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この物語はフィクションであり、ここに登場する人名・地名・団体名、その他あらゆる名称は架空のものであります。
よって、本物語に対する、ご質問・ご要求・ご意見・訴訟に関する諸問題は一切お受けできません。
「突然の訪問者」
桜田門の警視庁別館の23階。
ここは、警視庁特別捜査官別室。
国重警視総監は、モニテクリストNo.19の上質な葉巻の火を燻らせ、
大理石の机に自分の足を投げ出して、天上を見上げていた。
明日、青森県六ヶ所村の核燃料再処理工場から北の国向けのプルトニュウムを搬出する。
・・・とうとう、その時が来たのである。
約5kgのプルトニュウム。
これだけ有れば、テポドンの核弾頭として、3発は製造が可能だ。。。
一発はアメリカ・ワシントン。
二発目はハワイ・ホノルルへ。
そして三発目は我が日本へ。
この三発の核弾頭が発射された後、世界の勢力地図は大きく変化する。
アジア・・・中国と北が主導権を持ち、ここにイランが加わり、アラブのハマス、そしてアルカイダが
アラブ圏を支配出来る。
あと残るのは、アフリカと南アメリカ。
アフリカについては、まだ内戦が絶えないから、その内に、片付ければ良い。
南アメリカは、キューバが北アメリカの一部と共に占有するだろう。
キューバにも核弾頭が2発。
一発目はアメリカ・ニューヨーク。
二発目はイギリス・ロンドン。
自分は、このプルトニュウムが北に着き、キューバに流れたときには、ロシアに居る。
その後、スイス・ジュネーブに渡り、暫定日本国を作り、その総理大臣になる。
壮大な構想は何回も、何回も、夢に描いた。
自分の家族とかしがらみとか、全く考えなかった訳ではない。
まっとうな真実に忠実に生きて行くことが、本当に自分の正しい道なのか?
いや、正しいとしても・・・それが何になる。
悪魔と正義を引き換えても、自分の本当のやりたい事に素直になるべきではないのか?
国重にも迷いは有った。
本当にやりたい事で、他人を傷付けてしまう。
それは本当に正しい事なのか?
誰のために?・・・・。
最後の答えは自分の中にこじつけた。
人のためにやるのでは無い。全て自分のエゴのために。
他人全てを傷つけも・・・やるのだ。
一人や、二人の人を傷つければ、それは切ない。
だが、一億人以上の人間を死に追いやった場合、それは英雄に変わる。
かつての、エジプトクフ王、秦の始皇帝、アレキサンダー・
ヒットラー、ムッソリーニ、そしてホメイニ。
古代の昔から現代でも、独裁者は英雄と紙一重の存在ではある。
そして、それを評価するのは、後に生まれ来る人達である。
だから、いまやる事に対しての最終的な評価は出来ない。
国重はゆっくりとモンテクリストを灰皿にもみ消した。
新しい日本国を創る。・・・自分が・・と。
一機の無灯火のシコルスキー型のジェットヘリが横須賀海軍基地から東北方面に向けて飛び立った。
さきは装備の点検をしていた。
そして彼女に下された命令書を何回も確認していた。
「国重長官を裁け」
方法は任せる。
彼は、これから六ヶ所村に行く
我々も其処に行く・・・あいつ
さきはワルサーPPKコマンダーにサイレンサーを取り付け、
左胸のホルスターに仕舞いこんだ。
M16アーマライト・夜間狙撃銃の暗視ターゲット・スコープを覗き込み、
ターゲットの、ずれ補正用ねじの調整を始めた。
明日、国重を殺す。これで、本当に私の使命が終わる。
その先は・・・・何も考えていない。
何所かで、ゆっくりと休みたい気もするし、元の自分探しもしたい。
出来るかどうかは別として。
何時も寝苦しい夢を見る。
そして最後は何時も、誰かに打たれて死んでいる自分を見下げている自分が居る。
本当の自分は何処に居るんだろう?
逢いたい気もするけれど・・・・もう、逢わなくても良いとも思う。
今の・・・こんな銃を握っている女では、少なくとも無かった筈だから。
平和な結婚生活をしていたかも知れないし、まだ独身でバリバリ仕事して、
夜は六本木とか銀座を歩き回って、良い男を捜していたかも知れない。
でも、今は全く違う。
今の自分がどうの・・・こうの・・・悩む気にはならない。
ただ、自分をこんな目に合わせた奴が憎い。
だから、そいつを自らの手で裁く。
この銃で。人には任せない。自分の人生だから。
さきは六ヶ所村に行くために、三沢基地まで行く予定であった。
ジェット・ヘリはあいつが用意してくれた。
三沢基地からは、一人で夜中に車を走らせて、六ヶ所村核燃料再処理工場まで走るつもりであった。
あと10分で三沢基地に到着する。
突然、さきはヘリのパイロットから指令を受けた。・・・あいつのメモ書きだった。
六ヶ所の村の上空からパラシュートで再処理工場内に降下し、中央操作室を占拠せよ。
一緒に同乗している三上三尉がアシストして工場内に降下する。
工場内は日本としての法律が成立しない、要は特別地区に指定されている。
よって、日本の警察圏の範囲外であり、国家の法律が有効ではない非国家地区に指定されている。
よって、この中で何か起ころうと、一般的には全く関係の無い事件として片付けられてしまう。
当然事件にはならないし、報道も完全に遮断されている。
今回のプルトニュウムの搬出については、日本政府の既得権が及ばない範囲であり、
警察の力の効力も無い。IAEAにより、運営されている特別地域である。
誰がIAEAを監視しているのか?誰も居ない。不正は誰にでも出来る。
そろそろ降下して下さい。パイロットが事務的な声を上げた。
三上三尉はさきを伴って、ヘリの降下するドアを一気に開けて、地上2000mより降下した。
当然、三上はさきを蹴飛ばして突き落とし、そして、それに追いつき、
パラシュートが開く紐を引き上げるようにさきに指示した。
さきは落ち着くように自分に言い聞かせ、そしてパラシュートが開く紐を一気に引いた。
漆黒の闇の中に2つの白い花が大きく開いた。
さきは下を見下げた。
なにやら、人らしきものが動き回っていた。
でもこちらのを見上げようともしない。
全くの死角に入り込んだ。
さきはM16アーマライト自動小銃の標準を暗視スコープで覗き込み、動く物に狙いをつけていた。
先に見付れられれば、こちらが殺されてしまう。
その前に殺す。自分の最後の真実を見つけるために。
国重の最後の顔と、彼からの自分の所在の回答を聞くために。
三上三尉は細かく自動小銃の引き金を引いて、
空に向かって輝いているサーチライトをことごとく壊し始めていた。
ほとんど真っ暗な状態になった。
内部からも異変に気が付いたのだろう。
数人が外に出て来た。
三上三尉は動く物に標準を合わせ始めた。
だめ!あの人達を殺しては。。。
先ほどのさきは其処には居なかった。
罪の無い人達を、殺してはならない。
さきは三上を見て、首を大きく横に振った。
三上はさきに手話で話した。
「さき・・・貴女と私の銃に入っている弾は、硬質ゴム弾です。
だから死にませんよ。」あの方からの命令です。
貴女も自分の身を守るために、銃は撃つべきですよ。
三上三尉は、すぐに暗視スコープを覗き込んだ。
少しばかりの安堵感を感じ、さきは再処理工場内を見ていた。
最後に私は・・・国重警視総監を裁けるのか?
最後の最後には・・・。
そう心の中で質問を繰り返し、答えを探し初めていた。
基地内にゆっくりと二人は降下した。
パラシュートをまとめて見えないところに仕舞いこみ、そして三上と中央操作室に向かった。
その時だった。
内部に居た警察官が漆黒の空を目掛けて撃ち始めた。
さきは空を見上げた。
あいつがパラシュートで降下している。
6人の迷彩服を着た男達。
パラシュートから工場内に向かって撃ち始めていた。
さきは危ないと感じた。
このまま、自分があいつ達を助けなければ、殺されてしまう。
援護射撃をしようとした時、三上三尉から銃口を下ろさせられた。
我々のミッションは中央操作室を占拠すること。
彼らを助けるのが任務ではありません。
我々の任務を遂行します。
三上は立ち上がろうとした。
さきは三上にしがみ付いた。
・・・でも今は仲間を助けるのか先でしょ?
三上は静かに言った。
さき・・・そうではない。
我々は与えられた任務の遂行を先行しなくてはなりません。
皆がみんな、自分勝手な解釈や都合の良い考えをしたらどうなるでしょうか?
組織の動きはばらばらです。
完全なる組織としての行動こそ、強い組織行動となり、一つの目的を成し遂げられるのです。
誰かがそのために死を賜ったからと言っても、それは仕方の無いこと。
大切な事は、その死を無駄にしてはいけない事です。
誰でも死は怖いです。
でもその死が無駄だったのか?それともみんなの心に残る大切な死だったのか?
それこそが大切な事なのです。
さぁ、我々の任務を遂行しますよ。
さきは立ち上がった。
その右手には、ワルサーPPKコマンダーがしっかりと握られていた。
・・・私の任務は・・・国重総監を裁くこと。
方法は私自身で決める。
・・・つづく・・・
あとがき・・・・
我々はどんな人間でも組織の中で生きています。
大きな組織と言えば、地球と言う事でしょう。
小さな組織と言えば、家族、恋人になるかも知れません。
人は自分のエゴを生きる糧にしているのではないでしょうか?
自分がしたいこと、なりたいこと、そしてそれを確かめたいがために、
たまに、焦ってミスをして、人を傷つけてしまう。
その時は、全く前が見えない状況なのではないか?と思うのです。
当然、私はそんな事が多いので、日常反省ばかりです。
しかしそれが人間なのでしょうね。
きっと。
我々人間は、それ程大きくは人として、変わらないのでしょう。
ただ少しの凸凹がその人の個性ではないのでしょうか?
せめて、他人を傷つける前に、もう一度自分の現在の居場所を確認してから行動したいと思います。
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