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この物語はフィクションであり、ここに登場する人名・地名・団体名、その他あらゆる名称は架空のものであります。
よって、本物語に対する、ご質問・ご要求・ご意見・訴訟に関する諸問題は一切お受けできません
真夜中を走り続ける一台のハーレー・ナイトライダー2000CC・・・。
既に200kmは走ってきた。
夜明けまでにあと2時間程度。
朝焼けの寒さが、ロシアKGBの狙撃手ユーリーに撃たれた左腕を熱く燃えさせている。
ジャッカルは無灯火のまま、150km/h近いスピードでブルターニュの郊外を走っていた。
パリまではもう直ぐである。
夜明けまでに、あの店に入らないと、北とインドやイスラムの奴らがうるさく付きまとう。
ジャッカルはイラつきながら、スロットルを全開まで絞った。
群青色に染まりつつある星空に、真紅のドレスが踊る。
楊楊は、ジャッカルの背中で夢を見ていた。
そう、子供の頃のニコライとミッシェルの店に来て、そしてフランスを中心に、スロバキア、
イギリス、そしてパキスタン、イラクまでのゾーンのテロリストや武器商人たちを相手にして来た。
自然と拳銃の腕も上がった。死ぬか生きるか何て、楊楊は考えていなかった。
ベトナム戦争の孤児としてニコライを父として、
そして暖かな家庭も築けないで祖国を捨てざるを得なかった。
ニコライは祖国の英雄でもあるのに、その故郷からたたき出された。
常に付きまとう孤独感。挫折をする事は誰にでも出来るし、簡単な選択枝だ。
だが、ニコライはそうではなかった。
何時もニコライは楊楊に言い聞かせていた。
「自分の思うままの正義に生きろ・・・と」
最近ようやくその事が、楊楊の胸の奥の痛みを激痛に変える時がある。
ニコライの死から。。。全ては変わった。何もかも。
突然、ジャッカルはウィンチェスター・コマンダーのショットガンを2発撃った。
楊楊は目を覚まし、右手のブローニングオートマチックのセーフティーロックを外していた。
「どうした!」楊楊が叫ぶ前にジャッカルが話し始めた。
楊楊!客人だぜ。でかいぞぉ〜。と言って口笛を、さもセクシーな女に対してふざけるように吹いた。
前から、15tonトレーラーが一台、そして後から同じトレーラーが2台。
その中に、ナイトライダーが遭難しかけた小船のように漂って居た。
俺たちを挟み潰すつもりだ。
トラックのフロントガラスは防弾ガラス仕様なので、ジャッカルのショットガンでは破壊力が無い。
トラックは前後から猛烈なスピードで迫ってくる。
ジャッカル!!・・・楊楊のブローニングでは全く歯が立たない。
ジャッカルはウィンチェスターにNTN火薬の中戦車迎撃用の弾丸を2発込めた。
・・・楊楊・・・この弾で破壊出来なけりゃ、俺たちも終わりだ。
短かったけれど、楽しかったぜ。先に挨拶しとくぜ。
ふざけんな!まだ負けちゃ居ないんだよ。ジャッカル!・・・
諦めちゃだめだ。
目を伏せろ・・・楊楊。光りを見るな。
ジャッカルは前方のトレーラーのラジエーターとタイヤの間を目掛けて、2発ぶっぱなした。
オレンジ色の鮮やかな閃光が、ジャッカルのナイトライダーから一直線で飛び出した。
トレーラーの右前輪のタイヤホイールは完全に破壊した。
しかし・・・トレーラーは操縦不能となり、その速度を緩めることなく、
ジュッカルのナイトライダーに真っ直ぐに襲い掛かってきた。
あと50m・・・・ぶつかる。
急ブレーキ。後輪を滑らして・・・それでも止まれるか?分からない!
危ない!
ジャッカルと楊楊はバイクから飛び出そうとした瞬間だった。
操縦不能になった前方のトレーラーと、後から迫りつつある2台のトレーラーの真横から同時に、
超大型のブルドーザーが突っ込んで、トレーラーもろとも道路を横断して行った。
何だか分からないうちに、前方が開けた。
とっさに、ジャッカルはナイトライダーの操縦を立て直して、
再度、フルスロットルにアクセルを絞り上げ、闇の中へと滑り出した。
楊楊は後方の闇にブローニングの標準を合わせた。
闇の静寂。
ナイトライダーから流れるマフラーからの排気音だけが響き渡っている。
道路には何も無かったような虚しいような静けさだけが残った。
いや、大きなトレーラーの残骸が3台と、ブルドーザーが2台。
道路の端に、ただの鉄の塊としてうずくまっていた。
ジャッカルの背後から一台のハーレー・スターダストが、
巨大な爆音を響かせて迫ってきた。
其処には華奢な女が運転していることを、ジャッカルはバックミラーから確認していた。
・・・やっぱり、あいつか・・・。あの女だ。
ジャッカルはスロットルを緩めた。
「久しぶりだねぇ〜、ジャッカル」・・・。
この通りを通るのにあたしには挨拶無いのかい!・・・。
その女は真っ白の皮のライダースーツを身にまとい、
そして、長い髪をなびかせて1500CCのスターダストを運転している。
「だれ??」楊楊は、見方なのか、敵なのか?分からなかった。
でも、敵ならば、私を直ぐに殺すはず。
誰だろう?楊楊は右手のブローニングの引き金に人差し指を当てていた。
「やっぱりあんたか・・・・リーア、有難うよ」久しぶりだな。
シャッカルはウィンチェスターをバイクのホルスターに収めた。
まだ銃身が熱くて、ホルスターの皮の焼ける匂いがした。
このブルターニュは私の縄張りだよ。
勝手に通ってもらっては困るね。・・・・まぁ、あいつに頼まれていたからいいさ。
ジャッカルの後が楊楊だね。
あんたが、チャウセシスクを殺っんだってね。
大したもんだ。
その細いからだで。
あの悪党を、ありがとうよ。
神に変わって礼を言うよ。
背中に背負っているロケット・ランチャーが、
リーアの華奢な肢体には不釣合いな光景だった。
楊楊はブローニングの引き金を納めて、セーフティーロックを掛けた。
でも・・あの女は一体味方?敵?
あの人に頼まれた・・・って言っていたけれど。
あの人が、ジャッカルにも、そしてリーアにも協力依頼をしていたの?
楊楊はこれから、一体何が始まっていくのか?分からなくなってきた。
単に、日本の警視総監である国重を闇のルートで裁く事だけではない様に思えてきた。
ジャッカルは確か、フランス大統領が日本へ依頼した核燃料の再処理されたウラニゥムから
作り出されるされる副産物であるプルトニウムの一部を、
中国経由でインドを経て、最終的には北の国へ横流しをしていると言っていた。
そのために、彼らフランスのレジスタン組織もフランス国内の危機を救うのだと。
それと国重警視総監とどんな関係があるのか?
あるいは、まだ他に日本に悪い奴らは居るのか?
リーアは、更に続けてジャッカルと話をしている。
あんたら、ミッシェルの店に行くはずだね?
そうだが・・・ジャッカルは答えた。
が、リーアの質問に答ええる前にフルスロットルで走り始めた。
背後からまた2台の黒塗りのベンツが2台のバイクに迫って来た。
カラシニコフ自動小銃の弾が楊楊達を狙ってくる。
楊楊は後ろ向きになり、ベンツに狙いを絞った。
フロントガラスに命中はしているが、全く破壊しない。
ジャッカルは楊楊に言った。
「止めとけ・・・弾の無駄だ」あのベンツは防弾ガラス装備車だ。
ライトの反射が全く無い。
あの車は俺達の銃じゃ、破壊できない。
2つのバイクは全速力で逃げ切ろうともがいていた。
リーアはハンドルから両手を離した。
と思った瞬間、後方のベンツに向かって手榴弾を投げつけた。
更にもう一つ投げた。
フルスロットルで逃げ切れるか?
道路に炸裂する手榴弾。
ベンツは2台ともハンドルを切りそこない、ガードーレールにぶつかり、
そこで爆発をした。
燃え上がるベンツの中の銃の弾に着火して、激しい炸裂現象が発生した。
まるで夜中の花火。自動小銃の弾が無軌道に飛び散ってくる。
流れ弾に当たってしまう。
ジャッカルのナイトライダーと、リーアのスターダストは、その場所から風のように逃げ去った。
穏やかな朝焼け。
また新しい一日が始まる。
幸せな家庭が、楽しそうな家族が希望の朝を迎える瞬間。
楊楊は両切りのゲルベゾルテのタバコに、ニコライのライターで火を点けた。
埃の無い風が楊楊の頬を撫でた。
もう一人味方が増えたのかな・・・。
楊楊は、これか始まる長い一日の入り口に居るような気がした。
さぁ・・・俺の女のミッシェルの店に行くぞ。
ジャッカルの声に従い、リーアも付いてきた。
何か面白そうだねぇ〜。ここまでの約束だったけれど、もう少し手伝うよジャッカル。
リーア・・・あんたが来てくれれば、最高さ。
二台のバイクは、まだ寝ぼけているブルターニュの郊外から
朝日に向かって走り出した。
もう少しでりとるに逢える。
楊楊は少なからずも、胸がときめいているのが分かった。
何故?
きっと、仲間だからだね。
一人じゃないんだ。いまは、もう・・・・楊楊は、そう思い始めた。
その頃「あいつ」は那覇基地から百里基地に向かう夜間飛行中のP3−Cオライオンの中に居た。
・・・つづく・・・
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