレンジの閃光を見た。
そして、さきと三上三尉の死を認識した。
あいつは使用済み核燃を搬送するクレーンの爆破を指令した。
すでに、プラスチック爆薬の取り付け完了している。
問題は、使用済み核燃料を船に搬送する時に爆破して、
燃料が公になるように仕向ける事。
それと、この場所で国重長官を殺さないで、確保すること。
国重を生かして確保する事は、無理かもしれないとあいつは思っていた。
死んで居て欲しいとも願った。
かつての自分の上司である、国重には若い頃にいろんな事を教わった。
彼が人生のかけがえのないひとでもあった。
国重長官はあいつを認識した。
国重の周りには武装特殊警官が10名。
こちらは、特殊自衛官が残り3名。
到底、勝ち目は無い。
既に銃弾も残り少ない。
夜明けまで、あと2時間。
楊楊・・・・。まだか。。。
あいつは、クレーンの爆弾のリモートスイッチを右手首の袖の中に仕舞った。
そして、立ち上がり、両手を挙げて国重の前に立った。
長官・・・・私の負けですね。
もう、無駄死には止めましょう。
これで終わりにします。
賭け・・・だった。
国重はこんな芝居には引っかからない男だ。
それはあいつが十分知っている。
国重が出てくれば、あいつの背後から狙撃される。
逆に、国重があいつを狙撃したら、クレーンが爆発される事を知っている。
だから、あいつを撃てないのだ。
国重は立ち上がった。
・・・暫くの沈黙。
「どうして負けたと言う?まだ勝負は付いていないがな・・」
お前らしくないことをしているな。
俺は、お前にそんな事を教えていないぞ。
・・・確かに、こんなやり方は国重長官からは、教わっては居ない。
国重のやり方は、絶えず自分の逃げ道を最初に作り、
其処に相手を誘導しながら勝ちを収める方法である。
こんなふうに、自分の退路を絶ち、いちかばちかの勝負には、絶対に出てこない。
でも・・・今の国重長官は、そのやり方にミスを犯している。
彼の背後は海であり、頭上には使用済み核燃料がぶる下がっているクレーンがある。
いまクレーンを爆破したら・・・彼は死ぬ。
退路は無い。
ただし、あいつが絶対にクレーンを爆破出来ないと言う計算に間違いが無ければの話である。
国重長官は、あいつに軽いジャブを打って来た。
あいつの左二の腕の肉片が飛び散った。
あいつは何食わぬ顔で、その場に立ったままで居る。
長官・・・・まだ信用していないのですね。
昔と変わりませんね。その用心深さは。
今度は右膝の肉が飛んだ。
倒れかけて、あいつはうずくまった。
まだで・す・か・ね・・・・。
国重長官は、モニテクリストのNo.18の葉巻をくわえ、そして、
あいつの前にゆっくりと、静かに歩いてきた。
お前は、もうお仕舞いだ。
俺の勝ちだ。
長官・・・・火をお付けしましょう。
あいつは、右袖に仕舞った、ライターのようなものに、
指を掛けた。
国重の顔色が一瞬大きく変わった。
次の瞬間、クレーンの4本の足から大きなオレンジの火花が漆黒の空に舞い上がった。
あいつは大きく横の波止場のもやいに飛び込んだ。
国重は、空を見上げて、大声を張り上げた。
俺の未来が。。。。
クレーンのワイヤーが外れて、国重長官の頭上に使用済み核燃料の保護カバーが落ちてきた。
国重はその下で永遠の眠りに付いた。
武装警官と自衛隊特殊部隊の戦争が始まった。
お互いにどちらかが生きて帰るか?
死すか?
の戦いが始まっていた。
10名の武装警官は扇型に散開して、3名の自衛隊特殊部隊に対して鶴の様に襲い掛かかっている。
3名は互いに背中を付けて、360度の視界確保をした。
闇の中では、人数の多いほうが強い。
自衛隊員の一人に・・・サイレンサーを装着した自動小銃の弾が、頭に当たった。
すいかを砕くように、頭蓋骨が割れた。
二人になった。
あいつは、まだ意識が無い。
ただ海に漂っているような、夢を見ている。
「楊楊」・・・あいつは無視域の中で叫んでいた。
2名になった自衛隊特殊部隊は、弾を撃ちつくした。
白刃戦を覚悟した。
お互いに散開して、警察特殊部隊に闇の中から、
ひとり、そしてまた一人と襲い掛かった。
がしかし、暗視カメラ付きの自動小銃には叶わない。
警察部隊は、あと3名になった。
そのとき、一人の警察官があいつに狙いを定めた。
一人がそいつにナイフを投げつけた。
狙いをつけた警察官は無言で倒れた。
しかし、自衛隊員は、それに狙いをつけていた警察官に撃たれた。
最後の自衛隊員と2名の警察官。
どちらも実戦の経験者である。
直ぐには決着は付かない。
膠着状態が続いた。
夜明けまで、あと一時間。
・・・つづく・・・
製作のお詫び
なかなかVOL.11から進みませんでした。
構想すらも考える時間が最近無く成ってきました。・・・嘘です(^^)。
あと2回お付き合い下さいね。
では。
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